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2021年2月19日

職業訓練/ハロートレーニングへの疑問に答えます!

新型コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響が深刻化する中、2021年1月27日放送の番組では、再就職やキャリアアップにつながる知識や技能を原則無料で学べる公的な制度である「職業訓練/ハロートレーニング」を取り上げました。
放送に先立ち、番組ホームページなどで職業訓練の体験談や疑問・質問などを呼びかけたところ、60通を越える投稿がありました。番組内でご紹介できなかったいくつかの疑問や質問、その他取材を通してよく聞かれた問いに対し、スタジオゲストのジャーナリスト・日向咲嗣さんにお答えいただきました。

ジャーナリスト・日向咲嗣さん
失業・転職の当事者を取材した一連の執筆活動が評価され、2018年の「貧困ジャーナリズム賞」受賞。著書に「失業保険150%トコトン活用術」「58歳からのハローワーク200%活用術」など多数。


【番組に届いた職業訓練についての疑問・質問】
Q1:そもそも、職業訓練をどうすれば利用できるのか?条件や試験などはあるのか?

職業訓練は誰でも受講できます最寄りのハローワークで申し込みます。

受講開始日に退職する予定でしたら、在職中でも申し込みできます。また在職者向けの訓練(有料)もあります。

試験は、3~6カ月の短期コースは書類選考のみ。1年以上の長期コースや一部若年者向けコースで学科試験(国語と数学)が行われることがあります。

訓練を受けながら雇用保険から失業手当をもらえるのは、ハローワークから「受講指示」※を出してもらった人に限ります。

職業訓練を受けたいと思った人は、とりあえず、最寄りのハローワークの職業訓練窓口で相談してみてください。

※受講指示とは、職業訓練が必要と安定所長が判断したことを示すお墨付き。失業手当をもらえない求職者支援訓練の場合は「支援指示」が「職業訓練受講給付金」の要件になります。

Q2:「受講したい訓練があるのに、年齢制限で受けられない」「コロナで雇用の危機に直面しているのは40~50代が多いのではないか?職業訓練は35歳以下を対象にした制度なのか?」

番組で紹介した東京都のIT人材育成事業のコースは35歳以下を対象にしたものですが、若年者向け長期コース(おおむね30歳または35歳未満)をのぞいて、一般的な離職者向けの3か月~6カ月の職業訓練コースは、年齢制限はありません

Q3:「番組で紹介されていた取り組みは、財政に余裕のある東京など大都市圏だけのもので、自分のいる地方では、選択肢が限られていたように思う」「それぞれの地域でどういう訓練が行われているのか、詳しく知りたい」

厚生労働省 ハローワークインターネットサービス
(「仕事をお探しの方」>「ハロートレーニングコース情報検索」をクリックしてください。ハロートレーニングの訓練コースが検索できます) https://www.hellowork.mhlw.go.jp/index.html

ここにお住まいの地域と、訓練の募集期間(開始日と締切日)だけ入れて検索してみてください。たとえば、青森県で今年2/1~3/31に募集している訓練を検索しますと、47件ヒットします。

地方では、建築関係やものづくり関係のコースが目立ちます。歴史と伝統のある訓練校の長期コース(1年以上)がいまも健在です。それ以外でも、IT技術者を養成するコースパソコン事務関係のコースも随時開設されています。

また、介護福祉士、保育士、美容師など国家資格者を養成する民間専門学校の2年コースが職業訓練として認定されているケースもあり、それらは、例年、4月開講のみで、1月~3月までしか募集していません。

これら2年コースは、年齢制限を設けている地方もありますが、最近は40代以上でも、介護福祉士や保育士のコースも門戸を開く自治体もあります。10代~20代の若者と一緒に机を並べて2年間勉強して資格を取得して就職できたという40代以上の人もいます。その場合、学費無料で2年間失業手当を延長して支給されますので、その間の生活も心配ありません。ただし、定員は少なく、狭き門になる場合が多いです。

雇用保険から失業手当を受給できる人は、原則として「公共職業訓練」しか応募できませんが、「公共職業訓練」に志望コースがなければ、失業手当の受給資格のない人向けの「求職者支援制度」(失業手当の受給資格のない人向け)でも応募可能です。
逆に、失業手当の受給資格のない人は原則「求職者支援制度」しか応募できませんが、 「求職者支援制度」に志望コースがなければ「公共職業訓練」でも応募可能です。

また、検索時点では、専用サイトにデータ登録漏れのコースもありますので、最寄りのハローワークで相談してみると、より志望にあったコースを見つけることができます。


Q4:「人気の高い訓練を受けたが、未だに再就職できていない」「企業は『実務経験』を重視する。職業訓練を受けても『実務経験』はないので再就職に結びつかない」「職業訓練の受講生で、再就職できた人とできない人の違いは?」

訓練コースを選ぶときには、科目のイメージのみで判断せずに、あらかじめ各コース(委託訓練の場合は同種の訓練)における過去の就職率を調べて、その数字も判断材料のひとつとすべきです。

また、職業訓練が就職にストレートに結びつくかというと、年齢が高くなるほど難しいのは、確かにまぎれもない現実です。これは、長らく終身雇用を前提として社内で人材を育てていく日本型の人事制度の弊害です。しかし人手不足が年々深刻化するなかで、未経験者を採用するよりも、訓練を受けた人を採用して、育てていこうという企業もあると聞いています。

職業訓練の効果は、すぐに目に見えて出てくるわけではないので、直接就職に結びつかないように思えますが、訓練によって身につけたことは、いずれは必ず役に立ちますので、長い目でみれば効果はあると思います。

訓練を受けても、就職がなかなか決まらない人の傾向としては、やはり就職のノウハウをおろそかに考えていることだと思います。求人探し、応募する企業の絞り込み、応募書類の見直し、あるいは面接技術の習得といった就職ノウハウは、この20年で飛躍的に進歩しています。

就職氷河期よりも前に社会に出た中高年のなかには、そういうノウハウをおろそかに考えたり、あるいは氷河期世代でも、その点の重要性をあまり認識していなかったりすると、なかなか思うように実力が発揮できないケースはあると、ハローワークの現場の人からは聞いています。

そういった就職ノウハウについても、訓練校のカリキュラムに盛り込まれていたり、あるいはハローワーク及びその関連機関でセミナーを随時実施していたりしますので、そういう機会を活用することもお勧めします。

Q5:「番組で、職業訓練を受ければ、失業手当の給付が延長されると言っていたが、自分は延長はできないと言われた。必ずしも延長されない場合があるのか?」

所定給付日数(もらえる失業手当の日数)の原則3分の2にあたる日数(90日なら60日。最長150日)の支給を受け終わるまでに訓練を開始(訓練校に入校)しないと、訓練の途中で失業手当が切れても、その後は延長給付されません。この点は、訓練申し込み時にハローワークで「受講指示」(職業訓練が必要と公共職業安定所長が判断したことを示すお墨付き)が出ているかどうかを確認してください。受講指示が出ていれば、必ず延長給付になります。事前に確認したい場合は、申し込み時に「何日残っていれば、延長給付されますか?」と質問してみてください。

Q6:「就職率が良い訓練コースで定員割れが起きているという実状に驚いた」「就職先に想定されている職種の労働環境のイメージが良くないからでは?」

当然、労働環境のイメージが良くない業種ほど定員割れが起きます。実際にそうではない職場や職種もありますので、それは自分の眼で事前に訓練校を見学して、見極めるべきではないでしょうか。

一方で、労働環境が良くない職種も確かにありますので、その点は、訓練校とハローワークが就職をあっせんする以上は、責任をもって改善指導するのが大きな課題になっていると思います。

Q7:(求職者支援訓練の制度について番組では)「給付金が10万円では少ないとか、受給の条件が厳しいと問題提起されていたが、月10万円は妥当では?」「自分で働けるだけの力が欲しいのであれば、相応の自己負担も必要では?」

求職者支援制度は、雇用保険制度の網からこぼれ落ちる人があまりにも多いことから、創設された制度ですので、学費がかからないのはもちろんのこと、その間の生活が維持できるものでなければ、この制度の目的を果たせません

そのことからしますと、給付金が10万円というのは生活を維持するには困難な額であり、せっかく制度をつくっても、明日の生活に困っている人にとっては無意味な制度となり、あまり活用されないことになってしまいます。

また、訓練受講の給付金支給の要件が厳しい点については、「なんでもいいから訓練受けたらお金がもらえる」というモラルハザードを防止する主旨でそうなっています。

しかし、雇用保険制度からこぼれ落ちた人のなかには、引きこもりの生活を続けてきた人や過労死寸前の長時間勤務によって、著しく心身のバランスを崩してしまい、通常の生活を送るのが困難な人がいます。あるいは親族の介護に多くの時間を費やさねばならない人や、ひとり親家庭で、子育てとのバランスをとる必要がある人など、実にさまざまな境遇の人がいます。

そういう困難な状況に直面している人でも訓練を気軽に受けて生活を立て直せるようにするためには、給付金支給の要件は緩和すべきです。これを厳しくしすぎると、多くの人が使えない制度になってしまいます。

本来、まず雇用保険に誰もが加入でき、失業手当を受給しやすくするのが先決なのですが、いまだにそれが進んでいません。持続可能性があり、多様性豊かな社会を維持していくためには、困ったときには、誰でも、その人にあったサポートが受けられるような制度設計にするのが望ましいと思います。

※取材班補足
2月12日に厚生労働省は、求職者支援制度の要件緩和を発表しました。
主な内容は
●特例措置の導入(9月末までの時限措置)
・収入要件を現状の月8万円以下から月12万円以下に拡大
・仕事のため訓練を欠席することを「やむを得ない理由」と認める出席要件の緩和
●職業訓練の期間や内容の多様化・柔軟化
・短期間の訓練コースやオンライン訓練の設定を促進
●「コロナ対応ステップアップ相談窓口」(仮称)の設置
・コロナによる失業や休業中の方への職業訓練の情報提供や訓練成果を踏まえた就職支援を行う窓口の設置。詳しくは以下のHPを参照。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00011.html

【番組に届いた職業訓練についての疑問・質問】

投稿を寄せてくださった方の中には、実際に職業訓練を受講することで、生活を大きく変えることができたという方もいました。

今年29歳になる男性は、専門学校を卒業後、正社員として入社した会社で、長時間労働やサービス残業、人間関係に苦しみ退職。派遣でコールセンターのクレーム処理やアルバイトなどをしていました。
しかし、低賃金・長時間労働に加え、人間扱いされない職場環境に嫌気がさし、実家のある九州に里帰り。職業訓練を受講することにしました。
ハローワークで相談して、国の運営するポリテクセンターで、溶接の技術などを学ぶ金属加工科のコースを選択。1番の理由は就職率の高さだったものの、最初は「仕事がキツいのではないか」など、あまり良いイメージを持っていなかったといいます。
しかし、実際に訓練を始めてみると「もともと好きだったガンダムのプラモデルでも作っているような面白さ」を感じ、半年間の訓練修了後は、訓練校が紹介する何社かの中から訓練校の卒業生がいる従業員100人ほどの会社に就職
入社当初はあまり高くないと感じていた給与も、年2回の賞与があり、労働時間の管理もしっかりしているため、親元を離れ、ひとり暮らしをする余裕が生まれるようになったといいます。
何より、ちょうど熟練の先輩たちが退職の時期を迎えており、若い人が大切にされる雰囲気があるため、じっくり溶接技術を磨き、資格を取るなど自信を得ることができ、将来への希望を感じるといいます。

もちろん、それまでの労働環境や本人の進路についての希望には違いがあり、職業訓練が誰にとっても雇用の問題を解決する『魔法の杖』ではありません。しかし、雇用全体の先行きが見えない現在のような状況だからこそ、職業訓練/ハロートレーニングのキャッチフレーズどおり『急がば学べ』を実現できる選択肢の1つとして視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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