駅を守れ!福井 地域住民の力で憩いの場所に
- 2023年05月24日
全線開業から100年を迎えたJR小浜線。福井の敦賀から京都の東舞鶴までの24駅の中で、最も古い駅舎のひとつが福井県若狭町の三十三(みそみ)地区にある十村(とむら)駅です。駅舎は老朽化などの理由から取り壊される予定でしたが、「慣れ親しんだ駅を守りたい」と立ち上がった町の有志たちが資金を募り、カフェのある駅舎として町の中心に生まれ変わりました。
JR小浜線の新名所
カフェ「ぽっぽ茶屋ほっとむら」。去年、JR小浜線の十村駅のリニューアルに合わせて、駅の事務室がカフェに生まれ変わりました。
メニューはコーヒーにうどん、ぜんざいとシンプルながらもそそるラインナップです。しかも安い!なのに、注文なしでも休憩できるんだとか。カフェ内はWi-Fi完備で、窓際の席にはコンセントもあり、いずれも無料で使えるそうです。なんて太っ腹。
取り壊しの方針…立ち上がった住民たち
オープンしてまだ1年にも関わらず、歴史ある雰囲気を漂わせる「ほっとむら」。天井の梁は、築100年を過ぎた旧駅舎のものをそのまま残しているんです。
リニューアル前の十村駅です。無人駅で、駅舎の老朽化や利用者の減少などを背景に、一時は取り壊しの危機に陥りました。
そこで立ち上がったのが、町の人たちです。元国鉄職員の田中信一さんをはじめとした有志4人が一般社団法人を立ち上げ、自分たちで駅を運営していくことにしたのです。地域住民の憩いの場にしたいと、駅舎をリニューアルするだけでなく、カフェも併設することにしました。資金は三十三地区の住民の家をめぐって寄付を募ったり、クラウドファンディングをしたりして集めました。
「電車が遅れたりとまったりしたとき大変だろう」ということで、高校生が休める場所を残してあげたい、そういう強い思いがありました。築105年の貴重な木造駅舎を昭和レトロ風に改修してみなさんが気楽に来られるように、ということで。
十村駅に強い愛着があるからこそ、自ら運営していくことを決めたという有志のみなさん。思い出を口々に話してくれました。
われわれの年代の人が就職するときはここから蒸気機関車に乗っていきましたから。
小さいときはお父さんに連れられて敦賀のかつ丼を食べに汽車でいきました。
乗った時に煙が入ってきて目が痛くてね。
すべての出発はここからですね。
老いも若きも 運営は住民自ら
地域の人たちに愛されてきた十村駅を守り、次の世代まで受け継いでいきたい。そんな思いがつまった十村駅のカフェ「ほっとむら」は、三十三地区の住民のみなさんがボランティアで支えあっています。オープンから1年が経ち、地元の人たちの憩いの場となりました。
利用客の男性
とりあえず毎日、午前午後2回来るから。ここへ来れば誰か知っている人がおるし、やっぱりそういう人たちと話したりして。
「十村駅を盛り上げたい」という思いは、若い世代にも広がりました。地元、美方高校食物科の生徒たちが、カフェでオリジナルメニューを1日限定で提供。
さらに、美術部の生徒たちが、駅の駐輪場に巨大なイラストを描きました。かつて小浜線を走っていたSLと、美術部員自らがデザインした三十三地区のキャラクターなどが描かれています。
イラストを描いた生徒
全体が大きくて描くのがすごく大変だったのですが、みんなで協力しながら頑張りました。描いているときに地域の方がいらっしゃって「にぎやかになるね」などと言ってもらえたのでとてもうれしかったです。
思い出に残る駅、気楽に集まれるような場所にずっとしていきたいなと思っています。
地域の人たちによって取り壊しの危機を乗り越えた十村駅。これからも地域の交流の場としてにぎわい続けます。