放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英SeeSaw サービス継続

ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスを提供するイギリスのSeeSawが,Criterion Media Groupを中心とした米投資家コンソーシアムに買収されたと7月14日,報じられた。SeeSawは,送信事業者のArqiva が,2010年2月以来インターネット経由でテレビ番組が見られるVODサービスを行ってきたが,新たな出資者が見つからなければ,6月20日をもって事業を終了すると通知していた。

英政府,ローカルテレビ導入の枠組みを決定

イギリス政府は7月18日,ローカルテレビサービスの導入について,地上デジタル放送の地域周波数帯を確保する方法で行うことを最終的に決定した。また政府は,多チャンネル化するプラットフォームでこのローカルテレビが埋没しないように,電子番組ガイド上でしかるべき位置を確保することも約束した。新ローカルテレビは全国ネットワークという基盤を持たないことが明らかになったため,広告放送収入が見込めず,早くも持続的経営を危ぶむ声も出ている。

BBC「iPlayer」欧州で有料サービス開始

BBCの番組をオン・デマンドで視聴できる「iPlayer」が,7月28日からフランス,ドイツ, イタリアなど欧州11か国で利用できるようになった。「iPlayer」のサービスは,国内では見逃し番組を無料で視聴できるが,海外版は,月額6.99ユーロ,または年額49.99ユーロの料金が必要である。BBCでは,有料にして受信許可料を補完するとしている。海外向けに新旧のコンテンツを揃え,年内にはアメリカやカナダなどでもサービスを始める予定。

仏フランステレビジョン5か年計画合意

2011年から2015年までの5年間に,公共放送として果たす使命を政府と話し合って決め,その財源を政府が保障する「目標手段契約」がフランステレビジョンと政府との間で合意され,7月20日,議会などに提出された。それによると,フランステレビジョンの予算は2015年度までに毎年2.2%増やされ,2011年度の24億6,000万ユーロから2015年度には26億9,000万ユーロ(3,040億円)に増額される。フランステレビジョンは,スマートフォンやコネクトテレビなどニューメディアへの展開を拡大する方針で,2011年度に5,000万ユーロの関連予算を2015年度には1億2,000万ユーロ(135億円)にまで増やすという。この「目標手段契約」は議会や独立規制機関CSAなどの承認を経て最終的に決定される。

伊,主な情報源は依然としてテレビ

イタリアの社会・経済分野のシンクタンクの社会投資研究所(CENSIS)が7月13日に発表した調査によると,主な情報源(複数回答)では,テレビニュースが80.9%,インターネット検索エンジンが65.7%,フェイスブックなどのソーシャルメディアが61.5%であった。また,メディア接触率については,テレビが97.4%,ラジオ80.2%,携帯電話79.5%,インターネット53.1%,新聞47.8%などとなった。2年前の調査と比べ,インターネットは6.1ポイント増で,初めて50%を超えたが,依然として欧州平均の61%を大きく下回っている。

独,レオ・キルヒ氏死去

ドイツのメディア王と呼ばれたレオ・キルヒ氏が7月14日,ミュンヘンで死去した。84歳だった。キルヒ氏は戦後,映画放映権事業から身を起こし,1980年代にドイツで商業放送が解禁されると,Sat.1,ProSieben,Premiereなどのテレビ局設立に関わり,巨大なメディア複合企業キルヒグループを築き上げた。2002年にキルヒグループが有料放送事業への過剰投資などから倒産した後は,一線を退いていた。

独公共放送,オリンピック放送権獲得

ドイツの公共放送ARDとZDFは,2014年ソチ冬季オリンピックと,2016年リオデジャネイロオリンピックの放送権を獲得したと7月4日発表した。支払った金額は合計1億3,500万ユーロ(約150億円)と推定されている。ARDとZDFは今回初めて国際オリンピック委員会(IOC)と直接交渉を行った。これまでは,欧州公共放送連合(EBU)がヨーロッパ各国の公共放送による放送権の一括購入を行っていたが,IOCは2008年にこれを拒否し,各国個別に交渉を行う方針を示していた。