放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC「デジタルデバイド」調査公表

イギリスの公共放送BBCは10月16日,インターネット利用状況調査を発表した。それによると,15歳以上の成人の21%(1,000万人以上)が自宅も含めどの場所でもインターネットを利用していないことが明らかにされた。また,インターネットをまだ利用していない理由として,55歳以下の人は経済的問題をあげ,高齢者はインターネットに関する情報と技術不足をあげた。この調査は,イギリス政府が掲げる「2012年までに全国民のブロードバンド接続」目標に向かい,インターネットの利用推進支援活動の一環として行われた。

英BBCトラスト,オープンiPlayer計画を却下

イギリスの公共放送BBCを監督するBBCトラストは10月20日,オープンiPlayer計画を却下する決定を下した。これは,BBCが商業活動部門の BBCワールドワイドを通じて,国内地上商業テレビのITVや通信事業者のBT(ブリティッシュ・テレコム)らと共同で,オンライン上の見逃しサービス「i Player」の技術とノウハウを商業ベースで第3者に提供することや,BBCと公共サービス放送とみなされる地上商業テレビ事業者が連携して,iPlayer技術を共有し相互にリンクをはるという計画(Project Canvasとも呼称)。ただし,前者のiPlayer技術の商業展開については,代替案があれば検討するとしている。

仏,デジタルテレビの受信世帯が7割に

フランスの規制機関CSAは10月8日,デジタルテレビ受信の普及状況を発表した。6月末の時点で,70.3%の世帯が少なくとも1台のテレビで,地上デジタル放送(TNT)またはADSL,衛星,ケーブルによるデジタルサービスを受信しており,その割合は1年間で15ポイント増加した。39%の世帯では世帯内のすべてのテレビがデジタルで受信している。また43.1%の世帯はTNTを受信しており,経済危機にもかかわらず,無料で視聴できるTNTはデジタル受信の最大の増加要因となっている。一方で17.2%の世帯は地上アナログ放送のみを受信しているが,1年間で11.9ポイントも減少した。

独RTL,地上デジタル放送Viseo+で有料サービス開始

ドイツの商業放送グループMediengruppe RTL Deutschlandは10月15日, 南西部の都市シュトゥットガルトで,ドイツ初となるMPEG4方式による地上デジタル放送Viseo+を開始した。傘下の RTL,VOX,RTL2,Super RTLを無料放送するほか,これまで衛星やケーブルで配信してきた有料チャンネルRTL CrimeとPassionも月額2.99ユーロ(約400円)で提供する。視聴には,約100ユーロ(約1万3,000円)するMPEG4対応STBが必要となる。

欧州裁,ベルリンの地上デジタル放送補助金を違法と判断

EUの第一審裁判所は10月6日,ドイツのベルリン・ブランデンブルク州で2002年に行われた大手商業放送局に対する地上デジタル放送移行支援策がEU 法に違反しているとの欧州委員会の見解を支持し,両州メディア監督機関の訴えを退けた。ベルリン首都圏では,2003年8月に世界で初めて地上放送が完全デジタル化したが,その際,大手商業放送は5年間放送を継続する条件で,送信費分として約400万ユーロ(約5億3,400万円)の補助金を得ていた。これに対し欧州委員会は,ケーブルテレビ事業者を不当に不利にするEU法違反の措置だとして,補助金の返還を求めていた。

伊,RAIの報道トークショーに政府が介入

放送通信業務を所管する経済開発省は10月8日,公共放送Rai Dueの報道トークショー「Anno Zero」に関する調査を開始した。経済開発省は,9月下旬に始まった同番組の今年度初回放送直後から「国家の価値,視聴者と青少年の保護,情報の多元性と完全性の尊重を定める事業契約書の内容に違反する可能性がある」として,検証を行う意向を発表していた。同番組は,報道の自由など硬派なテーマを扱う一方,ベルルスコーニ首相の女性スキャンダル問題にも触れ,渦中にいる相手女性が首相との関係を暴露するインタビューなどを放送した。野党側は「政府が RAIの一番組について調査を行うのは職権乱用」と激しく批判している。