放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC,退職金過払いで元会長ら証言

イギリスの公共放送BBCで幹部職員に退職金の過払いがあった問題で9月9日,英議会下院の公共会計常任委員会の聴聞会が開かれ,元BBC会長のマーク・トンプソン氏やBBCトラストのパッテン会長が証言した。この問題は2013年7月,英会計検査院(NAO)の調査報告で明らかになったもので,2006年から2012年末までに退職した幹部職員50人余りに,合わせて290万ポンド(4億5,778万円)が規定の退職金に上乗せされて支払われていた。聴聞会では,2011年に退職したバイフォード元副会長の退職金が約95万ポンド(1億4,996万円)にのぼることについて,トンプソン氏が「BBCトラストの了承を得ていた」と主張しているものの,パッテン会長は「説明を受けていない」と真っ向から否定するなど責任のなすりつけ合いに終始した。

英メディア相,BBCガバナンス改革に言及

イギリスの放送を所管する文化・メディア・スポーツ省のマリア・ミラー担当相は9月11日,ロイヤル・テレビジョン・ソサエティの年次総会で講演し,公共放送BBCの高額退職金の支払い問題を取り上げ,BBCの内部監督機関と執行部との役割分担に混乱があると指摘し,新しい特許状が発効する2017年を待たず,BBCのガバナンス改革に着手すべきであるとの考えを示した。ミラー担当相は,その方策としてBBCに対し会計検査院の役割を強化することをあげた。イギリスでは,公共放送の政治からの独立を守る手段として,国や公的機関の会計を検査する会計検査院によるBBCの会計検査については限定的な範囲にとどめてきた。

仏ユーテルサット,4Kライブ伝送成功

パリに本拠のある衛星事業者ユーテルサットは,2013年9月12日,超高画質の4Kテレビのライブの衛星伝送に成功したと発表した。4Kテレビは,画面の解像度が800万画素で,現行のフルハイビジョンの4倍あり,次世代テレビと言われている。ユーテルサットは,10A衛星を使い,4K信号を1秒間に60フレームのプログレッシブ方式で衛星に送り,4Kテレビ受信機によるライブでの受信に成功した。これにより4Kによる衛星放送の普及に向け前進することとなった。

独,インターネットによるテレビ番組視聴増加

公共放送のARDとZDFは9月4日,「2013年インターネット利用行動調査」を発表した。これによるとドイツ人の77.2%がインターネットを利用しており,そのうち,少なくとも時々はインターネットでオンデマンドのテレビ番組を見ると答えた人の割合は前年より6%増え36%,テレビ番組のサイマルストリーミングを見る人の割合も前年より3%増え26%となった。また,テレビを視聴しながら,スマートフォン,タブレット,ノートパソコンなどを同時に使用し,インターネット上で番組に関連ある行動をしている人の割合は33%だった。インターネットに使っている1日の平均時間は前年より25分増え108分,テレビ視聴時間は前年と変わらず242分だった。

EU委員会,ボーダフォンによるKDの買収を承認

EUの欧州委員会は9月20日,イギリスの携帯電話サービス大手ボーダフォンによるドイツのケーブルテレビ最大手カーベル・ドイチュラント(KD)の買収を承認した。買収は市場の競争を阻害しないとしている。ボーダフォンによると買収額は77億ユーロ(約1兆円)で,株式公開買い付けで資金を調達する。

伊RAI,新事業契約書から幼児向け番組の広告を廃止

イタリアの公共放送RAIの経営委員会は,9月18日,所管官庁である経済開発省との間で3年ごとに更新される事業契約書(2013~2015年)の内容を承認した。新契約書では,幼児向けチャンネル「RAI Yoyo」上の全番組と,その他のRAIチャンネル上の幼児向け番組内で広告を廃止することや,受信料を財源として制作された番組にはその旨を番組内で明確にテロップ表記することなど,公共財源の透明性を高めるための新しい項目が盛り込まれた。新契約書は,手続き上,RAIの監視を行う議会の両院合同委員会の承認を経て,両者間で署名される。ただし,上記の広告廃止の条項は,発効から90日後に実施することで合意した。