性国家公務員の育休取得
昨年度 初の2割超に

男性の国家公務員が新たに育児休業を取得した割合が、昨年度・平成30年度、初めて20%を超えました。

中央省庁などに勤務する国家公務員は、子どもが3歳になるまでの間、男女を問わず育児休業を取れることになっています。

人事院によりますと、昨年度・平成30年度に新たに育児休業を取得した自衛官などの特別職を除く一般職の男性国家公務員は、前の年度より160人余り増えて1350人となりました。

取得率は21.6%と、はじめて20%を超え6年続けて過去最高を更新し、4年前の平成26年度と比べるとおよそ4倍となっています。

一方、育児休業を取得した期間は72%が1か月以下で、1か月を超えて取得した人は28%でした。

人事院は「政府が男性の育児休業の取得率の引き上げを目標に掲げて、育児休業を取りやすい職場の雰囲気づくりを進めてきた結果ではないか」と話しています。

取得率の急伸 背景に職場環境の変化

国家公務員で男性の育児休業の取得率が伸びている背景の1つには職場環境の変化があるようです。

女性活躍の実現に向けて政府が男性の育児休業取得率の向上を目標に掲げたこともあり、中央省庁では取得を積極的に推進する動きがここ数年で広がったということです。

総務省の原田光磁さんは長女が生まれた3年前、9か月の育児休業に夏季休暇などを組み合わせて11か月の間、育児のために休みを取りました。

原田さんの申し出を快諾した上司からは「育児をしっかり頑張れ」と励まされ、同僚からも、祝福されたということです。

原田さんは「育休の取得には、職場、特に管理職の理解が大切だと思う。私の場合は、温かく送り出してもらったが、管理職から難色を示されていたら、ハードルになっていたと思う」と振り返りました。

そして「娘の成長をしっかりと見届けられたのは、この上ない喜びだった。職場に復帰した今も、育児にできるだけ関わろうと、仕事を効率的に進めようという意識が強くなった。多くの男性が気兼ねなく育休を取れる環境が広がればいいと思う」と話していました。

管理職の意識改革への取り組み

男性職員に育児休業を積極的に取得してもらおうと、中央省庁では管理職の意識改革に重点を置いています。

子どもが生まれる予定があるか、生まれたら育児休業を取ろうと考えているか、管理職の側から面談などの場で確認するため去年、チェックシートを作りました。

このチェックシートを人事担当部局と共有することで、職員が育児休業を取得した場合の業務分担や人員配置などの準備をスムーズに進められるようになったということです。

また、意識改革を促すために部下の育児休業の取得状況が、管理職の人事評価の要素の1つに位置づけられました。

部下と面談した総務省の管理職は「20数年前に役所に入ったときは、男の育児休業なんて言いだしにくい雰囲気があった。部下のプライバシーを根掘り葉掘り聞くことには若干の抵抗があるが、育休をしっかり取ろうという雰囲気が広がっているので、積極的にコミュニケーションを取っていきたい」と話していました。

専門家 心理的支障の除去を

ワークライフバランスに詳しい東レ経営研究所の渥美由喜 主任研究員は「中央省庁では『隗より始めよ』で、トップダウンで男性の育児休業の取得の働きかけが行われてることが成果につながっている」と評価する一方、「欧米諸国の男性公務員の育児休業取得率は9割を超えているので、日本はまだまだ低い」と指摘しています。

そのうえで渥美さんは「官民問わず、育児休業がとりやすい職場環境の整備が急務だ。日本の制度は、育休中も67%の所得が保障されるなど、世界的に見ても経済的支援の水準は高いので、取得が進まないのは、心理的なハードルが原因とみられる。今後は、管理職世代に親の介護の問題なども増えてくるため、職場全体で助け合う雰囲気を醸成することが、職場や会社にとって大きなリスクマネージメントだという意識に変わってくると思う。男性の育休が、そうした意識改革のきっかけとして使われればいい」と話しています。

国家公務員全体では目標未達

30日発表された男性国家公務員の育児休業の取得率には、自衛官などの「特別職」は含まれていません。

政府は特別職も含めたすべての男性国家公務員の育児休業の取得率を来年・令和2年までに13%とする目標を掲げています。

内閣人事局によりますと、最新のデータでは(H29年度)10.0%で、民間企業の6.16%を(H30年10月現在)上回っているものの、まだ目標には達していないということです。

民間との比較

特別職を除いた男性国家公務員の育児休業の取得率は、平成27年度以降、毎年、4ポイント前後伸びています。

昨年度の取得率は平成26年度より16ポイント余り高くおよそ4倍になっています。

一方、民間企業も毎年伸びているものの、国家公務員に比べて伸び率は低く、平成30年度は平成26年度からおよそ4ポイントの伸びにとどまっています。

この背景について、東レ経営研究所の渥美さんは「民間企業のなかには『経営のマイナスになる』という短期的な視点で社員の育児休業の取得に消極的な経営者もいる一方で、省庁よりも先進的な企業もあり、トップの意識によって職場環境にも大きなばらつきがある」と話しています。