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新型コロナ5類移行 神奈川県内の医療提供体制はどう変わる?

  • 2023年04月21日

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日から5類に移行されます。神奈川県の医療提供体制はどう変わるのか、感染した場合はどうすればいいのか、まとめました。

新型コロナも通常医療の1つに

神奈川県感染症対策協議会(4月18日)

神奈川県は4月18日、専門家などでつくる「感染症対策協議会」を開き、5類移行後の医療提供体制などを協議しました。

「新型コロナウイルスは消えない」

感染症対策協議会では、新型コロナウイルスは消えることなく今後も流行が繰り返されるが、今後、通常医療のひとつに位置づけてほかの病気と同様に対応する必要があることが示されました。

神奈川県 阿南英明 医療危機対策統括官

会議の中で、神奈川県の阿南秀明医療危機対策統括官は以下のように話していました。

新型コロナと人類が半永久的につきあうことは残念ながら医学的にほぼ間違いないし、流行はこれから先も繰り返し、一時的に外来や入院が混み合うこともあるだろう。そういう中で、これからは新型コロナもポピュラーな疾患と考えて、たくさんある病気の一つに位置づけていく必要がある。

法律が変わるということは、気持ちを切り替えて、対応を変える最大のチャンス。新型コロナについては、この3年間、行政が入院の調整や自宅療養者の健康観察などさまざまな介入をしてきたが、これは異例なことだ。5類に変わるこのタイミングで、以前のように患者と医療機関が直接つながる形に戻す必要がある。

新型コロナは、無症状や軽症の人もたくさんいるため、新型コロナ患者がまったくいないという病院や施設はもはやない。また、別の病気で入院して検査したら新型コロナにも感染していたといった「合併症」としてのコロナ患者が多い。今後、より幅広い医療機関で新型コロナ患者に対応できる体制を作っていかなくてはいけない。

感染の疑い まず検査を!

画像提供:神奈川県

5月8日以降、発熱などの症状が出た場合、どうすれば良いのか?
神奈川県はこれまでも市販の検査キットなどを使って自分で検査することを推奨してきました。5類移行後もこれは変わりません。

ただし、医療機関や検査所などでの無料検査は、5月7日に終了します。
検査を受ける場合は自己負担となります。(※金額は施設によって異なります。)

発症後5日間は外出を控えて

5類移行後、外出を控えるかどうかは個人の判断になります。ただ、国は感染した場合、発症の翌日から5日間は外出を控えることを推奨しています。また、発症から10日程度は、ウイルスを排出する可能性があるため、マスクの着用や、高齢者などリスクが高い人との接触は控えるなどの配慮を呼びかけています。

画像提供:神奈川県

自宅療養中の健康観察は廃止 県のサポートは大幅縮小

自宅療養中の人にオンラインで「陽性者登録」をしてもらい、LINEや自動音声通話で行っている「健康観察」や、重症化リスクの高い人に、地域の医師や看護師が電話や訪問で容態を確認して必要に応じて治療や入院につなげる「地域療養」のサポートは、5月7日で廃止されます。県は、療養中に体調が悪くなった場合は、必要に応じて医療機関を受診するよう呼びかけています。

【廃止】
▼自宅療養者のオンラインでの「陽性者登録」
▼LINEや自動音声通話による「健康観察」
パルスオキシメーターの貸し出し
▼経済的事情などで食料や日用品の確保が困難な人への「配食サービス」
「コロナ119番」「療養サポート窓口」による電話相談

【継続】
「新型コロナウイルス感染症専用ダイヤル」0570-056774
看護師を配置。新型コロナに関する相談を総合的に受け付ける。

発熱患者 幅広い医療機関で受診可能に

画像提供:神奈川県

県内では現在、およそ2200か所の「発熱診療等医療機関」で、発熱など感染が疑われる症状がある患者を診察していますが、県によりますと、このうち3割は、日頃から診ている患者しか診ていなかったり、診察していることを非公表にしたりしているということです。

神奈川県では、いずれ新型コロナも他の病気と同じように診察が受けられるようにしていく方針ですが、新型コロナの患者を受け入れていない病院が、すぐに体制を変えるのは難しいのが実情です。そこで、より多くの医療機関に患者を受け入れてもらうために、5類移行後は8月までに①対象の患者を限定せず②それを公表する医療機関だけを「外来対応医療機関」として指定します。

指定された医療機関には、診療報酬が加算されます。県は外来対応医療機関を周知することで、さらに受け入れ医療機関を増やしていきたいとしています。

画像提供:神奈川県

患者が受診を希望する場合は、通常の病気と同じように自分で医療機関に直接予約します。医療機関によっては電話で予約が必要なところも多いため、県はあらかじめ医療機関に電話で相談した上で受診するよう呼びかけています。

コロナ専用病床は最大650床に縮小

新型コロナ患者専用に病床確保料を払って確保する「確保病床」は、現在の2200床から650床に減らします。
他の疾患などで入院が必要でコロナにも感染している患者を受け入れる病床は「協力病床」として1550床以上用意します。協力病床には病床確保料は支払われませんが、コロナ患者の場合に、診療報酬が加算されます。

新型コロナ患者専用の病床を減らしても大丈夫なのか?
県は感染者が最も多かった2022年夏の第7波のピークのような状況になったとしても対応はできるとしています。さらに、これまで患者を受け入れてきた病院に加え、これまでは患者を受け入れてこなかった病院にも改めて協力を呼びかけて協定を結び、体制を整備していくということです。

検査・治療・入院は自己負担あり

画像提供:神奈川県

これまでは陽性が判明したあとの検査代や医療費は公費で賄われていましたが、5類移行後は保険診療になり、解熱剤やせき止めなどの薬も含めて自己負担が求められます。ただし、高額な新型コロナの治療薬は当面9月末まで公費負担が継続され、自己負担はありません。
入院の場合の医療費も通常の病気と同じようにかかるようになりますが、急激な負担増を避けるため、9月末までは高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置が講じられます。

宿泊療養施設は廃止

軽症や無症状でも、自宅などで療養できない患者を受け入れている9か所の宿泊療養施設は、5月7日ですべて受け入れが終了し、廃止されます。

ただし、介護が必要などの理由で自宅療養が難しい高齢者のための短期入所施設は9月末まで継続します。

感染者数の発表終了 週1の感染動向の公表だけに

5類移行後は患者の発生届の提出や陽性者の登録は行われなくなるため、患者の人数を把握することができなくなり、保健所ごとに毎日行っている感染者数の発表はなくなります。

神奈川県衛生研究所が一部の医療機関による「定点把握」で把握した、患者の発生動向を週に1回ホームページで公表します。「定点把握」は、季節性インフルエンザなど、ほかの5類感染症でも行われている方法で、県内ではあらかじめ指定されている378か所から週に1回、年齢層や性別ごとに新規感染者数が報告され、感染の傾向は把握できるとしています。

また、県が県立保健福祉大学と協力して行っている、下水の疫学調査は継続します。下水の疫学調査は県内2か所の下水処理施設から採取した下水に含まれる新型コロナウイルスの遺伝子の量を定期的に分析し、流行状況を把握するものです。実際に感染が拡大するよりも前に流行の兆しを把握できる可能性があるということです。調査結果は県のホームページで公表しています。

県の新たな医療提供体制は当面9月末までの措置で、それ以降については国の方針を踏まえて必要な見直しを行うということです。

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  • 古賀さくら

    NHK横浜 記者

    古賀さくら

    2020年から横浜局で神奈川県政を担当。県の新型コロナ対策や医療・介護福祉分野の現場を精力的に取材。

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