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地域づくり情報局

一人も取りこぼさない社会をめざして

大阪府豊中市のコミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子さん。地域や家族から孤立する人々に寄り添い支える日々を綴ります。

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2020年12月15日 (火)

コロナに負けない地域のつながりを作る(3)

(第2回はこちら)

子どもたちを支える活動も再開

わたしたちの街では、4年前から子ども食堂の取り組みを始めていました。ネットワークを作りながら21か所に常設型の子ども食堂を開設し、そのほかにも長期の休みの間に対応するような食堂を5箇所、というように、子どもを支える居場所がどんどん増えていました。

それが、コロナの影響で人を集めることができなくなり、テイクアウト方式で食事を渡す取り組みを細々と続けているところもありましたが、全体としては活動が止まってしまった状況でした。

その止まっている間に、地域の中で子どもの色んな問題が見えなくなっているということを、すごく感じていました。「発見力と解決力」とよく言ってきているんですけども、地域の発見力が下がってしまうと、いろんな問題が潜在化してしまって、SOSをキャッチしサポートすることが難しくなってしまうことがわかってきました。

5月以降は高齢者の集いなどがしだいに再開してくるわけですけれども、深刻な子どもたちの問題にはなかなか手が届かないという状況がありました。やっぱり子ども食堂を止めてはいけないんじゃないか、少し一歩踏み出したいということで、8月からは、食事を渡すことに加えて学習支援を始め、さらにいろんな生活体験をしてもらう取り組みを始めたわけです。

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あぐりのスイカを食べる子どもたち

たとえば野菜の収穫体験を子どもたちに提供しようということで、豊中あぐりのおじさんたちが作った大きなスイカをみんなで切って食べるということをやりました。向かい合って食べると飛沫が飛ぶので、全員南向きにベンチに座って同じ方向を向いて食べましょうと呼びかけました。

また学習支援も、座る場所を離してフェイスシールドをしながら勉強を見てもらい、一緒に食べることはしないけれど美味しいお弁当を持って帰ってもらうというように、子どもの生活を支える取り組みもちょっとずつ再スタートさせてきたところです。

 

配食を通して子どもたちを見守る

貸付の窓口で出会った母子家庭のお母さんが、「生活がとても苦しくて子どもに食べさせることが難しい」という話をされていると聞きました。

今は子ども食堂はできないんですけれど、なんとかこういう厳しいご家庭に見守りをできないかということで、いろんな社会貢献の取り組みをされている社会福祉法人の方にお願いをして、お弁当を作っていただき、私たちが宅配をするという形で見守りをしていくことを始めました。そんなにたくさんの数ではないんですけれども、これまでの活動でつながってきたご家庭などに声をかけたりして、9月から配食をスタートさせました。

ひとり親家庭ですべての家事を担っているお子さんは、私たちがお弁当を持っていくその日だけは、子どもの顔に変わります。誰かに作ってもらった食事を食べられる日だからです。さまざまいろんなご家庭の事情がありますから、食事を介してお話ができるのはとても良かったな、今後もこの取り組みは続けていくことが大事かなと考えています。

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宅配されたお弁当

 

「コロナ貧困」に対応するセーフティネットの見直しを

コロナの影響で春から減収した多くの人たちのための緊急貸付が11月には終わってしまうので、今、延長の貸付の時期に入っているのですが、これから収入が途絶えて、もうどう考えても生活が難しいでしょうという人たちもいらっしゃいます。

インバウンド関係などの職業の方はなかなか生活改善の見込みがないということで、毎月お会いする時に、どうにもならない状況を訴えておられるわけなんですけれども、「もう生活保護を受けられたらどうですか」とお伝えすると、どの人も「生活保護を受けるぐらいなら死んだほうがマシだ」というふうにおっしゃるんですね。

死んだ方がマシだ、受けることは恥だと思うような生活保護って、いったい何なんだろうかと。

生活保護は、自分が苦しくなった時に支えてもらう最後のセーフティネットだったはずなんですが、「死んだ方がマシだ」とみんなが口をそろえて言うような、そこまで惨めな気持ちにさせられるような生活保護でいいのかと思います。福祉は、そこにあるけれども行けないガラスの壁になっている。その壁をなんとかとっぱらっていかないと、本当に困った時に誰も救えない仕組みになってしまうんじゃないかと、あらためて思ったところです。

今回コロナによって、これまでまったく貧困や生活保護とは無縁だった人たちが、急激に生活が落ちてしまい、新たな「コロナ貧困」という層が大量に生まれています。イベント会社の社長さんで車でお仕事をされてた人も、急にイベントができなくなって収入が途絶えてしまうと、支出だけが増えて一気に生活が落ちてしまう。

そうしたときに生活保護を受けようとすると、財産があっては受けられませんから、じゃあローンを払っていたマンションも車も全部売って、子どものための貯蓄や学資保険もやめて、それでお金を使い果たしたら、生活保護に入る、こういうことになると、躊躇(ちゅうちょ)される方が多いのも事実だと思うんです。

たとえば住宅ローンを払ってマイホームを持っていたり、基準以上の家賃のところにお住まいになっていたら生活保護が受けられないという仕組みのままでいいんだろうか。それからタクシーの仕事をされている方々も、今とても生活が厳しいんですが、「じゃあ何か別の仕事に就かれたらどうでしょうか」と提案をしても、それ以外の仕事に就くための就労研修のような制度もほとんどありません。そうすると生活は苦しくなっていきますが「ひょっとすると数ヶ月の間に元に戻るかもしれない」と思っている限りは、なかなか違う仕事に変わろうという気持ちにもなりがたいというのも現実だと思うん ですね。

コロナは一つの災害にあうような問題なので、災害救助法ではないですが、この時期をサポートできるような新たな手立てや特別の支援を考えていかないと、こういう方々を救うことはできないんじゃないかというのが、今わたしたちの考えているところです。

もともと生活保護は入りやすくて出やすい制度を目指してきました。でも今は、入ることが非常に難しくて、いったん入ると、今度は生活保護から抜け出すことが難しい。このようなセーフティネットのありようを、コロナをきっかけに見直していくことができれば、本当に困った時に頼りになるセーフティネットにできるのではないかなと思います。

 

コロナをきっかけに新しい挑戦

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リモートで行われた校区福祉委員会の懇談会

 

最後に、あたらしい兆しが少しあります。わたしたちの街では、このコロナの中で8月~9月の間に「福祉なんでも相談窓口」のすべてに iPad を設置して、オンラインで研修をしたり、みんなで集まらなくてもそれぞれの地区との会合ができるような体制を作りました。

昨日は、平均年齢が85歳越えの「ひとり暮らし老人の会」の役員会もオンラインで行いました。みんなそういうのは初めての経験で、「やったことがないからできない」と最初は言っていましたが、やってみるとできる。新しいチャレンジでした。これまでは、何か制約があってやれないと思っていたことが、自分たちも挑戦すればできるという気持ちに変わって、今がんばっているところです。

各小学校区のみなさんが、離れていてもつながれるような様々な取り組みを始めています。活動の内容を写真で撮ってそれをパソコンにアップして、さらにズームでつながって写真を見ながらみんなで交流する。半年前には誰も想像できなかったんですけれども、そんなこともできるようになってきている。

ピンチがたくさんあるコロナの状況でしたけれども、これがきっかけになって YouTube チャンネルであったり、オンラインだったり、あたらしい取り組みが広がっていった。これはわれわれにとっても大きな財産だなと思っています。

将来的にはこうしたオンラインの交流の場が、通信料など払えない貧困世帯の子どもたちの学習支援の場などにもなればいいな、と考えているところです。

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勝部麗子さん(コミュニティソーシャルワーカー)

10年前、大阪府で初導入された地域福祉の専門職=コミュニティソーシャルワーカーの第一人者。大阪府豊中市社会福祉協議会・福祉推進室長として、様々な地域福祉計画・活動計画に携わる。2006年から始まった「福祉ゴミ処理プロジェクト」では、孤立する高齢者に寄り添い、数多くのゴミ屋敷を解決に導いた。厚生労働省社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」委員。信条は「道がなければ作ればいい」。

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