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5類移行後の医療費 自己負担額の具体例 インフルエンザと比べると

  • 2023年3月14日

新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行したあとの新たな方針では、無料となっている検査や外来診療の費用を患者の自己負担とするほか、幅広い医療機関で患者を受け入れてもらうことを柱に見直されます。具体的な医療費負担の変更点、地域の医療機関の受け止めや対応についてまとめました。

医療費 窓口負担分の支援を縮小

厚生労働省は3月10日、新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行したあとの医療費の負担や医療提供体制について、具体的な方針を明らかにしました。

このうち医療費については、現在、窓口負担分を原則、公費で支援していますが、5類に移行したあとはほかの病気との公平性の観点から支援が縮小されます。ただ、急激な負担の増加を避けるため一部の公費支援は期限を区切って継続されます。

新型コロナ 高額な治療薬の公費負担

高額なコロナ治療薬の費用は夏の感染拡大も想定し9月末まで引き続き公費で負担されます。その後は他の疾病とのバランスや国の在庫などを踏まえて冬の感染拡大に向けた対応を検討するとしています。

仮に公費負担が無くなれば、例えば、一般流通が開始されているラゲブリオの現在の価格で計算すると外来での自己負担は最大で3万2470円になります。

厚生労働省は夏の感染拡大への対応として、治療薬や入院費用の自己負担を軽減する支援を続けながら、9月末に他の疾病との公平性を考慮しながら、延長するかどうか検討することにしています。

外来医療費 インフルエンザと比べると

陽性が判明したあとの外来診療の窓口負担分は自己負担に見直されます。

〇3割負担の70歳未満
厚生労働省の試算ではコロナ治療薬の費用が公費で負担されている場合で、例えば70歳未満で窓口負担が3割の人が、解熱剤とコロナの治療薬を処方された場合は、最大で4170円を負担することになります。
季節性インフルエンザで外来にかかり、解熱剤とタミフルを処方された場合が最大4450円なので、ほぼ同じ程度となります。

〇1割負担の75歳以上
また、75歳以上で、保険診療で窓口負担1割の人が、解熱剤とコロナの治療薬を処方された場合は、最大で1390円となります。
季節性インフルエンザで外来にかかり、解熱剤とタミフルを処方された場合は、最大1480円で、こちらも同じ程度となるとしています。

入院 医療費と食事代の負担を求める

入院費用についてはほかの疾病との公平性も考慮し、医療費や食事代の負担を求めることになるとしています。
ただ、急激な負担の増加を避けるため、夏の感染拡大への対応としてまずは9月末まで、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置を講じるとしています。

厚生労働省の試算では入院する割合が高い75歳以上の人のうち、住民税が非課税ではなく年収が383万円までの人が中等症で10日間入院した場合は、自己負担は3万7600円となるほか、別に食事代が1万3800円かかります。

検査の公費負担や宿泊療養制度は終了に

〇検査費用
発熱などを訴える患者への検査については、検査キットが普及したことや他の疾病との公平性を踏まえ、自己負担分の公費負担は終了となります。

〇宿泊療養施設
病床の確保や自宅療養が難しい軽症の患者などのためにホテルなどで受け入れて隔離する宿泊療養の制度は終了します。
しかし、高齢者や妊婦のための宿泊療養施設は入院とのバランスを踏まえ費用を自己負担することを前提に、自治体の判断で9月末まで継続されます。

幅広い医療機関で受診可能な体制を目指す

新たな方針では医療提供体制について、幅広い医療機関で受診ができる体制を目指して2024年4月までに段階的に移行を進めていくとしています。

外来診療は現在のおよそ4万2000から最大で6万4000の医療機関に、入院はおよそ3000からおよそ8200あるすべての病院での受け入れを目指しということです。
医療現場ではどのように受け止めて対応しようとしているのでしょうか。

クリニック 幅広く発熱患者を受け入れへ

東京・渋谷区にある「小泉クリニック」は、当初、発熱外来を設けていませんでしたが、去年10月から、かかりつけの患者に限って、新型コロナの診療を行っています。5類に移行したあとは、幅広く発熱患者を受け入れる方針です。

しかし、発熱患者が増加した場合、院内での感染リスクが高まるほか診察時間を延長せざるをえなくなり、スタッフの負担が増すことを懸念しているということです。

小泉信達 院長
「一般患者を診ながら、十分に発熱患者に対応できるマンパワーと時間を確保できるかは心配ですが、できるだけ患者のニーズには対応していきたい」

入院患者の隔離は継続 経費削減の取り組みも

主に中等症の新型コロナ患者を受け入れてきた東京・江戸川区の「東京臨海病院」では、免疫力が低下している患者の多い病院では集団感染が懸念されるとして、5類に移行したあとも新型コロナの入院患者は隔離する体制を続ける方針です。

一方で、医療機関に支払われる診療報酬は、5類に移行することで、入院の際に加算されていた特例措置が縮小されます。このため、防護服については、陽性患者との接触がない場合は、経費を削減するため、簡略化する方針です。
また、すべての入院患者に行っていたPCR検査は、今後は、患者の自己負担が必要となるため症状をみて判断するということです。

山口朋禎 副院長
「5類に移行しても、コロナが感染力の強いウイルスなのは変わらないので、病院としては警戒は続けていく。しかし、これまでのコロナ診療に比重をかけた体制は見直して、ウィズコロナの医療体制を考えていく」

5類移行後の見直し 専門家はどう見ているか

5類移行後の見直しについて、新型コロナウイルス対策にあたる政府分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授に聞きました。

〇医療費の自己負担
インフルエンザの疑いで受診する場合と同じ程度の費用になるので、受診控えにはつながらないと考えられるが、コロナの治療薬や入院時にかかる費用は自己負担だと高額となるので、しばらくの間は行政がしっかりとサポートするなどして、見直しは段階的に進めることが重要だ。

〇外来診療 患者の受け入れ
無理をせず、できる範囲で協力してもらうことが重要だ。多くの医療機関ではインフルエンザの患者は受け入れているはずなので、インフルエンザに準じた対策に加えて患者どうしの距離や動線の確保や換気など、少し強めた対策をとってもらうなどして、協力してもらえる医療機関を段階的に増やすことが大事だ。

〇診療報酬や交付金の見直し
5類への移行後も患者を受け入れた場合には、防護服やマスクなど感染対策のための消耗品や検査、コロナの重症患者に対応する集中治療室の運用など、病院には日常の診療を行う以上の負担がかかるので、安心してコロナ患者の入院を受け入れられるよう、引き続き国がサポートする仕組みを維持する必要がある。

自治体が移行計画 4月中に策定

厚生労働省は各都道府県に対し、医療提供体制の拡充や医療機関での入院調整を円滑に進めるための移行計画を4月中に策定してもらう方針です。

計画の期間は冬の感染拡大を想定して9月末までとしていて、その後、各地域ごとの計画の進捗状況を踏まえ、必要な見直しを行う計画です。

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