細田衆院議長の小選挙区「10増10減」懸念発言に批判相次ぐ

衆議院選挙の小選挙区の「10増10減」をめぐり、細田衆議院議長は5日、「地方いじめのように『10増10減』をすることはちょっと考えたらどうか」と指摘し、改めて懸念を示しました。
これに対し各党から、批判や、慎重な対応を求める声があがっています。

細田衆議院議長は5日夜、東京都内で開かれた会合であいさつし「1票の格差が2倍を切ればいいので小選挙区を東京で2つか3つ増やせばよく、ほかの県はとばっちりだ」と指摘しました。

そのうえで「地方いじめのように『10増10減』をすることはちょっと考えたらどうか。心ない政治をやってはいけない」と懸念を示しました。

細田議長は去年12月にも「10増10減」について懸念を示し、野党からは「議長の立場からの発言として適切ではない」などと批判が出ていました。

細田衆議院議長「黙っていられない」

細田衆議院議長は、自身の発言に対して、野党側から批判が出ていることを念頭に9日、「『黙っておれ』という人もいるかもしれないが、そうはいかない」と述べました。

細田議長は、9日に松江市で講演し、野党側の批判を念頭に「議長がいろんなことを言うと『黙っておれ』という人もいるかもしれないが、そうはいかない。地方は地方の立場があり、これからも一生懸命取り組んでいく」と述べました。

“「10増10減」速やかに法整備” 金子総務相

金子総務大臣は8日の記者会見で、総務大臣としての見解は差し控えるとしたうえで「審議会による区割り改定案の勧告は、法の規定により6月25日までに行われ、勧告があった時は、速やかに必要な法制上の措置を講じることととなる」と述べ「10増10減」の区割り改定案を踏まえて、速やかに法整備を行うと強調しました。

立民 議運委での説明求める

衆議院選挙の小選挙区の「10増10減」をめぐる細田衆議院議長の発言を受け、立憲民主党は、7日、細田議長がみずから真意を説明すべきだと、議院運営委員長らに求めました。

立憲民主党と共産党は、7日の議院運営委員会の理事会で「国会で決まったことを、議長が繰り返し批判するのはおかしい」などと抗議し、共産党は発言の撤回も求めました。

このあと、立憲民主党は、自民党の山口議院運営委員長らに対し、細田議長がみずから委員会に出席して発言の真意を説明すべきだと求めました。

立民 自民党に抗議「国会で決めたことを覆す発言」

立憲民主党の馬淵国会対策委員長は、6日午後、自民党の高木国会対策委員長と会談し「立法府の長が国会で決めたことを覆す発言を繰り返していて、看過できない」と抗議しました。

その上で、議院運営委員会の場で細田議長が発言について説明する機会を設けることや、法律に沿って「10増10減」を実施することを与野党で申し合わせるよう求めました。

これに対し、高木氏は「党内に持ち帰って相談したい」と述べました。

立民 馬淵国会対策委員長「もはや看過できないレベル」

立憲民主党の馬淵国会対策委員長は、記者団に対し「細田議長は確信的にあのような話をしている。立法府の長が法律で定められた制度を覆すような発言をするなどあってはならず、もはや看過できないレベルだ。
国会軽視どころか無視するような発言であり、議院運営委員会での説明がなければ、信頼関係を持ってこれから国会運営をしていくのは難しい」と述べました。

自民 高木国会対策委員長「決まった形でやるべき」

自民党の高木国会対策委員長は記者団に対し「細田議長には強い思いがあるとは思うが『10増10減』は決まっていることなので決まった形でやるべきだ。

立憲民主党からの申し出は受け止め、どうしていくか党内で相談してみたい」と述べました。

また、衆議院の選挙制度をめぐる各会派による協議会への影響について「野党の状況を見ると、甚だ遺憾だという雰囲気があり影響が全くないわけではない。協議会は『10増10減』について議論するものではないので、協議会の設置には理解をいただきたい」と述べました。

公明 石井幹事長「議長で影響が及ぶので慎重に」

公明党の石井幹事長は視察先の東京都内で記者団に対し「議長という立場で具体的な選挙制度のあり方について発言すると、いろんなところに影響が及ぶので、できるだけ慎重にしていただきたい」と述べました。

維新 藤田幹事長「議員定数を減らしていくべき」

日本維新の会の藤田幹事長は記者会見で「議長という立場上、非常に不適切な発言だが、そのせいで選挙制度見直しの前向きな議論が頓挫することがあってはならない。

細田議長に襟を正していただくのはもちろんだが、一方で、議論は進めていくべきであり、日本維新の会は、人口減少の時代に合わせ、議員定数を減らしていくべきだと訴えていく」と述べました。

国民 古川国会対策委員長「行司が相撲をとってはいけない」

国民民主党の古川国会対策委員長は記者会見で「現行制度に基づく10増10減は粛々とやりながら、その先の選挙制度改革の議論を始めようというときに、あのような発言があったのは本当に遺憾だ。議長は相撲でいうところの行司役であり、行司が相撲をとってはいけない。議長を出している与党にしっかり対処していただき、1日も早く各派の協議会が設置できる環境を作ってほしい」と述べました。

共産 穀田国会対策委員長「発言を撤回すべき」

共産党の穀田国会対策委員長は記者会見で「議長の職にある者として、立法府が決めたことは尊重する必要がある。
また、細田議長は、こんにちの制度がつくられた法案の提出者だ。
自分が提案した法律が施行されるときに反対だというのはおかしな話であり、発言を撤回すべきではないか。
共産党としては、この機会に小選挙区制度そのものを検証し、廃止する以外にないと訴えていきたい」と述べました。

「10増10減」とは

衆議院選挙の各都道府県に割りふられる定数289の小選挙区の数は、去年の国勢調査の結果をもとに、現在の計算方法よりも人口に比例した配分となる「アダムズ方式」と呼ばれる方法で見直されることになっています。

総務省は去年11月、国勢調査の確定値を公表し、これによって、各都道府県に割りふられる小選挙区の数が確定しました。

小選挙区の数が増加するのは5つの都と県で、東京で5つ増え、現在の25から30になるほか、神奈川で2つ、埼玉・千葉・愛知で1つずつ増えます。

一方、小選挙区の数が減るのは、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県で、それぞれ1つ減ります。

これによって、いわゆる「1票の格差」は、いずれも2倍を切ることとなります。