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福井 絶滅が危惧される花・エチゼンダイモンジソウ 高校生が保護活動

  • 2023年11月17日

福井と石川の県境付近にのみ自生する貴重な花があります。花が漢字の「大」の字に見えることからその名がついた、エチゼンダイモンジソウです。絶滅の危機に直面しているこの花。地元の高校生が保護活動に取り組んでいます。

県境でのみ咲く花 絶滅の危機に

自生しているエチゼンダイモンジソウ

エチゼンダイモンジソウは、福井と石川の県境付近だけに自生しているユキノシタ科の植物です。水辺に生息していて、5~6月に漢字の「大」の字のような形の花を咲かせることからその名がつきました。自然に咲いている花が摘み取られたことなどにより数が減少し、絶滅の危機が高まっているとして、環境省や福井県が絶滅危惧種に分類しています。

地元の高校生が7年前から保護活動

保護活動に取り組んでいる県立坂井高校の生徒たち

絶滅の危機にひんするこの花を守ろうと、保護活動に取り組む高校生がいます。花が自生する山のふもとにある県立坂井高校の農業コースの生徒たちです。授業の一環で7年前から花の保護に取り組んでいて、毎年、地元のグループから譲り受けた花の種を人工的に育てて山に戻す活動をしています。花を増やすこともさることながら、花の遺伝子や生態系を崩さないことにも気をつけなければいけません。種から培養して育てた苗は種を採った場所に戻すことや、栽培途中で細菌が入り込まないように注意するなど、専門家にも意見を聞きながら、さまざまなポイントに気を配って活動しています。

生徒

人の影響で絶滅の危機にひんしているものが自分の周りにも存在していることを知って悲しかったし、なんとかしたいという気持ちです。

福井県立坂井高校 農業コース 蓮浦義之教諭

福井県立坂井高校 農業コース 蓮浦義之教諭
絶滅危惧種という今にも無くなりそうな命を救っていくことなので、特に命の尊さを勉強してほしい。そして、自分の地域にこういう貴重な植物があるということを知って、地域を大事にする心を養ってほしいなと思います。

無菌に近い状態で種から栽培

2ミリ程度の大きさの種をピンセットで扱う細かい作業

まず、種を発芽させるために、栄養分が入った試験管に種をひとつずつ入れていきます。

試験管に入れた寒天の真ん中に種を置いていく

試験管に種があたらないよう、栄養分が含まれた寒天のちょうど真ん中に小さな種を置いていく細かい作業。ことしは1000本の試験管に培養の準備をしました。

人工的に光をあてる

作業前には毎回必ず手を洗い、空気のシャワー室でホコリを落とすなど、外から雑菌を持ち込まないよう、細心の注意を払います。無菌状態に近い部屋で成長の様子を観察しながら、最適な温度や照明の当たり具合を探りました。

大きさ3センチ程度に育った苗

培養作業からおよそ3か月、発芽した種は3センチ程度に成長しました。ここまで育ったのは1000本の試験管のうち40株程度。それでも、その数は去年よりも多いんだそうです。

生徒

40株と少なかったけれど、去年よりも10株ほど多く芽が出ていると思います。去年よりも多くできて、僕としてはうれしいです。

植え替える土も殺菌済み

ここからは、この40株の苗を土に植え替え、根を伸ばすために実験室でさらに1か月育てます。山に戻したときに土についた雑菌が山の生態系を崩すことがないよう、使用する土も殺菌しています。

自生地の環境に近づけるための工夫

水を石に当て、水しぶきで水辺の環境を再現

苗の栽培では、生徒たちによる工夫も。滝の近くに自生するエチゼンダイモンジソウの環境を再現するため、山からの地下水を石の上に流し、その水しぶきを苗に浴びせました。山に近い環境に置くことで、植物に順応を促します。自生地に近い条件をそれぞれの過程で探りながら、丁寧に育てていきます。

生徒

僕たちは自生地の条件に合わせにいっているけれど、まだ合っていない条件だったりもあります。(条件が)合っていてもちょっとした変化だけですぐ枯れてしまったりということもあって、難しいなと思いながら研究しています。

丹念に育てた苗を山に移植

育てた苗を山に戻すために山に登る

11月、育てた苗を山に戻す日がやってきました。この日は、エチゼンダイモンジソウが自生する山に詳しい地元のグループも一緒に登ります。あれから苗はさらに減り、植えるのは24株となりました。

画像の真ん中に小さく見える緑の葉がエチゼンダイモンジソウの苗

エチゼンダイモンジソウが自生するあまり日が当たらずに渓流などの水しぶきがある場所を探し、この日まで丁寧に育ててきた苗を植えました。

生徒

もともとエチゼンダイモンジソウがこの山にしか咲かない花なので、まずはこの山にいっぱい咲かせることが目的で、そこからもっと増えていろんな所で見られるような花になって欲しいなという願いがあります。守っていくぞって気持ちをしっかり高めて、なんで絶滅しそうなのか、どうしたら増えていくかをしっかり研究して、育てていきたいです。

山に植え戻された苗

「絶滅の危機にある花を守りたい」。その思いが来年の初夏、数多くの花を咲かせることでしょう。

 

 

(↑2023年11月8日ニュースザウルスふくいで放送したリポートV)


 

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