岸田首相 アフリカ4か国歴訪 グローバル・サウスと連携強化

5月のG7広島サミットを前に岸田総理大臣は、4月29日から7日間の日程で、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークのアフリカ4か国を歴訪し、首脳会談を行いました。

一連の会談で、岸田総理大臣は、食料危機やエネルギー問題など「グローバル・サウス」の国々が直面する課題に耳を傾け、サミットでの議論に反映させる考えを強調するとともに、ウクライナ情勢などを踏まえ、法の支配に基づく国際秩序の重要性などを確認しました。

また岸田総理大臣は、アフリカ歴訪を終えたあと日本への帰路の途中で給油のためにシンガポールに立ち寄り、空港内でリー・シェンロン首相と会談し「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携などを申し合わせました。

一連の日程を終えた岸田総理大臣は、5月5日午後9時半前、政府専用機で羽田空港に到着しました。

これまでの外交の成果を踏まえ、5月19日に開幕するG7広島サミットに臨むことにしています。

エジプト大統領と会談 国際秩序守る重要性で一致

就任後初めてアフリカを訪れた岸田総理大臣は、最初の訪問先、エジプトでシシ大統領と会談しました。ウクライナ情勢で意見を交わし、法の支配に基づく国際秩序を守ることの重要性で一致したほかスーダン情勢について緊密な連携を確認しました。

岸田総理大臣は、エジプトの首都・カイロの大統領府で、日本時間の4月30日午後5時すぎから、およそ1時間半、シシ大統領と首脳会談を行いました。

そして、ウクライナ情勢で意見を交わし法の支配に基づく国際秩序を守ることの重要性で一致したほか、武力衝突が続く隣国のスーダン情勢をめぐって情報を共有し、緊密に連携していくことを確認しました。

また、小麦の価格高騰など、エジプトが直面する食料問題や、経済成長著しいエジプトへの日本からの投資拡大についても意見を交わしました。

さらに、両国の関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げすることで一致しました。

共同記者発表で岸田総理大臣は「シシ大統領とともに、国際社会の平和と安定、それに繁栄に向け貢献していく」と述べました。

日本の支援で建設進む「大エジプト博物館」を視察

エジプトを訪問中の岸田総理大臣は、日本の支援で建設が進む「大エジプト博物館」を視察し、両国間で文化やインフラ整備、経済など、さまざまな分野で協力関係を構築していく考えを強調しました。

岸田総理大臣は、最初の訪問先、エジプトでシシ大統領と会談したあと、ピラミッドがある首都カイロ近郊のギザ地区で、日本の支援で建設が進む「大エジプト博物館」をマドブーリ首相とともに視察しました。

この博物館では、ツタンカーメンの「黄金のマスク」やひつぎなどが展示される計画で、岸田総理大臣は、開館に向けた作業の進捗や日本が技術支援した文化財の復元状況などを確認しました。

視察を終えた岸田総理大臣は、記者団に対し「わが国は、エジプトと文化、インフラ、経済など、さまざまな分野で、官民双方で引き続き良好な協力関係を築いていきたい」と述べました。

ガーナ大統領と会談 国連の安保理改革などで緊密な連携

岸田総理大臣は、ガーナでアクフォアド大統領と会談し、ロシアによるウクライナ侵攻を非難したうえで、ともに国連安保理の非常任理事国として、安保理改革などで緊密な連携を確認しました。

西アフリカのガーナを訪れた岸田総理大臣は、首都・アクラの大統領府で、日本時間の5月2日午前3時すぎから1時間余り、アクフォアド大統領と会談しました。

この中で両首脳は、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、法の支配に基づく国際秩序が重要だという認識で一致しました。

また、ことしは両国がともに国連安全保障理事会の非常任理事国を務めていることから、安保理改革を含む国連の機能強化に向けて緊密な連携を確認したほか、武力衝突が続くスーダン情勢などで連携していくことも確認しました。

そして、岸田総理大臣は共同記者発表で、地域の平和と安定に寄与し、持続可能な成長を促進することを目的に、3年間でおよそ5億ドルの支援を行う方針を表明しました。

そのうえで、「ガーナは西アフリカ有数の経済拠点であり、民主主義や法の支配などの基本的な価値や原則を共有する重要なパートナーだ。今回の訪問をはずみとして、経済、開発、人の交流などの幅広い分野で協力を一層強化していく」と述べました。

ケニア大統領と会談 ビジネス面など関係強化へ

アフリカを歴訪中の岸田総理大臣は、インド洋に面したケニアでルト大統領と会談し「自由で開かれたインド太平洋」の推進に向け連携を確認したほか、武力衝突が続くスーダン情勢をめぐり緊密に連携していくことで一致しました。

東アフリカのケニアを訪れた岸田総理大臣は、首都 ナイロビの大統領府で、日本時間の5月3日午後4時すぎから1時間半余りにわたってルト大統領と会談しました。

会談で岸田総理大臣は、中国がケニアへの影響力を拡大していることも念頭に、2030年までに官民合わせて750億ドル以上の資金をインド太平洋地域に投入し、成長を後押しするとした「自由で開かれたインド太平洋」の推進計画について説明しました。

そのうえで、法の支配に基づく国際秩序の重要性を確認するとともに、構想の推進に向け連携していくことで一致しました。

また、日本がアフリカを「共に成長するパートナー」と位置づけていることを強調し、スタートアップ企業の進出やグリーン分野での投資促進など、ビジネス面での協力を加速させるため産業対話を立ち上げることで合意しました。

さらに武力衝突が続くスーダン情勢をめぐり、ケニアが調停に乗り出すなど、地域の平和と安定に積極的に関与してきたことを評価したうえで、緊密に連携していくことで一致しました。

岸田総理大臣は、共同記者発表で「今回の会談をはずみとして、ケニアと日本はビジネス面を含め重層的な関係を構築・強化していく。また、G7議長国としてアフリカの声を直接聞くことができ、今月の広島サミットでの議論にしっかりと反映したい」と述べました。

モザンビーク大統領と会談 天然ガス開発 早期に再開 確認

岸田総理大臣は、アフリカ最後の訪問国・モザンビークでニュシ大統領と会談しました。日本企業が投資し、世界有数の埋蔵量を誇る天然ガス田の開発を早期に再開させることを確認しました。

東アフリカのモザンビークを訪れた岸田総理大臣は、首都・マプトの大統領府で、日本時間の5月4日午後5時すぎからおよそ1時間半、ニュシ大統領と会談しました。

会談では、日本の商社が投資したモザンビーク北部の天然ガス田開発が治安情勢の悪化で中断していることから、治安を安定化させるための取り組みについて意見を交わし、開発を早期に再開させることを確認しました。

また、ウクライナ情勢を受けて法の支配に基づく国際秩序の維持・強化が重要だとして、力による一方的な現状変更の試みは認められないという認識で一致し、モザンビークが日本とともに国連安全保障理事会の非常任理事国を務めていることも踏まえ、緊密に連携していくことを確認しました。

このあと昼食をともにしながらの「ワーキングランチ」に臨み、モザンビークが北朝鮮と国交があることを踏まえ北朝鮮による拉致問題や核・ミサイル開発への対応に加え、安保理改革を含む国連の機能強化に向けても意見を交わし、緊密に連携していくことで一致しました。

岸田総理大臣は、共同記者発表で「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた両国関係の強化を確認したとした上で、「アフリカ最大規模のLNG=液化天然ガス開発事業の生産設備建設が、近く再開できるよう力強く後押しすることで一致した。周辺地域の安定化に向けた支援を実施していく」と述べました。

シンガポール首相と会談 国際秩序の維持などで協力

アフリカ歴訪を終えた岸田総理大臣は、帰国途中に立ち寄ったシンガポールで、リー・シェンロン首相と会談しました。ロシアによるウクライナ侵攻などを受けて、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けて協力していくことで一致しました。

アフリカ4か国を歴訪し、帰国の途についた岸田総理大臣は、5月5日、給油のために立ち寄ったシンガポールのチャンギ空港内で、昼食をとりながら、リー・シェンロン首相と1時間余り会談しました。

会談では、海洋進出の動きを強める中国などの動向を踏まえ、岸田総理大臣が、先に表明した「自由で開かれたインド太平洋」の新たな推進計画について説明しました。

そして、ロシアによるウクライナ侵攻や、東シナ海、南シナ海情勢をめぐって意見を交わし、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けて引き続き協力していくことで一致しました。

また、ことしが日本とASEANの友好協力50周年であることも念頭に、12月に各国の首脳を日本に招いて開く特別首脳会議に向けて連携していくことを確認しました。

G7とグローバル・サウスの橋渡し役となれるか

G7広島サミットを控え、アフリカ4か国を歴訪した岸田総理大臣は、アフリカを含めたグローバル・サウスと呼ばれる新興国や途上国にはウクライナ情勢をめぐって中間的な立場をとる国も多いことから連携強化を最重要課題に臨み、「各国首脳に法の支配の重要性を強く訴えた」と強調しました。

4か国は、いずれもアフリカの大国とされ、認識を共有できた意義は大きいとしています。

一方、50か国余りに上るアフリカ諸国は、それぞれ事情が異なる上、中国やロシアがいっそう影響力を強めていて、結束は容易ではないとの見方もあります。

今回の歴訪の成果をサミットの議論に反映させたいとする岸田総理は、G7とグローバル・サウスの橋渡し役となれるのか。まさにその真価が、広島で問われることになります。