放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,ネット取り締まりを強化

中国の最高人民法院と最高人民検察院は9月9日,インターネット上の中傷や虚偽などの投稿で,500回以上転載されたものや5,000回以上閲覧されたものは,投稿者を最高で3年の懲役刑に処する新たな罰則を設けるとの文書を公表した。文書では,「重大な事犯」として,大規模な抗議活動や民族的・宗教的対立を扇動するものなどを挙げており,違反者はネット中傷の罪に加えて扇動や脅迫などの罪にも問われる可能性があるとされる。この措置を受けて17日,甘粛省の16歳の少年が,男性の死亡事案についてネット上で「遺族が警察から暴行を受けた」などと虚偽の事実を広めたとして逮捕された。今回の措置は,転載や閲覧という,投稿者が直接関与できない行為の責任を追及するもので,ネットユーザーの間では「言論の自由の侵害」との強い反発が出ている。

台湾,渦中の総統がメディア幹部に電話

台湾の馬英九総統が,9月に入ってから続いている立法院長(国会議長)との政争のさなかに,複数のテレビ局や新聞社の幹部に直接電話をかけていたことが分かり,報道への介入として批判が起きている。馬総統は9月8日,王金平立法院長が司法の独立に介入する働きかけを行ったなどと記者会見で強く批判,王氏の国民党籍や立法院長の地位をはく奪する動きに出た。これに対して王氏も裁判所に地位保全の仮処分を求めて抵抗,与党内での権力抗争として注目を浴びていた。馬総統が今回複数のメディア幹部に直接電話したことについて,国民党の高官は,「世論が王院長に同情的な中,司法の独立の重要性を理解する一部のメディアに対し感謝の意向を伝えたもの」と説明しているが,与党国民党の議員からも「明白な報道への介入であり,国家指導者のやるべきことか」との批判が噴出した。

韓国,KCCが衛星・ケーブル向け一部チャンネルの免許更新基準を決定

韓国のメディア規制監督機関であるKCC(韓国放送通信委員会)は9月5日,衛星・ケーブル向けチャンネルのうち総合編成と報道専門チャンネル事業者の免許更新基本計画を決定した。今回KCCが示した免許更新の際の審査基準では,「放送の公的責任・公正性・公益性の実現可能性および視聴者権益保護など」をはじめ9項目について,1,000点満点のうち650点以上であれば事業免許を更新し,650点未満の場合は「条件付き更新」または「免許取り上げ」となる。韓国では,2010年から大手新聞社などが総合編成や報道専門チャンネルの事業免許を取得して衛星・ケーブル向けの放送を開始したが,各社とも事業計画を十分に履行していないとして,KCCが2013年8月に是正命令を出していた。

インド,IBF会長にシン氏が再選

インドの大手商業放送事業者の全てが参加する業界団体IBF(Indian Broadcasting Foundation)は,9月26日, ムンバイでの年次総会でマン・ジット・シン(M.J. Singh)会長の続投を決めた。シン会長は人気娯楽チャンネルSET(Sony Entertainment Television)やSET Max,SABなどの衛星テレビチャンネルを傘下に持つMulti Screen Media 社のCEOで,2012年の年次総会で初めてIBF会長に選出され,今回で2期目となる。シン会長はIBF が取り組むべき課題として,ケーブルテレビのデジタル化の遂行,新たな視聴調査機関BARC(Broadcast Audience Research Council)の立ち上げ,BCCC(Broadcast Content Complaints Council)を通じた番組の自主規制体制の強化などを挙げた。

トルコ,政府系通信社がクルド語放送開始

トルコの政府系通信社アナドル(アナトリア)通信社が,9月1日,インターネットによるクルド語放送を開始した。クルド語放送はトルコ語,英語,アラビア語,ボスニア語,ロシア語に続く同通信社による6番目の言語サービス。放送は写真やビデオ映像を使い,クルド語方言とされるクルマンジ語とソラニ語で行われている。トルコの与野党指導者は,同放送が長年対立関係を続けてきたトルコ政府とクルド人との融和の懸け橋になるとの期待を一斉に表明した。