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32歳で子宮頸がん一歩手前に 検診で発覚 休井美郷さんが涙の告白

  • 2023年6月12日

タレントの休井美郷(きゅうい・みさと)さん(32歳)が、子宮頸(けい)がんの一歩手前と診断されたことを涙ながらに告白した動画が、インターネット上で話題になっています。休井さんは今年4月、6年ぶりに子宮頸がん検診を受けて異常が見つかりました。

いま、子宮頸がんにかかる人や、死亡する人の割合が増加しています。その要因の1つとして指摘されているのが検診受診率の低さです。なぜ検診の受診をためらう人が多いのか。休井さんへの取材をもとに考えます。
(首都圏局/ディレクター 實絢子・竹前麻里子)

6年ぶりの検診で発覚 “まさか自分が…”

「びっくりしすぎて。まさか自分がこんなことになっているとは思っていなかったから。皆さん、ぜひ人間ドック受けてください。お願いします」

先月(5月)、タレントやパン教室の講師として活動する休井美郷さんが、動画で子宮頸がんの一歩手前であることを告白し、検診の重要性を涙ながらに語りました。

休井美郷さんのYouTubeチャンネルより

休井さんは2021年に恋愛リアリティー番組「バチェラー・ジャパン」に参加して話題となり、女性を中心に人気を集めています。

今年4月、不正出血など体調に異変があったことから、6年ぶりに子宮頸がん検診を受けました。子宮頸がん検診は、内診台にのり、子宮頸部(子宮の入り口)を、専用の器具でこすって細胞をとり、異常な細胞がないか調べる検査です。

(※20歳以上の女性は、2年に1回、子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。自治体が実施している検診は公費の補助が受けられることが多く、人間ドックでも子宮頸がん検診が受けられるところがあります。詳細については、お住まいの市区町村にお問い合わせください。)

休井美郷さんのYouTubeチャンネルより

休井さんは「検診は痛い」というイメージをもっていましたが、実際に受けてみると「そんなに痛くはないな。こんなものなんだ」と感じたといいます。

その約1か月後に届いた結果には、休井さんが全く予想していなかったことが書かれていました。子宮頸がんになるリスクが高いHPV(ヒトパピローマウイルス)の型が検出され、早急な精密検査を勧める内容だったのです。

休井美郷さん
「最初は実感がわきませんでした。家系に1人も子宮頸がんになった人はいなかったし、身近な友達にも、がんになったという話は聞いたことがなかったので、危機感は全く持っていませんでした。30歳すぎという年齢的にも、自分は大丈夫だろうと思っていたんです。

どうしようと考えていたら、だんだん実感がわいてきて、涙が出てきました。検査結果が来たあと、ずっと子宮頸がんについてネットで検索して、気づいたら朝4時になっている日もありました。

いずれは子どもが欲しいとも考えているので、もしもがんだったら子宮を全摘出する可能性があることも、どうしようと思いました」

その後すぐに病院で精密検査を受け、子宮頸がんの一歩手前である「高度異形成」と診断されたといいます。子宮を温存する方向で治療を受ける予定ですが、医師からは、「あと半年遅ければ子宮頸がんに進行していたかもしれない」と告げられました。

検診を受けるハードルは高かった

6年ぶりに検診を受け、異常が見つかった休井さん。この6年の間に、検診を勧めるハガキが自治体から届いているのを目にしたことはありました。しかしタレント活動やパン教室の仕事などで忙しく、「病院がやっている時間は、仕事を調整しなければならず行きづらい」と感じていました。

人間ドックを受けようと調べたこともありましたが、「予約が取れるのは3週間先」と案内され、「3週間後の予定が分からない」と予約を断念しました。「がんは、若い自分にとっては遠い存在」「検査は痛そう」というイメージも、検診から遠ざかる理由でした。

今回、がんの一歩手前であることを公表し、検診の重要性を訴えた理由について、休井さんは次のように語りました。

休井美郷さん
「検診の結果を見たときにショックが大きすぎて、本当に心の底から、こんなにつらい思いは誰にもしてほしくないし、1つでも多くの命が助かればと思いました。

私のフォロワーさんは8~9割が女の子だから、このことを伝えるのは、私の使命だと思っています。動画を見た方が、1人でも病院に行って検診を受けてくれればという気持ちで発信しました」

子宮頸がんは若い人も注意が必要

子宮頸がんにかかる人は、日本国内で1年間に約1万人。命を落とす人も約3000人にのぼり、交通事故で亡くなる人よりも多くなっています。

子宮頸がんはほかのがんに比べると、がんになる年齢のピークが30代後半~40代と若いことが特徴で、キャリアの形成、妊娠、出産、子育てなどに大きな影響が出ることがあります。

子宮頸がんのほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因で発症します。HPVは、性交渉の経験のある人の大半が一生に1度は感染することがある、ありふれたウイルスです。約200種類以上あるといわれるHPVの型のなかに、がんになるリスクが高い型があります。

HPV感染者のほとんどは感染が自然消失しますが、ごく一部で感染が持続し、数年~数10年の長い時間をかけて、「前がん病変(異形成)」を経て、子宮頸がんになります。

子宮頸がんの死亡率減少に効果があるとされるのが検診です。「前がん病変」以降の異常を早期に発見し、がんに進行する前の段階で治療をおこなうことができるのです。

(なお、性交渉を開始する前にHPVワクチンを打つことで、子宮頸がんになるリスクを大幅に減らすこともできます。HPVワクチンを打った人も、合わせて検診を受け、予防効果を高めることが重要です。HPVワクチンと検診の関係について詳しくはこちら

なぜ?先進国の中でも低い検診受診率

ところが、子宮頸がん検診の受診率は43.7%と、他の先進国に比べるとかなり低いことが課題となっています。

国立がん研究センターは今月(6月)、子宮頸がんに関する最新の情報をまとめた「ファクトシート」を公表し、「日本では、HPVワクチン、子宮頸がん検診ともに十分に実施されておらず、子宮頸がんのり患率、死亡率ともに増加している」と警鐘を鳴らしました。

検診の受診率が低い背景には、女性を取り巻く社会情勢が影響しているといいます。

検診受診率の課題
▼検診の主たる対象者である20~40代の女性は、就職、結婚、子育てなどのライフイベントが多く、自分の健康のために費やす時間が少ない。

▼20~30代女性は、就学、就職、婚姻などで転居する人が多く、検診の案内が本人に届いていない可能性もある。

▼女性は非正規雇用が多く、職場で検診を受けられないことが多い。会社の休みを取って検診を受けにいくこともハードルが高い。

▼学生の場合、学校ではがん検診が行われていないため、住民検診を受診する必要があるが、多くの場合は初めての産婦人科受診となり、抵抗感が大きい… など。

では、検診の受診率を上げるために、どのような対策が求められるのでしょうか。国立がん研究センターの「ファクトシート」では、次のように提案しています。

▼大学・短大・専門学校・中小企業などで検診を提供する枠組みを構築する。週末や時間外に受診出来るよう、提供体制を改善する。

▼検診の対象者や受診歴に関する情報を全国でデジタル化し、検診の対象者や未受診者へのお知らせを効率的に行う。

▼対象者の不安を取り除くために、イギリスなど検診の受診率が高い国のように、母親と娘が同時に受診できる仕組みを検討する。

▼成人式における啓発資材の配布、大学と連携した啓発、ソーシャルメディアや個人用メールアドレスを活用した啓発など、各自治体の対策を共有し、地域の実情に合わせた情報提供と普及を実施する… など。

国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部 中山富雄部長
「先進国では子宮頸がんにかかる人や死亡する人の割合はどんどん減っていますが、日本はその割合が増えていて、先進国の中では異常な状態になっています。

女性が学業や仕事で忙しい時期に、クリニックに1人で行って検診を受けるのはハードルが高いため、まずは大学や専門学校などの健康診断の一環で検診を受けてもらい、このようなものなのかと理解してもらうことが必要だと思います。

また、女性に検診のための有給を追加で付与するなど、休みを取りやすくする工夫も必要です。一般的な人間ドックは産婦人科医がいないため、子宮頸がん検診を受けるためには人間ドックとは別に産婦人科のクリニックを受診しなければならないからです」

タレントの休井美郷さんも、自身が子宮頸がんの一歩手前と診断されてから、周囲の人やファンたちがどうしたら検診に行ってくれるのか、真剣に考えるようになったといいます。

休井美郷さん
「私は子宮頸がんについてちゃんと学んだことがなかったから、検診に行っていませんでした。若いときから子宮頸がんについて知る機会がもっとあれば、危機感を持つ人が増えると思います。

職場の健康診断で必ず子宮頸がん検診が受けられるとか、子どもがいる女性が病院で検診を受ける間は子どもを預かってもらえるとか、検診を受けることが義務になるとか、みんなが検診を受けようと思える仕組みがあればいいなと思っています」

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