約変わっている」自民
「方向性変わらぬ」小池知事

旧築地市場の再開発の方針について、小池知事に一問一答で質問する都議会の常任委員会が4日開かれ、自民党や共産党は「小池知事が基本方針を変更した」などと批判しましたが、小池知事は「方向性は変わっていない」と従来の主張を繰り返して終わりました。

旧築地市場の跡地をめぐり、小池知事はおととし6月、「食のテーマパーク機能を有する新たな市場として、東京をけん引する一大拠点とする」という基本方針を表明しましたが、都がことし1月にまとめたまちづくり方針の素案では、国際会議場などが中核とされ、食のテーマパークや市場機能は盛り込まれていません。

これについて、都議会の経済・港湾委員会が開かれ、自民党や共産党など6つの会派が求めていた小池知事に、一問一答で質問する場が設けられました。

このうち、自民党の山崎一輝議員は、党が独自に行ったアンケート調査で、小池知事が基本方針を変更したと考えている人が多数を占めたと説明したうえで、「知事は築地に食のテーマパークや市場機能を残すと都民に約束した。公約の中身が完全に変わっているのに方向性は変わっていないと言い張るのは詭弁(きべん)以外の何物でもない」と批判しました。

これに対して、小池知事は「誤解を生んだところもあるかもしれないが、テーマパークうんぬんは食の文化があるからこそ、そのことばが出るのであって、築地の再開発はこれからのさまざまな民間のアイデアにもよるが、それを生かさない手はないと考えている」と述べました。

そのうえで、「方向性については何ら変わっていない」と述べ、従来の主張を繰り返しました。

また、共産党の畔上三和子議員は「まちづくり方針の素案のどこに市場機能の確保について書かれているのか」と質問しましたが、小池知事は明言を避け、「豊洲市場から新鮮な食材を提供する物流機能をもたせることや、鮮魚の小売りなど、民間ベースでさまざまなビジネスが生まれる可能性がある」と述べるにとどまりました。

4日の委員会は、議論がかみ合わないまま、小池知事への質問は終わりました。

主要会派は

小池知事を支持する、最大会派の都民ファーストの会の小山有彦政務調査会長は「われわれとしては、知事が今まで述べてきたことと、都の方針との差異はないと考えている。新たな再開発の中で知事の述べていることがなされるよう、注視していきたい」と述べました。

公明党の東村邦浩幹事長は「あれだけ大騒ぎして行った委員会なのに、代表質問や一般質問の範囲を超えていなかった。築地のまちづくりは段階的に整備する方針なので、食のテーマパークなどはその過程で検討していけばいいのではないか」と述べました。

自民党の吉原修幹事長は「これまでの経緯をきっちりただして、都民に聞いてもらおうと思ったが、知事の姿勢にはがっくりした。これまでも、いろいろなことを方向転換して都民に知らせることがなかったが、そういう姿勢が今も続いているということだ」と述べました。

共産党の大山とも子幹事長は「きょうの一問一答で、知事が公約に違反したことが明確になった。違うということをきちんと認めて謝罪する、そしてどうして変わったのか、説明するのが知事の仕事だ」と述べました。

都知事「真摯に答えた」

都議会の経済・港湾委員会のあと、小池知事は記者団に対し、自民党や共産党が基本方針を変更したなどと批判したことについて、「政策的というか、政治的と言ったほうがいいかもしれないが、そういうところで考えているのだろう。十分、質疑時間も確保されていたと思うし、さまざまな質問に真摯(しんし)に答えたと考えている。理解をいただけるところは、いただけているのではないか」と述べました。

築地再開発めぐる小池知事の発言経緯

今回の都議会の混乱は、旧築地市場の再開発をめぐる小池知事の発言がきっかけです。

小池知事はおととし6月、「築地は守る、豊洲はいかす」をスローガンに掲げ、豊洲市場への移転を行ったうえで、築地市場の跡地は「食のテーマパーク機能を有する新たな市場として、東京をけん引する一大拠点とする」という基本方針を明らかにしました。

ところが、豊洲市場に併設される予定の観光施設、「千客万来施設」の運営会社が「築地に同じような施設ができれば、採算が取れなくなる」などとして強く反発します。

その後、小池知事は「食のテーマパーク」という発言について、「築地の歴史を踏まえた1つの考え方を申し上げた。再開発にあたっては、民間企業が主導して進めることになっているが、豊洲市場にできる観光施設との両立や、相乗効果が図れるよう配慮する形で募集する」と述べ、トーンダウンします。

そして去年10月、予定よりおよそ2年遅れて豊洲市場がオープンし、閉場した築地市場の解体工事が始まりました。

都はことし1月、旧築地市場の跡地について、大規模な国際会議場などを中核にした再開発を行うとするまちづくり方針の素案をまとめましたが、食のテーマパークや市場機能は盛り込まれていません。

自民党や共産党など都議会の6つの会派は「小池知事は方針を変更したいきさつについて説明責任を果たすべきだ」などとして、今回の都議会の定例会で小池知事に一問一答で詳しく質問できる場を設けるよう求めました。

一方、最大会派の都民ファーストの会や、公明党は「質問の機会はほかにもある」などと主張しました。

こうした会派間の意見の対立で、定例会の初日に行われる小池知事の施政方針の表明が翌日の未明にずれ込むなど都議会の混乱が続きましたが、結局、議案を詳しく審議する定例会の常任委員会で、小池知事に一問一答で質問する場を設けることで決着しました。

今回の定例会の代表質問で、小池知事は「都が中央卸売市場として運営するのは豊洲市場で、豊洲との近接性を考えれば、築地再開発で都が改めて卸売市場を整備することはない」としたものの、「私が基本方針で示したのは、豊洲と築地の両方をいかすということを趣旨とした大きな方向性だ。基本方針の方向性については何ら変わっていない」と述べ、方針は転換していないという姿勢を崩していません。

都議会でなぜ今、対立?

東京都の小池知事の発言をめぐって、都議会の対立が激しくなったのは、今回の定例会に、旧築地市場の跡地の再開発に関連した予算案が提出されているためです。

旧築地市場の跡地は、豊洲市場といった中央卸売市場の収益などで賄う「中央卸売市場会計」で管理されていますが、都は税収などで賄う一般会計から約5600億円を支出し、いわば買い取る形で再開発を進める計画です。

この費用が盛り込まれた今年度の補正予算案は、今回の定例会に提出され、新年度の予算案に先立って6日の本会議で採決が行われる予定です。

このため、自民党や共産党などは「巨額の費用が盛り込まれた予算案の採決の前に、旧築地市場の再開発について小池知事の姿勢をただす必要がある」などととして、一問一答で詳しく質問する場を設けるよう求めたのです。

さらに、今回の都議会の対立は、東京オリンピックの大会期間中、来年7月30日に任期満了を迎える都知事選挙の前哨戦という見方もあります。

小池知事は、次の知事選挙に立候補するかどうか、まだ明言していません。しかし、都庁内では「オリンピックの期間中に任期満了を迎える小池知事が、次の選挙に立候補せず、退任することはないだろう」という声があります。

先の知事選挙、都議会議員選挙などで激しく対立してきた自民党は、次の知事選挙を見据えて都民の関心の高い旧築地市場の再開発をめぐる小池知事の姿勢を追及しているとみられ、今後の小池知事の都政運営にどのよう影響を及ぼすのか注目されます。

跡地再開発含む補正予算案 成立の見通し

今回の都議会の定例会には、旧築地市場の跡地の再開発に関連した今年度の補正予算案が提出されていて、6日の本会議で採決が行われる予定です。

旧築地市場の跡地は、豊洲市場といった中央卸売市場の収益などでまかなう「中央卸売市場会計」で管理されていますが、都は税収などでまかなう一般会計からおよそ5600億円を支出し、いわば買い取る形で再開発を進める計画です。

この費用が盛り込まれた今年度の補正予算案について、都民ファーストの会と公明党は賛成する方針を明らかにし、都議会の過半数を占めることから、予算案は可決・成立する情勢です。