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地域づくり情報局

授業で使っています!

全国の大学や高校で使われている、NHK地域づくりアーカイブス。どんな使い方をしているのか、先生たちに紹介していただきます。

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2022年10月17日 (月)

大正大学地域創生学部専任講師 社会教育士 出川真也さん

映像を用いた地域意識を育む教育と研究の促進
-フィールドワークや社会教育における「NHK地域づくりアーカイブス」活用-


私は社会教育・生涯学習論が専門で、地域づくりにかかわる住民や組織・団体の教育や学習活動を対象とした研究に取組んでいます。こうした立場から学生教育と研究活動の両方で、NHK地域づくりアーカイブス(以下、アーカイブス)を活用しています。

1.「地域実習」授業での活用

所属する大正大学地域創生学部では、年間で約2ヶ月にわたる「地域実習」という必修科目があります。学生らが全国の複数の地域に分かれて赴き、地域の活動に参加しながら、住民と共に実際の課題に取組むフィールドワーク型の授業です。このような地域との連携・協働を目指す授業では、現場での学びも大事ですが、地域の営みに対してイメージや感性を磨き、自分事として問題意識を持つための事前・事後の学習が重要です。こうした場面でアーカイブスは役立ちます。

taisho_degawa_01.jpg写真1:地域実習授業の事前課題提示の様子

例えば、地方の地域集落へフィールドワークで入る際には、まずは地域に根ざした知恵や技術、暮らしの営みや生活文化といったことを学ぶことができる姿勢が求められます。「地元学で地域を元気に(全3回)」は学生たちにとって示唆的です。地域の問題や住民の危機感に対して、どのように住民と共に取組んでいくのか、具体的な状況の受け止め方やコミュニケーション方法の一端を映像から学ぶ事ができます。
視聴した学生たちは、地元学のインタビューの仕方やマップづくりといった技法面だけでなく、地域や住民と寄り添うということがどのようなことなのか、理念的な面でも具体的なイメージを持つことができます。学生たちは、アーカイブスを視聴する前までは、地域づくりのテーマや調査方法について、単に「情報発信」とか「アンケート調査」など、表面的な次元までしかキーワードが出てこず、なかなかイメージできないものです。しかし視聴後は、「誰に向けて何のためにどのような情報を収集し発信するのか」「アンケート形式では拾いきれない現地の人々の声をどのように取り上げることができるか」「地元の方が主体となることができるような調査方法をどのように設計できるのだろうか」など、実習の趣旨や内容、方法についてより実践の場面に即して考えるようになっていきます。
このようにアーカイブスを用いて、様々な事例を視聴しながら現場で求められる視点を育んでいます。

2.専門科目「社会教育・生涯学習論」関連授業での活用

地域づくりの基盤となるのは、地域住民をはじめ、地域の様々な団体や企業・NPO等、担い手となる人々や組織です。そのような人々や組織をどのように育成するのか、そのための教育や学習にどのように取組むのかといった観点が大切です。私が専門とする社会教育・生涯学習論は、まさにこうした視点から地域づくりにアプローチすることを目指しており、私自身はこれを「地域創成の教育学」(https://degawaken.com/ NHKサイトを離れます)として位置づけて取組んでいます。こうした専門教育や研究の場面でもアーカイブスの活用は有効です。

taisho_degawa_02.jpg写真2:授業内で動画視聴しながら意見交換

アーカイブスの各動画素材は、ジャンル分けされており、関連キーワードもあげられています。「教育・子ども・若者」というジャンルや「生涯学習」というキーワードも設定されているので、私の担当する専門授業では、よくここを入り口として活用しています。
例えば、「地域住民の学びと活動を支える公民館」では、公民館が、戦後の歴史において民主主義を育む上で重要な場であったことから、現在において地域づくりの場面で新たな役割を果たしていることまで、貴重な資料映像を含めて視聴することができます。映像の中では、公民館を拠点に社会教育活動に取組む住民や組織、研究者などが登場し、その声から、地域の人々が自由で柔軟な学びを自主的に積み重ねていくことの大切さを、理念と実践の双方から感じ取ることができます。
このように表層にとどまらない地域づくりの本質的な問題や課題についても、アーカイブスを活用することで、臨場感を持ちながら、学生たちと共に関心を深め考えていくことができます。

3.具体的な利用方法‐事前・事後学習や導入・展開・まとめなど段階ごとの利用‐

このアーカイブスは、地域、テーマ、ジャンル、キーワードなどから検索することができるため、学生教育と研究活動の双方において、「端緒」をつかむ際に有効です。

各動画には、わかりやすいタイトルや丁寧な概要説明も掲載されています。そのため授業を準備する教員にとって使いやすく、また学生が独自に探索しようとする際にも活用しやすい仕様となっています。そのため、実習授業などの事前・事後学習での利用の他、専門科目の講義から演習(ゼミ)に至るまで、教員や学生の工夫次第で、様々な場面で多様な方法で利用できます。例えば講義形式の授業では、授業テーマを提示する際に、具体的なイメージを持ってもらうための素材として冒頭部分で全体で視聴したり、あるいは講義後のレポート課題において学生たちが参考資料として個別に視聴するなどしています。また、演習(ゼミ)形式の授業では、学生たちと議論しながら視聴することも多いです。基本的に10分程度のコンパクトなクリップ映像になっているので、テンポ的にもゼミのディスカッションを進める際に適していると思います。

taisho_degawa_03.jpg写真3:社会教育授業での利用の様子(ジャンルから参考事例を探索する)

具体的には、私は次のような方法で利用をしています。

(1)実習科目での利用方法-フィールドワークの事前・事後学習として-
「地域実習」をはじめフィールドワーク等の現地活動を伴う授業では、先述の通り、事前学習や事後学習の一環として利用しています(図表1)。

taisho_degawa_04.jpg図表1:フィールドワーク授業での事前・事後学習での利用方法

事前に訪問するフィールドと関連性の高い事例を探して視聴し、イメージを膨らませ、学生自身の問題意識の明確化を図ります。
またフィールド活動後の事後学習として、訪問した実習先での経験を念頭に入れながら、他の地域の類似の取組事例を探して、比較検討するなどの考察をします。フィールドでの体験をより幅広い視野をもってふりかえり深く理解するために役立てます。

(2)専門科目での利用方法-講義から演習(ゼミ)まで導入・展開・まとめとして-
私が担当する社会教育・生涯学習論分野にかかわる専門科目では、各回の授業で取り扱うテーマを提示した上で、いわゆる導入→展開→まとめといった3段階の流れで授業を進めています。内容に応じながら、これらのどの段階においても、アーカイブスの利用が可能だと考えています。

taisho_degawa_05.jpg図表2:専門科目授業における導入・展開・まとめの段階ごとの利用方法

例えば、「成人教育は社会を変える力」の授業テーマでは、導入段階でアーカイブスを用いて、地域の大人たちが学びながら新たなチャレンジをしている事例等を提示します。学生たちにとって、これまでの学校での学習経験ではかかわることが少なかった成人教育が、地域においてどのような意義と役割をもっているのか、具体的にイメージさせることができます。また、「住民参加の地域づくり」「地域づくりの視点と方法」といった授業テーマでは、展開段階でアーカイブスを活用します。様々な実践事例を選び出して視聴しながら、地域づくりにかかわる取組と教育・学習活動のかかわりについて多面的側面から理解していくように促すことができます。「社会の発展と教育の役割」の授業テーマでは、まとめ段階でアーカイブスを利用します。教育や学習の持つ地域づくりの機能や役割について、学生たちが授業で得られた各自の視点をもってアーカイブスを探索し、レポートを書く際の参考資料として利用します。

このように専門分野のやや抽象的な概念や理論的テーマを取り扱う際にも、学生たちが、担当教員自身が提示できる限られた経験や取組だけでなく、全国の様々な実際事例を参考にしながら、その内実を具体的にイメージして理解し考察するために役立てることができます。

4.私のおすすめ動画

これまでにあげた動画の他に、私が授業で活用している「おすすめ動画」をいくつかあげてみたいと思います。

taisho_degawa_06.jpg写真4:フィールド訪問前の学生たちと、アーカイブスを視聴しながら意見交換を行う

(1)「多文化共生の地域づくり」北海道白老町
地域資源を見つめ直すことを通じて、多様な文化的背景を持つ住民間の交流と学習を活性化し、地域づくり実践へ展開しようとする試みがとりあげられています。地域実習の事前学習として、学生の地域を見るまなざしを構築する際に助けとして利用しています。

(2)「生活支援と伝統文化を担うNPO」新潟県上越市
地域内外の若者たちがコーディネーターとなって、地域に沈潜して高齢者の知恵や技術に触れながら、地元の潜在能力を掘り起こし、次世代の担い手人材を育てていく様相が、年中行事の取組の中で描かれます。地域実習後のふりかえりとして、学生たちが実習成果を今後の実践へいかしていくためのスタンスを学ぶ際などに役立てています。

(3)「住民参加で学校づくり」千葉県習志野市、香川県高松市
多様な住民と子どもたち、教員が、それぞれ自分事として学校に主体的にかかわりながら、地域の様々な人材や資源を活用し、地域社会の元気を生み出している姿は、社会教育・生涯学習を考える上で示唆的です。講義授業などでの基本解説と合わせて社会教育と学校教育をつなぐ新たな教育活動を考察するための素材として利用しています。

(4)「みんなが集まりたくなる施設を低コストで」岩手県紫波町
公共施設の建設を、ハード面の物理的環境の整備にとどまらず、人々の交流・学習や地域活性化の力を生み出すソフト面の社会教育経営論的な観点から考える際の題材として、視聴しています。演習授業などでのディスカッションのテーマとして活用しています。

5.教育・研究から現実の地域参加へ

地域づくりにかかわる教育や研究活動が最終的に目指していることは、教室内での知識や教養としての学びにとどまるものではありません。学生や研究者である私自身も含めて、教室や研究室を飛び出して、地域に参加し、地域の人々と共に、よりよい社会の実現に向けて主体的に実践できる力量を育むこと。「実学」としての教育・研究の実現こそ、地域づくりの学びにおいて達成したい課題です。このことは、教育と学習の側面から地域づくりに貢献しようとする社会教育士としての私の使命とも重なるものです。

taisho_degawa_07.jpg写真5:離島で学生と住民の踏査活動の一コマ

アーカイブスには、地域に根ざした様々な取組事例が掲載されています。地域づくりにかかわる人と情報のネットワークに具体的にアプローチし、実際に参加するきっかけにしていくことができるものと期待しています。こうした積み重ねが、自分自身を含め地域の人々と共に、地域づくりに寄与する新たなメディアを育てることにもつながるものだと思います。

地域の皆さんや学生と共に、私自身も地域参加するためのよすがとして、今後もアーカイブスを活用しながら、地域づくりの学びの可能性をさらに広げていきたいと考えています。 

授業で使っています!

出川真也さん (教育学者・社会教育士)

1978年、長野県出身。大正大学地域創生学部専任教員、特定非営利活動法人里の自然文化共育研究所理事長。専門は教育学、社会教育・生涯学習論。東北大学在学中より農山漁村の地域づくり運動に参加する。理論と実践の両面から教育・研究活動に取組んでいる。

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