先月から始まった大河ドラマ「光る君へ」。
舞台は平安時代。「源氏物語」を書いた紫式部の愛と情熱の物語です。
平安ブーム到来の予感!
そこで、今回は、大河ドラマ「光る君へ」の世界を体験します!
美しい平安装束もドラマの見どころのひとつ。
平安装束を着られる場所が、渋谷の住宅街にありました。
体験できるのは、渋谷区にある理容美容専門学校。ヘアメイクやカット、着付けなどを教えています。
講師の佐藤美奈子(さとう・みなこ)さんに案内していただきました。
色とりどり、きらびやかな平安装束が並びます。
こちらでは、授業の一環として、装束をつける知識と技術を教えています。
これを「衣紋道(えもんどう)」と言い、平安時代後期に確立されました。
一般の方に向けても、衣紋道にのっとった、平安装束の体験会を行っているんです。
早速、女性装束を見せてもらいました。
十二単、平安時代の正装です!
ここで、佐藤さんの口から、驚きの発言が!
全てつけて10枚なんです。
10枚なのに十二単?
昔の文献に十二単という言葉が出ていたので、それがこの装束というふうに、ちょっと間違ったニュアンスで伝えられたとも言われています。
これの正式名称は五衣唐衣裳(いつつぎぬ・からぎぬ・も)装束というのが正式な名前です。
実は、10枚になったのは、ドラマに登場する藤原道長の影響が大きいそうです。
たくさん重ねてきて「私はこのような装束がある」ということで、それこそ12枚どころじゃなくて15枚や20枚も着たというような記録もあります。
やはりそれだけ「私は美しいものを持っている」というふうに表現したかった女性たちがすごくうかがえるんですけれども、でもそれを「いやいや、それはあまりにもやり過ぎ」というふうにたしなめたのが、藤原道長と言われています。
いよいよ、着装体験、スタート!
では皆様よろしくお願いします。
・・・
シーンって、今なっちゃった。
お方様が、1番、位が高いので、何も話さずに静かに着装を始めます。
これからお2人は、しゃべらず黙々と作業をなさるんですね。
全くひと言も話しません。
そうなんだ。
平安時代、装束をつけることは1つの儀式でした。
着付ける人は衣紋者(えもんじゃ)と呼ばれ、細かな所作まで決められています。
・衣紋者は、事前に手を清めているので、おじぎをするときも手は床につけません。
・位の高い、お方様の前では立つのも失礼。
衣紋者は膝行(しっこう)、膝を擦りながら進みます。
顔を近づけると私たちの息もかかってしまうので、それも失礼なので。
・お方様は自分で袖に腕を通すこともしません。全部、衣紋者が袖を通してくれるんです。
このときも…
直接手に触れるというのも失礼なので、このお袖を畳んで、畳んだものが土台になって手をお入れします。
後ろの人がこのように袖を持ってくれているのでスッと入ります。
すごい!
2人のコンビネーションも。
息がぴったり。
淡々となるべく速く、1回決めたものはちょこちょこ直さないで、決めていくことで、なるべく短時間で、もう20分弱ぐらいで着けていくというペースでやります。
実は、十二単は、重さが15キロもあります。
襟元に少し緩みができるように縛り、ふんわりと衣をまとわせることで、少し装束が肩から浮いているような感覚になり、そこまで重さを感じないように工夫されていました。
この所作そのものがもうお方様に対しての思いやりですね。何もしなくてもよい。
何もしなくてもいいし、痛くもないし、きつくもないし、本当に優雅です。
至れり尽くせり。着装開始から、20分ほどたつ頃には…
もう終わりました!
・衣紋者はもうお方様に触れることがないので、最後の礼は床に手をついて行います。
十二単に変身!
すべての所作に思いやりや敬う気持ちが入っていて、夢のような時間を過ごせました。
15kgって言うから、どんなに肩が凝るんだろう、重いんだろうと思っていたんですけど、歩けますし、多少のっているのはわかるんですけど、全然思ったより楽です。
十二単ってやっぱり重いんですけれども。その重みを感じるとやはり歴史の重さも感じます。歴史と装束の重さを体験していただきたいです。
きょうは姫気分を存分に味わいました。姫最高!
大河ドラマ「光る君へ」の第1話の放送後、SNSであることが話題になったんです!
あのお菓子は何だ?
通販で売っていないのか?
どんな味なんだ?食べてみたい!
あのお菓子とは…
第1話、幼いころの紫式部・まひろと、三郎・のちの道長の2人がすれ違う大事なシーンで出てきた、平安時代のお菓子のこと。
大河ドラマの風俗考証の先生に確認したところ、「ふずく」という平安時代のお菓子だったんです。
どんな味か、食べてみたい!
一般に流通しているお菓子ではないということで、作ってみることにしました!
教えてくださったのは、奈良女子大学協力研究員の前川佳代(まえかわ・かよ)さん。
古代菓子の再現に取り組んでいて、古典に登場するお菓子が作れるレシピ本などを執筆しています。
ふずくは、平安時代の遊びのすごろくのコマの形をした色とりどりのおだんごって言ったらいいんですかね。そういうお菓子です。
食べたい!どんな味かすごく気になっているんです!
ですよね。食べたかったら、作らないといけませんね!
みなさん、きょうは私が平安時代のスイーツの作り方を教えますので、一緒に作ってみましょう!
Let’s 平安スイーツcooking!
平安時代のスイーツづくりに欠かせない甘味料が、実はこれなんです!
これ何ですか?
これは「あまづらせん」と言います。
「あまづらせん」?
「あまづらせん」とは、ツタを冬場に伐採し、樹液をとりだして、煮詰めたものです。
糖度を75度まで上げるために、樹液を10分の1の量になるまで煮詰める必要があり、ごくわずかしかとれません。
貴重な「あまづらせん」をいただきました。
すごく濃厚な甘み。そのあとがすっきり。ずっと甘くないんですよ。甘さがきたあと、すっと抜けるんですね。
それが「あまづらせん」の特徴です!
あまづらせんはなかなか手に入りません。
でも大丈夫!家庭にある材料で「あまづらせん」に近い味のシロップが作れちゃうんです。
☆まずは、甘味料づくりから!
【あまづら風シロップ】
<材料>(1人分:50ml)
・水 … 100ml
・グラニュー糖 … 大さじ2
・三温糖 … 小さじ2
<つくり方>
1.水にグラニュー糖と三温糖を加える。
2.強火で煮詰める。
3.水の量が半分に減って色が濃くなり、とろみがついたら、シロップのできあがり。
4.シロップを冷ます。
本物と比べると、すっきりの抜け感、甘さの抜け感は違うんですけど、でもすごく近い。おいしいです。
☆あまづら風シロップを使って、5色のふずくを作ろう!
【ふずく】
<材料>(5人分:5色25個)
・A:あまづら風シロップ … 大さじ1
・B:水 … 大さじ1と小さじ1
【白いふずく】
・米粉 … 50g
・A+B
【赤いふずく】
・米粉 … 50g
・あんこ(市販)(または、いちごジャム) … 大さじ1
・A+B(※あんこやいちごジャムの水分により調整)
【黒いふずく】
・米粉 … 40g
・すり黒ごま … 10g
・A+B
【黄色いふずく】
・米粉 … 40g
・きな粉 … 10g
・A+B
【緑のふずく】
・米粉 … 50g
・粉末よもぎ(または、粉茶や抹茶) … 1g
・A+B
<つくり方>
1.5色ぞれぞれの材料を別々のボウルに入れ、あまづら風シロップなどを加えてこねる。やわらかめにまとめる。水分が足りなければ、水を加えて調整する。
2.こねた生地を丸める。まな板で3センチぐらいの太さの棒状に伸ばす。
3.ラップでくるみ、両端を輪ゴムでとめる。
4.鍋に(3)を入れ、かぶるぐらいの水を入れ、水から15分ほどゆでる。鍋に入れたまま冷まし、取り出す。
5.ラップを取り外す。両端を切り取る。幅1センチほど、5個に切り分ける。
源氏物語ではけっこうお菓子が話の展開の時に出てくることが多くて、今後の大河ドラマの物語の展開の中で、もしかしたらまた何かの形で、ふずくが出てくるんじゃないかなって私は期待をしています。
こう見ると大河ドラマの見方も変わりますよね。
☆大河ドラマ「光る君へ」の時代によく食べられていた揚げ菓子!
【からくだもの】
<材料>(4~5個分)
・米粉 … 100g
・水 … 60~70ml
・ごま油 … 小さじ1
・揚げ油 … 適量
<つくり方>
1.米粉をボウルに入れ、水を少しずつ加えてこねる。耳たぶのかたさになるようまとめる。
2.生地がまとまったら、4等分にして丸める。手のひらで押して、平べったくする。
3.鍋にお湯を沸騰させ、生地を入れる。浮き上がってきたらさらに2分ほどゆでて、取り出す。
4.ボウルに生地を入れて、めん棒でつく。
5.粗熱が取れたら、手を使ってさらにこねる。
6.生地を4等分に分けて丸め、だんごにする。ここできれいにまとめておくと、形が美しく仕上がる。
7.手にごま油(小さじ1)をつけて、いろいろな形を作る。使わないだんごは乾燥しないようにラップをかけておく。
8.オーブンなどに使う耐熱の紙に1つずつのせる。170度に熱した油に紙ごと入れる。
※紙は耐熱温度など使用上の注意をご確認ください。
POINT:揚げ油にごま油を加える!
9.生地が浮かびあがってきたら、紙を取り除き、裏返しながら、1~2分上げて、取り出す。
※お好みで、あまづら風シロップや塩をつけて食べる。
もともとは中国から伝わってきた揚げ菓子で、今でも、奈良の春日大社などで、神饌(せん)、神様へのお供えとして残っているので、レシピがわかるんですよ。
☆ふずくに使った「あまづら風シロップ」の味を堪能できるメニュー!
【けずりひ】
<材料>(1人分)
・氷 … 適量
・あまづら風シロップ … 50ml
<つくり方>
1.氷を削る。
2.あまづら風シロップをかけて、できあがり。
『枕草子』に、「あてなるもの」っていう、段がありまして。
「あてなるもの」っていうのは、上品なものとかエレガントなものっていう意味なんですけど、その中にいろいろ書いてある中に、「削り氷(ひ)に甘葛(あまづら)入れて、あたらしき鋺(かなまり)に入れたる」っていう。
まさにこれがエレガント、平安エレガントです。エレガントな味でした。
そうですか。よかったです。
歴史を食べてほしいです。お菓子を作って食べて、おいしい歴史を感じていただけたらありがたいなと思います。
【編集後記】
平安時代といえば、華やかな衣装ばかりに目が行きがちですが、その裏で、衣紋者の人たちが、位の高いお方様を思いやって着付けていたんだなということを知ることができ、その技法が今も脈々と受け継がれていることに歴史の重みを感じました。
そして、今まで平安時代は遠いところにある別世界だと持っていたのですが、実際に平安スイーツを作って食べてみると、平安時代がすごく身近なことのように感じられ、歴史をより深く知りたい、おもしろいと感じるようになりました。
やはり体験することで初めてわかる歴史、文化があります。
大河ドラマの見方も変わりそうです!
リポーター 丹友美