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地域づくり情報局

一人も取りこぼさない社会をめざして

大阪府豊中市のコミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子さん。地域や家族から孤立する人々に寄り添い支える日々を綴ります。

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2020年12月08日 (火)

コロナに負けない地域のつながりを作る(2)

第1回はこちら

活動再開に向けてガイドライン作り

緊急事態宣言が空けて5月20日から、新しい生活様式のもとで活動を再開していこうという方針が政府から出されました。わたしたちは、「コロナで 死なない・生活苦で自殺をしない・地域の中で孤立死をさせない」という3つのことを同時にしていくために、今までと違う新しい生活様式下での地域活動の再開に向けて、一定のガイドラインを作ろうと考えました。

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ガイドライン

配食や会食会はどうしたらいいのか、体操教室はどう運営すればいいのか、子育てサロンや子ども食堂はどうしたらいいのか。専門家の方々にも監修をしていただきながら、ひとつひとつの活動ごとに、何をやってよくて何をやってはいけないのか、シミュレーションをしてガイドラインにまとめ、地域のみなさんに情報提供をして、その中でできることを選びながら活動していただくことを提唱しました。

たとえば体操教室なら、人数を半分に、あるいは会場を2倍の大きさにして、人が密にならないようにして時間も短縮するというような工夫です。そういうふうに、少しずつできることを増やしていった。そこから一気に、地域の皆さんの知恵と工夫が始まっていったわけです。

わたしたちが作ったガイドラインは新聞でも紹介されたので全国から問い合わせがあり、300か所以上に送ったと思います。ただこれは、「私たちはこういう事に気をつけてやっていこう」というもので、政府が作って全体に伝えるようなガイドラインとは違います。感染状況も地域によって全然違いますし、全国の活動に当てはまるわけではありません。

ですのでガイドラインを送るときには「皆さんの知恵と工夫も、私たちに提供してください」とお願いをして、私たちの作ったガイドラインを参考にして作られたものをメールで送っていただいて、私たちもまた勉強させていただく、というやりとりをしてきました 。状況も変わっているので段階的に見直しをしながら、ガイドラインはその後3回更新しています。

 

ボランティア・参加者の影響を調査

離れていてもつながれる。つながっていくために、コロナの中だからこそできる、従来と違う取り組みとは何だろう、このやり方だったらどうだろうと、みんながどんどんアイデアを出していきました。

たとえば、それまでは高齢の方々がみんなで集まってご飯を一緒に食べていたのを、「じゃあテイクアウトにしよう」と外にテーブルを置き、喋らないでマスクして検温をして、食べるものを渡してさよならする。

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検温してお弁当を渡す

お届け物や食事などを持ってお家を訪問する友愛訪問という活動も、「早く会いたいね」と短冊に書いて七夕の笹を玄関で渡したり、「コロナに負けるな」と書いたうちわを持って行く。

子育てサロンなら、赤ちゃんを床でゴロゴロ遊ばせるようなことは難しいけれど、屋外だったら大丈夫よねということで公園でのサロンを始めてみました。読み聞かせなどは短い時間にして、お母さん同士が元気な顔を見たり 、LINE のグループを作って情報交換ができるような体制を作りました。

地域の方々から提案があると、われわれも一緒に現場に行かせていただいて、「あ、これは大丈夫、でもここは少し心配だからこうしてみよう」というように、感染防止のための制約がある中でできることをみんなが考えて、少しずつ地域の活動が動き始めたのが6月~7月頃でした。

その時にわかったのは、たくさんボランティアをしていた人たちの方が、これまで参加者として来ていた高齢者よりも、コロナの中で弱っているということでした。それまで社会参加を活発にしていた方々は、いろんな人たちに求められ、自分たちに負荷をかけて、たくさん活動していたのですが、そういう方々こそが、非常に弱っているということがわかってきました。

そこで、市内のボランティアの方々や、一般参加者の高齢の方々などを対象に3000人ぐらいの調査を今回初めて行いました。現在は集計をしているところです。コロナ前と自粛後でどのくらい体が弱ったか調査をすることで、社会参加ができなくなったり、自粛で社会に出られなくなったことによる影響がどれぐらいあったかを評価していきたいなと思っているところです。

 

孤立する若者たちへの支援

こうやって地域の活動が少しずつ始まったところで、もうひとつ、街の中で心配な人たちが見えてきました。それは大学生たちでした。

コロナ下でみんなが自粛している中で、ひとり暮らしの大学生の人たちが、アルバイトもなく、学校にも一度も通うことができず、ずっとオンラインで授業を受けていて、孤独になっているという実態がわかってきたのです。

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大学生向けパンフ

そこで豊中市内にある大学と連携をとって、大学生を対象にフードバンク、食糧支援を行いました。その頃ちょうど学校給食が止まったために給食センターが2トンのコメを豊中社協に寄付してくれました。それがきっかけになって、社協の中に、困っている誰もが食糧を受け取りに来ることの出来る常設型のフードバンクを開設していました。そこで、学生さんたちも支援していこうということになりました。

応援をさせていただいた学生さんたちからは、「ずっとオンライン授業で、合格発表を見てから一度も大学に行っていない」というメールや、「母子家庭だったけれど、お母さんが亡くなって天涯孤独になった。本当に孤立して気持ちが塞いでいた時に、このフードバンク食材支援の案内をもらった。軽い気持ちで、食糧がもらえるんだったらラッキーと思って応募したら、食材の中に手作りマスクが入っていて、なんだか親戚から送ってもらったような、暖かいものを感じた」というメールも寄せられました。

「誰も知らない土地にも、こんなふうに、自分たちのような学生のことを考えてくれる人たちがいるんだということが、すごく励みに思えた」。そういうお便りがたくさん来たんですね。

そこから私たちは、「定時制高校の子たちはどうしているんだろうか」「大学の寮にいる人たちはどうなっているのか」と、若い人たち、これまで社会福祉協議会になかなかつながることが難しかった若い人たちにもアブローチをして、応援をし始めました。

この取り組みには、豊中市内で大きな波紋がありました。これまでどんな人たちがコロナで困っているのか、なかなか見えなかったんですが、大学生などが困っているという声を届ける中で、多くの寄付金や食材の応援をしてくださる団体が出てきました。そういう意味では、コロナで大変な思いをしている人とそうでない人たちの格差が本当にあるわけです。応援できる人たちが「助けたい」という気持ちをもって応援してくれたのも、今回コロナの中で嬉しかったことの一つです。

また、支援を受けとった大学生たちが、この11月からは、子どもたちに勉強を教えてくれる学習支援のボランティアとして参加をしてくれることが決まりました。支えられていた人が支える人に変わっていく。そういうことを実感する出来事でもありました。

 

ひきこもりの若者たちの力を生かす

食材支援の取り組みの中では、梱包したり輸送したりという仕事を、引きこもりだった若者たちに協力してもらいました。彼らは人と接することは苦手なことが多いんですけれども、こういう作業をとても真面目に丁寧にしてくれたので、それがきっかけで仕事に出ることが出来るようになった若者が何人もいました。

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さらに、社会に出ることがつらかった若者の家庭を訪問すると、「楊貴妃」という美しいメダカをたくさん繁殖させて育てていました。そのメダカが、ひょっとしたらコロナの中で孤独を感じていたり、ちょっと鬱っぽくなってる人たちを癒すことができるんじゃないかということで、みなさんに分けるという「メダカプロジェクト」を始めました。

そうしたら多くの人たちが共感をしてくれて、世の中が空前のメダカブームになりました。この若者の育てたメダカが、それぞれ一人暮らしの高齢者や老人ホームや保育園などで元気に皆さんを癒やしている。そのことがきっかけで、彼も社会に一歩足を踏み出しました。

こういうふうに社会がスローになったり、多くの人たちが在宅で暮らす生活になる時には価値観が大きく変化していくわけですけども、引きこもりの若者だとか、長らく在宅で生活していた人たちの知恵というものが、そういう時にずいぶん活かされるということにも気づかされました。

前回お話ししたように、コロナをきっかけに豊中社協ではYouTube のチャンネルを作ったのですが、そこにも折り紙を折る人が登場しています。彼も、長らく家の中で生活している時に自分が楽しむために始めた折り紙が、こんなふうに社会の役に立ったことを、とても喜んでいらっしゃるようです。

 (第3回に続く

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勝部麗子さん(コミュニティソーシャルワーカー)

10年前、大阪府で初導入された地域福祉の専門職=コミュニティソーシャルワーカーの第一人者。大阪府豊中市社会福祉協議会・福祉推進室長として、様々な地域福祉計画・活動計画に携わる。2006年から始まった「福祉ゴミ処理プロジェクト」では、孤立する高齢者に寄り添い、数多くのゴミ屋敷を解決に導いた。厚生労働省社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」委員。信条は「道がなければ作ればいい」。

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