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福井 越前がに水揚げNo.1 越前漁港のブランド戦略に迫る

福井ザクザク!掘らナイト「漁港密着!24時」2023年4月7日放送
  • 2023年05月24日

    福井が誇る高級グルメ「越前がに」。その水揚げ量で県内一を誇るのが、越前町の越前漁港です。1日の取引金額は、なんと1億円を超えることも。競りの様子をのぞいてみると、そこには高級ブランドを守り続けるための様々な工夫がありました。

    1日で1億動く!「越前がに」の競り

    福井を代表する海の幸「越前がに」は、県内の港で水揚げされるオスのズワイガニです。福井の沿岸は寒流と暖流のぶつかる好漁場で、身は淡白で甘く、ミソは濃厚なのが特徴。およそ100年前からほぼ毎年、皇室にも献上されています。

    その「越前がに」の水揚げでトップに立つのが、越前町にある「越前漁港」です。 とれたての新鮮な越前がにが、ここから県内各地の飲食店、全国に届けられます。競りが始まるのは朝9時、漁港にはたくさんの仲買人が集まり、熱気が充満していました。1日で取引される金額はなんと、1億円を超えることもあるといいます。

    1隻分の水揚げ

    越前がにの競りは、水揚げした漁船ごとに行われます。重さごとに列で分け、順番に競りを行い、仲買人は1列すべてを購入します。この方式を“列買い”といいます。1列20杯のかにを1万円で競り落とせば、仕入れ額は20万円という具合です。

    5秒!で値決め ベテラン競り人の技

    越前町漁業協同組合 山本卓さん

    競りを取り仕切るのは漁協の職員です。越前町漁業協同組合の山本卓さんもそのひとり。販売を請け負う競り人には、全てのカニをさばききるため、スピーディーに買い手を決める事が求められるといいます。

    買い手は手の形で値段を示す

    仲買人は手の形で希望の価格をアピール。競り人は最も高い値を付けた人を買い手に指名していきます。1回の競りの開始から落札までの時間は、わずか5秒ほど。競り人は神経を研ぎ澄ませ、仲買人の手の動きに集中しているんです。
    加えて大事なのが、競りを間延びさせない“判断力”です。 山本さんは、当日の水揚げ数はもちろん、最近の漁の状況、今後の天候などから需要と価格相場を予測して競りに臨むといいます。

    ベテラン競り人
    山本卓さん

    いいものはやっぱり高くというので、仲買人の指を見ながら「この人まだほしいかな」とか「この値段ならいらんのか」とか、そういう駆け引きもしています。

    売り手も買い手も“ブランド第一”

    真剣勝負の場である競りですが、そこには“買い手”と“売り手”双方の協力によって「越前がに」のブランドを守る徹底した品質第一主義が貫かれています。

    じつはカニには、個体ごとの質に大きな差があります。 そのため、売り手は競りにかける前に全てのカニを並べて状態をチェック。基準を満たさないものはその時点ではじきます。さらに、競りが終わったあとにも厳しいチェックがあります。買い取った仲買人が「身入りが悪い」と判断すれば返品できる越前漁港ならではのシステムです。

     こうして返品されたカニやいわゆる“傷物”のカニは、改めて競りにかけられます。そのため越前がにの競りは、朝9時から15時まで、なんと6時間におよぶ持久戦なんです。

    一杯310万円も 最高級品「極」の秘密

    越前がにの最高ランク「極」(きわみ)も、売り買い双方の目利きが認定に参加し、その品質を守っています。

    「極」候補となるのは、重さ1.5キロ以上のカニです。さらに状態を細かくチェック 。甲羅の硬さや色味、左右対称であるかを吟味します。十数人いる参加者全員が同意しないと「極」には認定されません。

    写真提供:越前町観光連盟

    この冬の越前がにの水揚げは約15万杯でしたが、厳しい品質チェックの末に「極」に認められたのは、たったの35杯。「極」の平均額はおよそ22万円で、初売りの時には一杯310万円もの値がつきました。

    越前の新名物 紅ズワイガニ

    「かにの町」として全国に知られる越前町ですが、越前がにの漁期は毎年11月から3月までの5か月弱。このかにのシーズンを伸ばすために一役買っている「かに」がいることをご存じでしょうか。

    それがこちらの「ベニズワイガニ」です。ゆでたあとの様な真っ赤な見た目が特徴。漁期も9月~6月までの10か月と長く、かにの町・越前の新たな名物となっています。
    じつは、福井でベニズワイガニ漁を行う船はただ一隻です、その船、大喜丸の船長 山下富士夫さんの漁に同行させてもらいました。

    港を朝5時半に出発、3時間半かけて90キロ沖合に到着しました。荒波のなか、海底に仕掛けたカゴを引き揚げていくと、たくさんのベニズワイガニが入っています。

    全て港に持ち帰るのかと思いきや、山下さん、せっかく獲ったカニの半分以上を次々と海に戻していきます。一体なぜなんでしょうか?

    ベニズワイガニが生息するのは、水温0度の深海1000m付近です。 成熟する前のカニは、引き上げられると温度変化などに耐え切れません。すぐに鮮度が落ちるため、これまでは缶詰などの加工用として、安い金額で取引されていました。町でも“ベニズワイガニ”を知る人は少なかったといいます。

    ベニズワイガニの価値を上げるため「生かしたまま水揚げしたい」と考えた山下さん、8年前から成長度合いを測るため、甲羅とハサミの計測を始めました。データを研究者と分析すると、ハサミの大きさで十分に成熟しているかどうか判別できることがわかったのです。

    ベニズワイガニの刺身

    以来、山下さんの船では未成熟なカニは海に返す手法を徹底しています。生きたまま水揚げされたベニズワイガニは、刺身でも楽しめる鮮度の高さで、その品質が市場でも評価されるようになりました。同時に、ベニズワイガニの資源保護にもつながっています。

    漁師
    山下富士夫さん

    子どもの世代、孫の世代までずっと仕事したいじゃないですか。何年経っても続けるような仕事にしたいなっちゅうのもあったので。

    全国にその名が知られる「かにの町」越前町、そこには地域の恵みを大切に守り続ける漁師や仲買人たちの誇り高い姿がありました。

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