参議院政倫審 安倍派の世耕氏 西田氏 橋本氏が弁明と質疑

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題。14日、参議院政治倫理審査会が開かれ、午前は安倍派の世耕・前参議院幹事長が出席しました。
世耕氏は国民の政治不信を招いたと陳謝した上で、派閥の会計処理やキックバックの取り扱いには関与していなかったと釈明しました。

午後は、いずれも安倍派の西田昌司氏と橋本聖子・元オリンピック・パラリンピック担当大臣が出席して弁明と質疑が行われました。
このうち西田氏は、とりやめる方針だったキックバックを続けた派閥幹部の責任は重大だと批判しました。

【午前】
世耕・前参議院幹事長による弁明と質疑が行われました。

この中で、世耕氏は「国民の政治不信を招き、関係者に多大なご迷惑をおかけしていることについて心からおわびを申し上げる」と陳謝しました。

その上で派閥の会計処理について「収支報告書の作成をはじめ、清和会=安倍派の会計や資金の取り扱いに関与することは一切なかった。パーティー券販売のノルマ、販売枚数、還付金額、ノルマ超過分の還付方法について関与したこともなければ、報告・相談も受けてこなかった」と釈明しました。

またパーティー収入のキックバックの仕組みについて「いつ始まったか本当にわからない。少なくとも10数年前には始まっていたと思う」と説明しました。

その上でおととし、当時会長を務めていた安倍元総理大臣のもとでいったんとりやめる方針を決めたキックバックが、安倍氏が亡くなったあと続けられた経緯について「安倍会長が亡くなったあとも、私が出席している場で、現金による還付が決まったり、現金による還付を私が了承したというようなことは一切ない」と述べました。

そして立憲民主党の蓮舫氏は、世耕氏も参加し、キックバックの取り扱いなどを協議したおととし8月の幹部協議について「8月の幹部会で、塩谷氏は『困っている人がたくさんいるので還付継続になった』、西村氏は『結論が出なかった』、下村氏は『一定の方向を決めたことがない』と、発言が食い違っている」とただしました。

これに対し、世耕氏は「さまざまな意見が出ているし、各人、若干記憶があいまいで、食い違うところがあるのではないかと思う。いずれにしても、この時に何か確定的なことは決まっていない。大幅に各人の認識が違っているというわけではない」と述べました。

また、世耕氏は参議院選挙の年に開いた派閥のパーティーに関して「『改選期の議員はノルマがない』というルールがどこからか始まって運用されていた」と述べた上で、改選となる議員に収入を全額キックバックしていた可能性を問われ「今回の事態が報道されるようになって私も初めて知った」と述べました。

このほか自民党青年局の近畿ブロック会議の懇親会に露出の多い衣装の女性ダンサーが招かれていたことなどをめぐって、地元の県連の幹部を務めている世耕氏は「少なくとも還付金を原資とするものを地元を対象に使うことは1円もないということを明確に申し上げておきたいが、極めて不適切で参加していた秘書を厳しく注意し、いま謹慎を申しつけている」と述べました。

【午後】
西田昌司氏と橋本聖子・元オリンピック・パラリンピック担当大臣による弁明と質疑が行われました。

この中で西田氏は「派閥の幹部ではないが、政治不信を招いた国会議員の1人として国民におわびを申し上げたい」と陳謝しました。

その上で派閥からのキックバックについて「報道を受け、事務所の担当者から聴き取りをした結果、私の事務所でも受領していたことが判明し、初めて存在を知った」と釈明しました。

そして「担当秘書は受け取りを拒否し、派閥の事務局に収支報告書に載る形の寄付として処理してほしいとお願いしたが認められず『みんながやっているのだから受け取ってもらわないと困る』という話になり、受け取っていたということだ」と述べました。

立憲民主党の吉川沙織氏は「このようなシステムが組織の中で漫然と続けられ、是正されなかったことは構造的な問題ではないか。派閥としてどこに責任があると考えているか」とただしました。

これに対し、西田氏は「肝心の安倍氏や細田氏、町村氏など派閥のトップは亡くなっているが、実務を担っていた事務局や派閥の幹部がいる。誰も知らないというのは私は納得できない」と述べました。

さらに「先ほどの世耕氏の答弁は私も聞いていたが、まったく納得できない」と述べました。そして「説明責任はまったく果たされていない。安倍氏がやめろと言ったのに積極的に続けていた派閥の幹部は責任重大だ。なぜ、われわれが巻き込まれることになったのか幹部が話し、みずからの責任の取り方を示すべきだ」と述べました。

橋本氏は「国民の政治不信を招き、誠に申し訳ない。改めて深くおわびする」と陳謝しました。

その上で派閥の会計処理について「一定の役職に就いていたが、会計や経理には一切関わっておらず、帳簿、通帳、収支報告などを見たことはなかった。収入と支出の一部を派閥の収支報告書に記載しないことは、長く慣行的に行われてきたようだが、私自身はこの問題が報道されて初めて知った」と釈明しました。

また派閥からのキックバックについて橋本氏は「寄付金として収支報告の収入に計上すべきだったが、領収書を発行できなかったため計上できず、担当者は困惑の末、便宜的に私個人からの借入金収入として計上した」と述べました。

さらに「私は毎年還付を受けていたかどうかは知らなかった。2019年の選挙の時に、秘書が派閥の事務所に還付を受け取りに行った際、ノルマがなく、還付が大きくなったことに驚き、初めて私に金額と仕組みを報告に来た」と述べました。

林官房長官「それぞれの政治家が説明責任果たすことが重要」

林官房長官は午前の記者会見で「政府の立場でコメントすることは控えるが、一般論として申し上げれば、それぞれの政治家が必要に応じて適切に説明責任を果たすことが重要だ」と述べました。

自民 佐藤正久参院議員「残念ながら疑惑が深まった側面ある」

参議院政治倫理審査会で与党側の筆頭幹事を務める自民党の佐藤正久・参議院議員は記者団に対し「安倍派の幹部だけでなく西田議員も出席したので衆議院とは違った議論ができた。ただ、世耕前参議院幹事長は『関与せず経緯も知らない』ということだったので、残念ながら疑惑が深まった側面もある」と述べました。また佐藤氏は、けさの幹事会で、審査会で弁明する意向を示さなかった議員29人に対し、野村会長が文書で出席を促すことで与野党が合意したと説明しました。


立民 泉代表「誰も責任とらず 政治家に値しない」

立憲民主党の泉代表は記者団に対し「世耕氏に至るまで、派閥幹部は結局『自分には責任はない』と言い、誰も責任をとっていない。このような審査会であれば何の解明にもならない。真相を話さないのであれば、参考人招致や証人喚問まで求めていく。無責任体質の中で億単位のカネを動かす仕組みをつくり、違法な行為をまん延させてきたことはあきれるばかりで、政治家に値しない」と述べました。

立民 長妻政調会長「“違法性の認識” 今後も聞いていく」

立憲民主党の長妻政務調査会長は記者会見で「世耕前参議院幹事長は、おととし8月の安倍派幹部の会合について、非常に漠然とした話しかせず、なかなか真相が見えてこない。安倍元総理大臣がキックバックをやめようとしたのは、違法性の認識があった可能性が高く、今後も聞いていく必要がある。衆参両議院の審査会で『裏金議員』全員の出席を求め続ける」と述べました。

立民 蓮舫氏「残る29人も引き続き出席を求めていく」

立憲民主党の蓮舫氏は、審査会での世耕前参議院幹事長に対する質疑のあと、記者団に対し「自分に都合のいいことは雄弁に語るが、肝心なことは記憶がなくなる政治家の答弁の見本のような内容だった。参議院選挙の年の全額キックバックは『ノルマがない』ときれいな言い方をしたが、『誰がどこで決めたかわからない』として、実に都合のいい記憶だ。さらに疑惑が深まっているのでこれで終わりではなく、残る29人の議員についても引き続き、出席を徹底して求めていく」と述べました。

維新 藤田幹事長「森元首相に国会に出てきてもらえばいい」

日本維新の会の藤田幹事長は14日夜、BS日テレの「深層NEWS」に出演し「真相に近いことを知っている人には、すべて聞いて、事実をつまびらかにすべきだ。自民党で、特に安倍派の議員が『森元総理大臣、来てください』と言えば、どやされるのではないかという恐ろしさがあるのではないか。しかし、率先して本当のことを話してもらい、全部浄化することが必要だ。森元総理大臣にも、参考人招致でも証人喚問でもいいので国会に出てきてもらえばいい」と述べました。

維新 音喜多政調会長「疑問 何一つ明らかにならなかった」

日本維新の会の音喜多・政務調査会長は、審査会での世耕・前参議院幹事長に対する質疑のあと、記者団に対し「世耕氏は『知らない、わからない、関与していない』の連発で、国民の疑問が何一つ明らかにならなかった。人によっては開き直りと捉えるのではないか。本人が説明できないなら、森元総理大臣らに聞きに行くなど、やれることはいくらでもあった。知らないからそれで終わりというのは、自他ともに認める安倍派の最高幹部の1人として許されない」と述べました。

公明 北側副代表「疑惑持たれている議員は説明責任を」

公明党の北側副代表は記者会見で「これからも政治倫理審査会に限らず、いろいろな場で説明する機会はあると思うので、疑惑を持たれている議員は説明責任を果たし、国民の信頼を回復できるように努めてもらいたい」と述べました。

国民 玉木代表「参考人招致や証人喚問に移行せざるをえない」

国民民主党の玉木代表は党の代議士会で「世耕氏の話を聞いても、キックバックの仕組みをいつ誰が始めたのか、わからないとのことだったが、誰の意思決定もなく動き始めたなどということはありえず、真実はまったく明らかにならなかった。これ以上、審査会を続けても、裏金の経緯や使いみちは明らかにならない。今後は衆参両院で、参考人招致や虚偽の説明をすれば罪に問われる証人喚問に移行せざるを得ない」と述べました。