「コシヒカリ」発言で謝罪
不信任決議案提出目指す動き

静岡県の川勝知事は、御殿場市について「あちらはコシヒカリしかない」などとする発言について、定例記者会見で「発言は誠に無礼極まりないものでした。全部撤回し深くお詫び申し上げます」と述べ、謝罪しました。

川勝知事は、10月に行われた参議院静岡選挙区の補欠選挙の応援演説で、対立候補が御殿場市長を務めていたことに関連し「あちらはコシヒカリしかない」「観光しかありません」などと発言しました。

この発言を巡り、川勝知事は10日、御殿場市の勝又正美市長と面会して謝罪し、勝又市長は公の場でも謝罪し、発言を撤回するよう求めていました。

川勝知事は12日の定例の記者会見の冒頭で「発言は誠に無礼極まりないものでした。全部撤回し深くお詫び申し上げます」と述べ、謝罪しました。

その上で、選挙戦で候補者を批判する趣旨だったとのこれまでの釈明について「政務ということで言い訳ができるものではない。整理ができるまで政務活動をするべきでないと考えている」と述べました。

一方、この問題をめぐり県議会の最大会派「自民改革会議」が不信任決議案の提出を目指す考えを示していることについては「議員にはさまざまな警告をする権利があるので、それを行使すればいいと受け止めている」と述べました。

御殿場市長「これ以上の責任追及は県議会が」

御殿場市の勝又正美市長は記者団に対し「公の場で直接、自身の発言について謝罪し、市に対して差別や侮辱をしたことばを撤回した。市長として真摯に受け止める」と述べました。

一方で、「発言によって市民が負った傷は簡単に消えるものではなく、きょうをもって、納得や満足したという気持ちはない。市長として謝罪と撤回は早くやってほしいと訴えてきた経緯もあるので、もう少し早く市民の気持ちをくんでほしかった」と述べました。

今後の対応については「市民に対しては、公の場で謝罪と撤回があったということを理解してもらいたい。地元の市長としては、1つの区切りだと思っている。これ以上の責任の追及については県議会がやるもので、市としてすることはない」と話していました。

御殿場市民「発言はショック」「一件落着」

このうち、御殿場市に住む70代の男性は「あとで弁解したとしても、応援演説での発言はやっぱりおかしいと思います。前回の知事選では川勝知事に投票していたので、発言はショックでした」と話していました。

60代の会社員の男性は「選挙で個人攻撃のような発言は知事としてふさわしくないですが、騒ぐほどの大ごとだと思っていません。謝ったので一件落着でいいのではないでしょうか」と話していました。

また、60代の女性は「御殿場市はコシヒカリだけではないので、知事の発言は間違っていると思います。辞めろというのは簡単ですが、これを踏み台にして頑張ってもらえればいい。素直に謝ったので、認めればいいと思います」と話していました。

知事の辞職請願審議を求める

静岡県に寄せられた批判などの意見は11日までに1000件を超えたほか、10日には御殿場市の男性が知事の辞職を求める請願を県議会に提出しています。

この問題をめぐり、県議会最大会派の「自民改革会議」と公明党県議団は12日に対応を協議し、辞職を求める請願を審議する臨時議会の招集を知事に求めました。

地方自治法では、定数の4分の1以上の議員が要求すれば、知事は20日以内に議会を招集することが求められます。

自民改革会議と公明党で県議会の過半数を大きく超えることから、請願は12月1日からの12月定例会を待たずに臨時議会で審議され、賛成多数で採択される公算が高くなっています。

辞職を求める請願に法的拘束力はありませんが、川勝知事は、発言の意図や辞職の考えがあるかどうか議会で説明することが求められることになります。

自民系会派 知事の不信任決議案提出目指す

川勝知事の御殿場市に関する発言に関連し、自民改革会議の野崎正蔵代表は会見で、会派として知事の不信任決議案の提出を目指す考えを示しました。

野崎代表は、川勝知事の辞職を求める請願を審議する臨時議会の招集を求めたあとの会見で「一連の知事の言動はかなりの問題があり、これまでも同じことが繰り返されてきた」と述べ、請願とは別に、知事に対する不信任決議案の提出を目指す考えを示しました。

提出の時期については明言しませんでしたが、不信任決議案が県議会の出席議員の4分の3以上の賛成で可決された場合、知事は、県議会の解散か失職のどちらかを選ぶことを迫られます。

仮に県議会の解散を選んだ場合も、改選された後の県議会で不信任が過半数を占めると知事は失職となります。

不信任決議案は、67人の議員全員で採決する場合は17人が反対すれば否決されますが、これまでのところ知事を支える17人の会派「ふじのくに県民クラブ」が反対の構えであるほか、共産党の議員1人が取材に対し「発言は問題だが、辞職までは求めない」と述べています。

自民改革会議の野崎代表は「ことの重大さや議会人がなすべき仕事を考え、それぞれの議員の良心に訴えながら成立を目指す」と述べていて、決議案の提出に向けた働きかけが活発になるものとみられます。