放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

台湾,NCC委員の“罷免条項”が議論に

台湾の独立規制機関である国家通信放送委員会(NCC)の委員の人事について,行政院長(首相)に罷免権を与える法改正案が与党国民党から提出され,独立規制機関への干渉だとして委員や野党から反発の声が上がっている。この法改正案は国民党の陳傑氏ら25人の立法委員(国会議員)が連名で提出,10月13 日に審議入りの手続きが完了した。またこのほかにも,別の国民党立法委員らが,NCCの主任委員などの選出を委員間の互選から行政院長の指名に切り替えるとした法改正案を提出しており,メディアNGOの中からも国民党によるメディア管理の強化とする批判が出ている。

韓国,KBS理事長 「社員のリストラは難しい」と発言

KBSのソン・ビョンドゥ(孫炳斗)理事長は9月29日,記者懇談会の席で,KBSが破綻する事態になるまでは人員整理は難しいとの考えを示した。このなかでソン理事長は,「KBSの構造調整は人材を効率的に配置して,生産性を高める方向で行わなければならない。職員の能力を最大限発揮できるようにするのが経営の役目である」と語った。また,KBSの進むべき方向性について,「受信料が28年間据え置かれたため,広告依存度が高まったが,今後は受信料の比率を高めて,公益的な番組を増やさなければならない」とし,受信料引き上げの正当性を強調した。

韓国,受信料免除手続き簡素化システム導入

韓国の放送通信委員会は10月12日,生活保護を受けている人や視聴覚障害者などが受信料免除の申請をする際に,書類提出の手間を省き,身分証だけで申請から結果確認まで行うことができるシステムを導入したことを明らかにした。従来,受信料免除対象者は,地元の指定場所で証明書類の発給を受けてKBSに提出する必要があったが,今回の手続き簡素化により免除対象者は自宅からインターネットを通じての申請も可能になった。

トルコ・イスラエル,TVドラマに揺れる両国関係

トルコの国営テレビTRT-1が10月13日に放送した連続ドラマ『別離,愛と戦場の地パレスチナ』の第1話の中に,イスラエル兵が微笑む少女を狙撃して殺害するシーンなどがあったことから,イスラエルとトルコの関係に深刻な影を投げかけている。この問題についてイスラエルのリーベルマン外相は,たとえ敵国同士であったとしても放送には不適切な内容だとして,トルコ大使の召還を求めた。一方トルコも,イスラエルが参加を予定していた国際軍事演習への参加をとりやめた。トルコはイスラエルと外交関係を持つ数少ないイスラム国家の1つだが,今年1月のイスラエルによるガザ侵攻以来,緊張関係が続いており,同ドラマはそこに一石を投じた形となっている。

鳩山首相,フィリピンに地デジ日本方式採用要望

ASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議出席のためタイのホアヒンを訪問した鳩山首相は10月24日,フィリピンのアロヨ大統領に対し,地上デジタル放送の規格に日本方式を採用するよう要望した。これに対して大統領は,「日本方式の採用を真剣に検討している」と答えた。国際標準化されている地上デジタル放送方式には,日本方式(ISDB-T),米国方式(ATSC),欧州方式(DVB-T)の3つがあるが,移動体向けの地上デジタル放送は日本の「ワンセグ」に強みがあることから,携帯電話の普及率が高いフィリピンへのセールスポイントになっている。日本方式の海外での普及は,2006年6月にブラジルでの初採用が決定したのをはじめ,これまでに南米の5か国に広がったが,フィリピンでの採用が決まれば,アジア諸国では初めてとなる。

インド,DTH総加入件数が1,500万を突破

インドで商用サービスを展開している直接受信(DTH)衛星放送5社の総加入件数が今年6月末までに1,500万を超えた。電気通信規制庁(TRAI)が 4半期ごとに発表する電気通信各事業の実績報告を基に,有力メディア情報サイトindiantelevision.comが10月3日,明らかにした。同記事によると,今年6月末日現在のDTH衛星放送の加入総件数は約1,517万で,今年3月末の総件数1,309万より15.89%増加し,大幅な伸びを示している。