全国ハザードマップ

「発災時 データで命は守れるか」検討会まとめ

2023/3/9

論点2 リアルタイムデータ利活用のプラットフォーム構築の可能性

<要旨>発災前・発災時にリアルタイムデータを利活用するためには、人流や車両通行実績・電力など各データを業界ごとに統一し、リアルタイムで運用しうるプラットフォームの構築が必要不可欠である。また、持続可能な運用のためには「平時からの運用」「収益化」が求められ、効果を最大化するためには産学官民が連携し英知を結集する「検証用プラットフォーム」の早期構築をすべきである。

 

<先行事例>

一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)では、発災時、リアルタイム災害情報サービスを立ち上げ、車両の通行実績や航空測量会社による空撮写真を掲載・公開し、早期の被害状況把握などに貢献している。

 

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<図6:AIGID リアルタイム災害情報ページ(2021年7月熱海市土石流災害)>

 

<プラットフォームイメージ>

過去発災時データをWeb地図可視化  平時データ収集

〇今後、実災害時のリアルタイムデータ利活用プラットフォームを構築するにあたり、まずは過去発災時のリアルタイムデータをWeb地図上に時系列で集約し、使用するデータの取捨選択も可能な機能とすることで、「どのフェーズでどのデータを組み合わせると救助・支援・避難行動等のどういった判断に寄与するか」の検証を行えるプラットフォーム構築が求められる。

 また、平時のリアルタイムデータも集約・可視化する事で、災害時でのシステム切替への負担を最小限にするとともに、日頃から平時データと過去発災時データを比較することで、異常値抽出等の検証も可能となる。

 

 

データダウンロード可能 産官学民による活用

各データの元データ(または加工データ)をダウンロード可能とし、発災時利活用に関する研究・検証等の目的内使用に限定して、各研究組織・企業等での活用を促進する。研究・検証結果はプラットフォームに対し適切なフィードバックをし、発災時リアルタイム利活用の発展を加速させる。アカデミックや民間で新しい技術にチャレンジする方々がトライアンドエラーできる枠組みが必要。自治体が、実証実験や避難訓練で使える環境も整える。

 

未開拓データの積極的収集・検証

発災時利活用の検証が未実施・途上のデータも積極的に集約するべき。1種類のデータだけでは生かし方が見いだせないデータでも、他のデータと組み合わせることで、現状では想定し得ていない、新たな利活用の芽が見いだせる可能性がある。

 

 

<課題>

 

各データの形式の齟齬

 現状では、各データの形式が異なっており、簡易にデータを統合し活用することは困難な状況である。人流や車両通行実績、電力など、同種のデータは業界ごとに形式などを統一し、一元化しやすくすべき。データを一元管理し、事前にライセンス許認可の整備もすることで、有事の際に即座にデータを利活用できる制度設計が必要となる。

 

産官学民の連携

 より迅速で効果的な社会実装に繋げるため、官民は競うのではなく連携してプラットフォーム設計をすべき。国や自治体で使う想定だけでなく、民間で使うシーンも議論すべき。

 

運営資金

 プラットフォームの運営費を確保する必要があり、必要に応じて国からの支援が求められる。

 

 発災時だけのデータ利活用ではコストセンターになる可能性が高い。また、発災時に異常を検知するためには、平時からのデータ収集・分析が必要であり、平時からのシームレスなプラットフォーム運営が求められる。各種データは、「平時」「復興時」にも観光分析や公共交通最適化など、様々な施策改善に繋げられるポテンシャルがあり、平時からのデータ利活用、並びに収益化を達成できる体制構築の検討をすべき。

 

 大きな災害は不定期に起きるため、発災時のために利用者が恒久的に利用料を支払うことが現実的でないケースもある。年間契約や協定等を予め結び、発災時にデータ利用を可能とし、発災後に利用状況に応じた精算払い等で後払いできる仕組みの検討も必要。

 

運営母体

 一企業がプラットフォームを構築・運営することは困難と予想され、第三者の非営利団体・組織などの設立、もしくは既存の団体・組織が適するプラットフォームをブラッシュアップ・再構築・運営することが求められる。

 

(課題解決について出たアイデア・意見)

 まずは国からの支援も受けたプラットフォーム構築・運営組織を結成し、各種データの収集・統合・検証プラットフォームを構築。発災時利活用に関しては全国自治体やBCP対策に力点を置く企業からの資金提供、平時データとも組み合わせることによる観光・経済動向分析を求める企業からの資金提供などを模索し、5~10年後には国からの支援を最小限とする自律運営可能な組織へと導く。

目 次

論点1 発災前・発災時にどういったリアルタイムデータ利活用の可能性があるか

論点2 リアルタイムデータ利活用のプラットフォーム構築の可能性

論点3 データ提供・利活用促進のトリガーとは

論点4  個人情報活用の可能性と課題について

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