鈴木福×大島理森前衆院議長
選挙とウクライナを考える

若者と、政治の世界を知り尽くす大人が本音で語り合う「ガチポリ!」(ポリティクス=政治)
若者の代表は、この4月から高校3年生の俳優・鈴木福君。6月には18歳となり、選挙権を手にする。
今回の対話の相手は、歴代最長期間、衆議院議長を務めた大島理森さんだ。
年の差58歳。どんな化学反応が生まれるのか。
(文末に動画があります)

【リンク】対談・鈴木福×村木厚子 元厚生労働事務次官
【リンク】対談・鈴木福×時田博機 山形県遊佐町長


鈴木福(すずき ふく)

東京都出身。17歳。1歳から芸能活動を始める。民放ドラマ「マルモのおきて」が大ヒット。主題歌の「マル・マル・モリ・モリ!」で大晦日の紅白歌合戦にも出場。ドラマや映画で幅広く活躍するほか、最近は情報番組のコメンテーターもこなす。

大島理森(おおしま ただもり)
青森県八戸市出身、75歳。毎日新聞社勤務を経て青森県議会議員。昭和58年の衆議院選挙で初当選し、12期。文部大臣や農林水産大臣などを歴任。衆議院議長として6年を超える在任期間は歴代最長。去年10月の衆議院選挙を前に政界を引退した。


衆議院議員会館での面会。2人はもちろん初対面。

「福君と呼んでください」と挨拶され、
「まもなく18歳になろうという人に、いきなり『君づけ』するのはどうかなあ。できれば『福さん』で」と戸惑う大島さん。でも、何かに気付いた様子です。
「議場では、みんな『君づけ』で呼ぶんだよなあ」
そうです。去年10月に引退するまで衆議院議長として、総理大臣も閣僚もどの党の議員もみんな「●●君」と呼んできた大島さん。「福君」と呼ぶことで決着しました。

なぜ選挙に行かなきゃいけないの?

まず最初に若者の投票率が下がっていることの問題点を教えていただいてもいいですか。

私も政治の世界に入って45年ぐらいになるんだよ。選挙をやってみますと、どうやったら若い人たちにアプローチするのかというのは、絶えず課題でした。例えば福君は大変な活動をしていますね。そして、相当な収入を得ていると思うんだ。

僕はあんまり詳しく知らなくって。

でも相当な収入を得られていると思う。いくらぐらいもらっていますか。

僕自分で管理しなくて… まだ。もうちょっとしたら分かると思います。

一生懸命学業をやりながら収入をいただいて、その中から税金を取られているわけです。本当にきちっと使っていただいているんだろうか、どこに使っていただいているんだろうかって、関心を持って見ていくという権利と同時に義務もあると思うんですね。

ウクライナのニュースから考えよう

ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵略して、大変悲惨な状況ですね。あれは一体何の戦いであろうかと考えますと、私は民主主義を守る戦いだと思っているんです。民主主義というのは、何を守るのかといいますと、私は自由だと思うんです。

自由…

その自由を守るという意味で、もし投票率がどんどん下がってきますと、独裁的な政治形態が生まれるかもしれない。いろんな多様な意見が、プーチン大統領に入っていかない。国会があることはあるわけですが、いろんな侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論をやって今度の決定をしているかというとそういう形跡はない。

僕たちがしっかり投票しなければ、ある種昔の日本のように戻ってしまうということもあり得るということですよね。

あり得ると思います。

いきなり大人と言われても

僕自身、高校生というのがすごく子どもに見られているだろうなって。もちろん自分自身、子どもだなって感じる部分もたくさんあると思うんですけど、子どもだなっていう感覚が植え付けられてるからこそ、政治に対しても自分がしなきゃいけないっていう責任感が薄れているのかなっていうのをすごく感じるんです。

しかしそう感ずること自体がものすごい大事ですね。そういう問題意識を持つことがすばらしいことだと思うんですよ。だから、その時点で判断していくようにして下さいと。そこには間違いもあるかもしれないけども、それでいいと思うんだ。そういうことによって、どんどん見る目も成熟していきますし、トレーニングにもなっていきますしね。

最近結構TikTokとかSNSでバズらせるためにやってる政党の方とか、議員の方っていらっしゃるじゃないですか。そういったものに投票して当選してしまった場合に、政界の方々からすると不安を感じるようなことっていうのはどうお考えですか。

主権者である国民の皆さんから付託を受けて選挙で当選して、国会という場に集まる。これを私は「民主主義の広場」だと言っているんですよ。そこで多士済々の議員さん方がいろんな意見を交わす。
もっと露骨に言いますと、オープンな形で権力闘争の場なんです。武力を使わない、言論での権力闘争の場。そうしますと、長続きする人と、途中で落選してお辞めになる人、いろんな形の議員がいます。その人たちを選ぶのは皆さんなんです。

政治を語ることはタブー?

僕自身最近、報道番組なんかのコメンテーターとして呼んでいただく機会もありまして。

それはそれは。

政治の話をテレビですることとかニュースで自分の意見を言うことがタブーというか、SNSなんかでのコメントがすごく際立つからこそ、少し怯えていることが社会全体的にあるのかなと思っていて。

ヨーロッパではバッジをつけた議員が直接学校に行って「俺はこう思うんだ」というようなことをオープンにやらせるんですよ。そうすると生徒たちは質問するわけです。教育現場の中にそんな場面を作りながら、政治に関心を持つ、政治は自分たちのものだという意識を持つ。ですから投票率は結構高いです。
日本の教育の世界では「不偏不党」ということをずっと一つの教育政策の方針として立ててきたわけですが、これからは政治の現場から離れた孤立したような形の不偏不党ではなくて、生の政治を生徒たちの前に見せて、議論し、感じてもらうというぐらいの改善があってもいいかもしれませんね。
多様な意見はあって当たり前なんです。意見が違うことによって新しい発見も生まれます。

コロナ対策は若者を見ているのか

特に今はコロナで、学生の短い期間の中の行事とかが結構削られてしまって。
僕自身も体育祭を高校に2年間一度もやっていなくて、修学旅行も延期でもなく中止になってしまったんです。そういった中で、私立の学校でも公立の学校でも、もっと何かしてくれる部分っていうのはないのかなっていうのを感じたりですとか、大人の方々へ向けた政策っていうのが目立っているし。
将来的には僕たち子どもも未成年もいつかは投票権を得るわけであって、その僕たちに対して何かアプローチをかけてくれるというのはあまり感じないのかなというのが正直な意見であります。

私が気づかなかった指摘を今いただきました。
最も青春時代の記念に残る場面を皆さんが失ってしまった。そういう今のようなことを自民党にも立憲民主党にも公明党にも他の政党にも仲間でアプローチしてみたらどうでしょうか。
それは、何もデモをするとかではありません。今の情報の多様な時代、ツールのある時代にそういう声を届けるんです。

多分SNSなんかだとそういった声がすごくあるはあるんですけど、そこに対して政治がそこまで動いてないっていうのが現状かなって、すごく感じてるんで。

そういうことを仲間で各政党にやってみて、それで比較してみればいいんですよ。ここの政党は我々にちょっと耳を傾けてくれたぞとか。
それによって今度の参議院選挙、次の衆議院選挙に自分の一票を行使しようと、それでいいと思うんです。そういう身近な問題から判断する、それでも結構だと思う。

自分たちで動く勇気っていうのが僕たちにも必要っていうこと?

そうです、そうです。勇気って言えば勇気でしょうね。

2人からのメッセージ

感想を色紙に書いてもらいました。

「一票は未来を作ります。若人よ、政治参加を」と記した大島さん。

「若い人をどのように包摂していくか、その努力が必要だということを痛切に感じました。勉強になりました」

「お互いの歩み寄り」と書いた福君。その心は?

「若い世代の投票率が低いっていう自覚はもちろんありますけど、『だから何だよ』って言いたくなる部分ってたぶんみんな心の中に軽くちょっとはあると思うんですよね。だから、投票してよっていう歩み寄りをもっと感じたいなって。
さっきおっしゃっていた高校に候補者の方や議員さんがいらしてお話をするとか、そういった機会を本当に作って欲しいなっていうのはすごくありました。中学や小学校でやってみても良いのかなって。
練習って必要じゃないですか。バッティング練習だってトスしたボールを打ってみなかったら前から来る球なんて打てるわけないですし」

中学では野球部で活躍した福君。野球少年らしく話を締めてくれました。

若者と政治のキーパーソンが本音トークを通じて、ガチで政治を考える番組「ガチポリ!若者×政治10min.」。
“政治って自分とは関係なくない?” “政治って縁遠いし、政治を考えたところで何も変わらないでしょ?” …
そんな「若者の政治離れ」に一石を投じようという新たな政治番組。世代や立場を超えた2人が語らう姿を見るうちに、思わぬところで政治が身近にあることに気づき、日頃の悩みやモヤモヤも解消されるかも!?

 

政経・国際番組部(政治番組)ディレクター
大藪 謙介
平成20年入局。名古屋局を経て政経・国際番組部へ。主に政治番組の企画・制作を担当。最近よく聞く若者言葉は「エモい」「○○み(「わかりみ」など)」→常に周回遅れです。
選挙プロジェクト記者
杉田 淳
平成5年入局。視覚障害があり、音声ソフトを使いながら、この原稿を書いています。最近聞いた若者の言葉は「Vtuber」。U(you)の次はVが来ているんですね。
政経・国際番組部(政治番組)チーフ・プロデューサー
北畠 原平
平成10年入局。ニュースウオッチ9、おはよう日本などを経て政治番組へ。「リムる」?「やりらふぃー」?若者を知る前に若者言葉が分かりません!