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全国で唯一!3年かけて育てる福井のらっきょうっていったいどんな味?

2023年9月4日放送 ほやほやみつけ隊
  • 2023年10月02日

福井県のシンボル・九頭竜川の河口には、三里浜砂丘地と呼ばれる広大な砂地が広がります。そのため、この一帯では砂地でも育つ、すいかやらっきょうの栽培が行われてきました。通常は1年で収穫されるらっきょうですが、この三里浜には全国で唯一、3年かけて育てられるらっきょうがあるんだとか。産地の一つ、坂井市の浜四郷地区を各務朱音(かかむ あかね)キャスターが訪ねました。

全国唯一の特産品 三年子らっきょう

各務キャスターがやってきたのは、坂井市の浜四郷地区にある畑です。見渡す限り、一面の砂!一見、何もないように見えますか・・・

よく見ると、砂地から枯れた株のようなものがのぞいています。そう、この下にらっきょうがあるんです。通常らっきょうは、夏の植え付けから春先の収穫まで、11か月ほどで栽培されますが、この地区には、全国で唯一、3年かけて育てるらっきょうがあります。特産の「三年子らっきょう」です。

独特の歯ごたえ そのワケは?

こちらのその「三年子らっきょう」。名前の通り、一粒一粒が一般的ならっきょうより小さいのが特徴です。通常より長い時間をかけて栽培することで、ひとつの種球から小さな球根が増える分球がすすみ、その結果、1粒が小ぶりになるわけです。らっきょうを輪切りにすると、玉ねぎと同じように層を作っていることがわかりますが、この三年子らっきょうは一つ一つの巻きが薄く、そのなかに繊維が細かく詰まります。そのため、1年物にはないシャキシャキとした食感が生まれます。この小粒で小気味いい歯応えこそが、三年子らっきょうの人気の理由なんです。

この特産品である三年子らっきょうをたっぷり味わうことができる場所が、坂井市にある「道の駅 みくに」です。一番人気はこの「らっきょラーメン御膳」。 刻んだらっきょうがたっぷりのっています。

各務キャスター

らっきょうの塩味が効いていて、さっぱりしています。おいしいです!

20年前には、らっきょうがモチーフの地元のキャラクター、三里(みさ)ちゃんも誕生し地域を盛り上げています。

むかしは厄介だった砂との暮らし 

豊かな農産物の栽培によって、いまでは砂地の恩恵を受けている浜四郷地区ですが、かつて人々の暮らしは砂との戦いだったといいます。

地区の人たちが毎日欠かさず手を合わせるお地蔵様。じつは砂嵐で亡くなった人たちを供養するために建てられたものです。

地域の昔話を収集している浜四郷のコミュニティセンターが今年4月にまとめた冊子にも、田んぼを守った蛇や暴れる天狗の話とともに、砂にまつわる話が記録されました。

浜四郷コミュニティセンター
センター長 濱中妃史さん
こちらの冊子「いっぺんきねの浜四郷」に、砂の歴史がわかる昔話が載っていますよ。「いっぺんきねの」は「一度来てね」という意味です。

これがその昔話、「飛砂に埋まった北沢村」。北沢村は安土桃山時代、この地に実在した村だそうです。

ちょうどこの日、昔話の伝承に力を入れる団体「いろり」が地元の保育園でこの昔話の読み聞かせを行うというので、参加させてもらいました。物語に耳を傾けてみましょう。

むかしむかし、北沢村という小さな村がありました。 「この辺りは海から吹く風で砂がよ~飛ばされてくるんにゃ」 「目に砂が入ってもて外でゃ遊ばれんわ」 「わ~怖い怖い、入ろ入ろ!」

狂ったように吹きまくる風は、砂を巻き上げ、小さな竜巻となり、砂嵐は収まる様子がありませんでした。

ひと晩中眠れなかった村人の目に真っ先に映ったのは、 「家も畑もうまっつんた」 「うららこれからどうすりゃいんにゃの…」。

何年か経って、北沢村は掘り起こされ、その後、砂を防ぐために垣根をしたり松が植えられ、らっきょうをはじめたくさんの作物やおいしい果物が作られています。

子どもたちは紙芝居にくぎづけです。こうして昔話として、浜四郷地区では、砂に埋もれた歴史がいまも伝わり続けています。

砂とともに生きる

読み聞かせを行った団体の皆さんは、昔話を知ることで、地元への理解を深めてほしいといいます。

髙島建夫さん

ここらは砂嵐がいっぱいきますけれども、昔はすごかったんですよ。もう作物が埋もれてしまったり、ハウスが壊れてしまったりいろんな形で被害が出てきますからね。 今は防風ネットとか防砂ネットとかやっていただいているから、比較的少ないんですよ。

藤澤國男さん

子どもたちにこういう歴史があるということを見てもらって、教えていきたいなと。

村上正典さん

まちづくりの原点は、自分の生まれ育った地域を誇りに思うことだと思います。 そのために自分の地域がどんなところなのかよく知ることが必要かなと思い、伝えたいなと思いました。

今回披露したお話のほかにも、4種類の紙芝居が完成していて、年に数回、地元の保育所に出向いて読み聞かせを行っています。

砂ぼこり防止で らっきょう畑に張られた防砂ネット

らっきょうなどの野菜を植えることは、土に根を張り、砂が舞い上がりにくくなることにもつながるといいます。昔の教訓を生かし、かつて悩みの種だった砂地を、地区の発展のために活用している浜四郷地区の人々。生まれ育った土地を見つめ、愛することが、いまの暮らしにもつながっています。


★ほやほやみつけ隊とは★
「ニュースザウルスふくい」の名物コーナー。福井放送局のキャスターが、緑のはっぴを着た「みつけ隊員」として県内を地区ごとに訪ね、地元の味覚やすてきな活動、そして元気な皆さんを「みつけ」ます。

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