輸入規制撤廃 福島出身の外交官が交渉に

日本とEUとの定期首脳協議で、EU側から岸田総理大臣に対し、福島第一原発事故のあと続けてきた日本産の食品に対する輸入規制を撤廃する方針が伝えられました。

【リンク】EU 日本産食品の輸入規制撤廃 放射性物質の監視継続求める

この交渉に去年5月からあたってきた1人が、外務省欧州連合経済室の首席事務官・三好あさぎさんです。三好さんは福島県西会津町の出身で「地元のためになることをしたい」と特別な思いで取り組んできました。ただ加盟国の中には撤廃に慎重な声もあり、一筋縄ではいかなかったと言います。

三好さんは「EUの加盟国は27か国あり、いろいろな立場があって、担当レベルから政治家レベルまで重層的に働きかけをしていった」と振り返りました。

ことし3月、EUの担当者が福島第一原発を視察に訪れた際には通訳も兼ねて案内し、廃炉に向けた取り組みなどを説明しました。担当者は真剣に説明を聞いてくれたということで、理解が深まるきっかけになったのではないかと感じています。

EU側とギリギリまで交渉続け 実を結ぶ

状況が大きく好転したのは6月下旬でした。EU側から規制撤廃に向けた動きが出てきたというメールが三好さんのもとに届きました。うれしい反面油断したらいけないとギリギリまで交渉を続け、今回、実を結ぶ形となりました。

7月上旬 EU側とのオンライン交渉

「ようやく東北人として貢献できた」故郷への思い

三好さんは「被災地の復興にとっても後押しになるし、風評被害を乗り越えていくという観点でも意義があると思っている。私は東日本大震災の発災時は地元にはおらず、何かしら地元に貢献したいと思っていたがなかなかできずにいた。ようやく東北人として福島出身者として貢献できたかなと、うれしい気持ちです」と故郷への思いを語りました。

EUの規制は一部の食品に放射性物質の検査証明書の提出を求めるものですが、中国や韓国、台湾などは、品目や産地によっては輸入停止といった厳しい措置をとっています。三好さんは今回のEUの規制撤廃を契機に、これらの国や地域でも緩和や撤廃に向けた機運を高めたいとしています。