鈴木福×時田 山形遊佐町長
若者が町を変える

若者と政治の世界を知り尽くす大人がホンネで語り合う「ガチポリ!」(ポリティクス=政治)。
若者の代表は4月から高校3年生の俳優・鈴木福君。
この6月に18歳となり選挙権を手にする福君が直撃したのは、独自の取り組みで若者の政治参加を後押しする小さな町の町長だ。

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鈴木福(すずき ふく)
東京都出身。17歳。1歳から芸能活動を始める。民放ドラマ「マルモのおきて」が大ヒット。主題歌の「マル・マル・モリ・モリ!」で大晦日の紅白歌合戦にも出場。ドラマや映画で幅広く活躍するほか、最近は情報番組のコメンテーターもこなす。

時田博機(ときた ひろき)
秋田県に接する人口1万3千人の山形県遊佐町の町長。71歳。町議会議員を経て2009年から町長を務める。現在4期目。

「行動力にびっくりします」

遊佐町には少年議会があるんですね。どういった成果をあげているんですか?

〈遊佐町少年議会〉
若い力を生かした町づくりを目指して、2003年から遊佐町で始まった取り組み。町内に在住・在学する中学生や高校生なら誰でも立候補できる。候補者が多い場合は選挙で少年町長や少年議員(10人)を選ぶ。若者目線で政策提言を行い、年間45万円の予算で独自の施策を実現できる。

駅や生涯学習センターにベンチを作ろうとか、バスケットのリングが欲しいとか、町のかるたをつくったり。お米をモチーフにしたイメージキャラクターまで作ってくれているんです。
鉄道のダイヤも少年議会が秋田にあるJRの管理局に乗り込んで改正の要望までしてくれている。大人も望んでいたことです。行動力にびっくりします。

小さな議会というか、本来の議会の縮小版みたいに。

そう。
かつて本物の議会の皆さんからは「どうも町は、少年議会の言うことは聞くけれども、俺たちのことは聞かない」という話もありました。
今は少年議会から、議会との懇談会もやりましょうという形でやっています。若い力から呼びかけられたら議会も答えざるをえない。

少年議会から得られた発想をもとに大人の議会で協議されたものは?

通学路を明るくしました。
うちの町は田んぼがほとんどですから街路灯は基本的に少ない。あそこに欲しいという声を少年議会から上げてもらって、10本以上直しているんじゃないかな。
街路灯は、稲の生長の妨げになるとかで邪魔だという方が昔は多かったんです。だけど、そういうことは通じなくなった。

選挙で選ぶ少年議会

少年議会には参加意識が高い子たちが集まっているのですか?

私は普通の子が出てきているなという思いです。特別、意識が高いんじゃないだろうなと。普通の子が普通に参加して、だけども楽しめるというのがあるんじゃないですかね。
彼らは「町が好きだから」「もっといい町にしたいから」と言ってくれるんです。
非常にうれしいですね、そういう子どもたちが育っているのは。

(少年議会のメンバーになるには)選挙があるんですよね。

中学生と高校生には全員投票権があって、本物の投票箱に投票してもらっています。

本当の選挙のように?

そうそう。
立候補して、マニフェストを掲げて、みんなが選んで。ですから選挙の実践を自分たちで経験するということです。

遊佐町の若者の投票率がすごく高いと聞いたのですが、少年議会の影響が大きいですか。

去年の衆院選。遊佐町の18歳の投票率は63.53%。全国の18歳の投票率50.36%に比べてだいぶ高い。

そうですね。びっくりしました。そんなに高いと。

少年議会を長くやられているからこそ、気づかないうちに。

そうですね。
19年の積み重ねは意外に重いものがあると思います。

少年議会は広がるか

遊佐町の少年議会は、人口減少や少子高齢化が進む中で、未来を見据えた町づくりをどうすべきかという議論から生まれたのだという。イギリスのある地域の取り組みをモデルにしている。町では、高校卒業を機に進学や就職のため、町外へ出る若者が少なくない。
「町に戻って来いとは言わない。若者がどこでどんな活躍をするか、想像できないわけですから」と語る時田町長。少年議会の取り組みには、町を離れても、ふるさとを感じていてほしいという願いも込められているようだ。

少年議会がもっと広まってほしいなと思ったのですが、どうすれば各地に普及させることができると思いますか?

行政が「うちでもやってみようか」とチャレンジしてもらえれば。
やることによって「こういう形は駄目だったね」というのが必ず出てくる。良い面も悪い面も地域によって出てくるので、いっぺんやってみることからスタートしたらいいと思います。

地域ごともそうですけど、もし国全体としてやってくれたら、それを目指す子たちも出てきて、その経験を踏まえて、次のステップとして若い世代の出馬も増えてきそうですね。

住民から「若い世代が頑張っているんだから、我々も頑張らなければ」と、そんな声も届くわけです。
若者と高齢者、そして働き盛りの世代、みんながそろって、この地域をよくすることは間違いないことだと思う。
少年議会の活動が刺激を与えてくれています。

聞いてくださる大人の方がいることはすごく重要だなとあらためて感じました。

私は主役ではないですから、子どもたちが主役ですから。

少年議会のメンバー登場!

収録には、今年3月まで少年議会に参加していた高校生3人が駆けつけてくれました。
いずれも福君と同級生。4月から3年生です。

実際に取り組んでみて、良かったと感じたことは?

町のために自分たちが考え、形にできることに感動できると思います。

周りの友達はどう言っていますか?

あまり興味がない人も多いですが… 「やっぱりすごいことをしているな」と言われます。

時田町長と福君に対談の感想を書いてもらいました。

「若者のチャレンジに期待!!」と書いた時田さん。
いつでも新しくあれと。チャレンジしなければ次が生まれないから。やらないことには反省もないですから

福君は「新しい風」と書きました。その心は?

僕たちが風となって新しく通り抜けながら次の世代に渡していく。風通しが悪くなると、きっと社会も止まってしまうだろうから、風がずっと通り続けることはすごく大切だなと思いました

若者の政治参加は必要かを考える「ガチポリ!」。
今回の3回シリーズはこれが最終回。次回作にも乞うご期待。

若者と政治のキーパーソンが本音トークを通じて、ガチで政治を考える番組「ガチポリ!若者×政治10min.」。
“政治って自分とは関係なくない?” “政治って縁遠いし、政治を考えたところで何も変わらないでしょ?” …
そんな「若者の政治離れ」に一石を投じようという新たな政治番組。世代や立場を超えた2人が語らう姿を見るうちに、思わぬところで政治が身近にあることに気づき、日頃の悩みやモヤモヤも解消されるかも!?

政経・国際番組部(政治番組)ディレクター
大藪 謙介
平成20年入局。名古屋局を経て政経・国際番組部へ。主に政治番組の企画・制作を担当。最近よく聞く若者言葉は「エモい」「○○み(「わかりみ」など)」→常に周回遅れです。
選挙プロジェクト記者
杉田 淳
平成5年入局。視覚障害があり、音声ソフトを使いながら、この原稿を書いています。最近聞いた若者の言葉は「Vtuber」。U(you)の次はVが来ているんですね。
政経・国際番組部(政治番組)チーフ・プロデューサー
北畠 原平
平成10年入局。ニュースウオッチ9、おはよう日本などを経て政治番組へ。「リムる」?「やりらふぃー」?若者を知る前に若者言葉が分かりません!