放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米商務省,ネットガバナンスを終了

アメリカ商務省は9月30日,インターネットのアドレスやドメイン名などを割り当てるICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)を管理下に置くことを終了すると発表した。ICANNはカリフォルニア州の非営利団体で,1998年の設立以来商務省の傘下にあったが,インターネットガバナンスに政府の影響が及ぶことについて,内外から批判があった。フランスAFPによると,EUなどはこの動きを歓迎しており,今後は米商務省を含む複数の団体で作る国際的な組織が役割を担うと見られている。

米報道機関,経済報道が不十分-米調査

米ピューリサーチセンターは10月5日,09年上半期のニュース報道に関する調査結果を発表し,米報道機関のニュース報道は,政府や金融に関するものに集中し,経済問題についての報道が極端に少なかったと指摘している。調査は新聞,テレビ,ネットなど約1万本におよぶニュースやリポートを対象に内容分析したもので,経済報道では全体の75%がワシントンかニューヨーク発で政財界の動きが中心だったのに対して,経済が一般国民の生活に及ぼしている影響などについての踏み込んだ報道は5%以下だったという。

アルゼンチン,新放送法成立

南米アルゼンチンで新しい放送法が10月10日,成立・発効した。新法は地上放送を公共サービスと定義し,非政府組織,州営放送局,民間企業のそれぞれに 3分の1ずつ免許を割り当てるとしており,巨大メディアグループの影響力を減少させることが意図されている。新法はまた,同一企業が10以上のラジオ・テレビ局を所有できないこと,テレビ番組の60%を国内制作とすること,ケーブルテレビ局にパブリックアクセスチャンネルを設けることなどを定めている。新法をめぐっては,メディアの寡占状況にメスを入れるものとして歓迎する見方や言論・表現の自由に対する検閲に繋がるとして批判する声などが出て,さまざまな議論が起きている。

米携帯端末向け規格,ATSC M/Hに決定

アメリカの放送事業者等が構成するコンソーシアムであるOpen Mobile Video Coalition(OMVC)は10月16日, デジタル帯域を使った携帯端末向け放送の規格として,ATSC M/H(Mobile/Handheld)方式の正式採用を決めた。これまで日本のISDB-TやヨーロッパのDVB-Tなども検討されてきたが,最終的に米地上デジタル放送のATSC方式を携帯端末向けにした様式が採用された。すでに一部の都市では配信試験も始まっており,本格的なサービスは,2010 年春ごろに開始される見込みである。

NYタイムズ,100人の人員削減へ

ニューヨーク・タイムズは10月19日,年末までに100人の人員を減らし,希望退職者が100人に達しない場合には解雇も辞さないと明らかにした。同社は2008年春にも100人規模の削減が行っている。広告収入の減少が止まらないことから,ネット版の有料化についても議論されている。同社のニュース部門には最も多い時で1,330人が働いていたが,現在では1,250人まで減っている。深刻な経済の影響もあって,LAタイムズ,ワシントンポストなど多くの新聞社でも,軒並み大幅な人員削減を余儀なくされている。

米新聞発行部数が11%減,WSジャーナルが首位

米新聞雑誌発行部数考査機構(ABC:Audit Bureau of Circulation)は10月26日,2009年4月~9月期のアメリカの新聞発行部数が,平日で前年同期比11%減,日曜で7.5%減となったと発表した。1日当たりの発行部数は計4,400万部で,これは1940年代以来最低の数である。新聞別では長年トップを維持してきたUSA Todayが17.2%減の190万部となり,0.6%増の202万部を販売したウォールストリート(WS)ジャーナルが首位となった。WSジャーナルは電子版の売上に支えられ,USATodayは,ビジネス需要の減少によるホテルへの販売の落ち込みが響いた。