ウクライナ ゼレンスキー大統領 原爆資料館など訪問

岸田総理大臣はことし3月、ウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談した際、今回のサミットに、オンラインで参加してもらうことで合意していました。

日本政府によりますと、その後、ゼレンスキー大統領から、対面参加への強い希望が伝えられたことから改めて調整が行われた結果、今回の広島訪問が決まったとしています。

ゼレンスキー大統領も対面で討議参加

G7広島サミットは最終日の21日、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加した討議が午前11時前から行われました。

サミット最終日の21日、岸田総理大臣は、韓国のユン・ソンニョル大統領とともに、広島市の韓国人原爆犠牲者慰霊碑に祈りをささげたあと、日韓首脳会談を行いました。

続いて、インドやブラジルなど、招待国の首脳らとともに、広島市の原爆資料館を視察しました。

このあと、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加して、「ウクライナ情勢」をテーマにしたセッションが、午前11時前から1時間近く行われました。

G7の首脳らはこれまで2日間の討議でロシアの侵攻を強く非難し、結束して、ロシアへの制裁とウクライナ支援を継続することを確認していて、ゼレンスキー大統領にこうした考えを直接伝えたものとみられます。

7月に首脳級の国際会議開催を提案

ウクライナ大統領府によりますとゼレンスキー大統領は、G7やインドなど招待国の首脳も交えたセッションの中で、ウクライナの領土の一体性の回復などを含む自らの和平提案への支持を取り付けるため、ことし7月に首脳級の国際会議を開催することを提案したということです。

このなかでゼレンスキー大統領は「ロシアの侵略者がわが国の領土にとどまる限り、ロシアとの交渉のテーブルにつくことはないだろう。世界はロシアに平和の回復を強制するのに十分な力を持っている」と述べ、ロシアへの圧力強化に向けた連携を訴えました。

そのうえで「もうすぐ7月となり、本格的な戦争が始まってから500日となる。象徴的な期間であり、ウクライナの和平提案に関するサミットを開催するのに適している。この戦争を終わらせたいと願うすべての人々のサミットとなる」と述べ、ことし7月に国際会議の開催を提案し、首脳らに参加を呼びかけました。

平和公園と原爆資料館を訪問

岸田総理大臣とウクライナのゼレンスキー大統領は、21日夕方、広島市の平和公園を訪れて、そろって原爆慰霊碑に献花し、犠牲者に祈りをささげました。


G7広島サミットに対面で参加したウクライナのゼレンスキー大統領は、夕方、広島市の平和公園の原爆資料館を訪問しました。ゼレンスキー大統領は、館内の展示物を視察するとともに、感想やメッセージなどを残す「芳名録」にも記帳したものとみられます。


その後、岸田総理大臣も平和公園を訪れ、両首脳はそろって原爆慰霊碑に献花し、犠牲者に祈りをささげました。

岸田首相 ゼレンスキー大統領と首脳会談 両国の連帯確認

岸田総理大臣は、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、日本からの追加の支援として、自衛隊が持つトラックなど100台規模の車両を提供することなどを伝え、今後、一層、緊密に連携していくことを確認しました。

G7広島サミットの閉幕後、岸田総理大臣とウクライナのゼレンスキー大統領は、夕方そろって広島市の平和公園の原爆慰霊碑に献花したあと、首脳会談を行いました。

冒頭、岸田総理大臣は「ロシアによる核兵器の威嚇、ましてや使用はあってはならない。核兵器のない世界に向けた取り組みとして、ともに平和公園の慰霊碑で献花をしたことは、重要な意義がある」と述べました。

その上で、岸田総理大臣は、今回のサミットで▽G7が一層結束し、あらゆる側面からのウクライナ支援とロシアへの厳しい制裁を継続していくことや、▽インドなどの「グローバル・サウス」を含めた招待国との間でも、力による一方的な現状変更の試みを許さない立場を確認したと説明しました。

その上で、ウクライナの要請も踏まえた日本からの追加の支援として、自衛隊が持つトラックなど100台規模の車両や、およそ3万食の非常用食料を提供することに加え、ウクライナの負傷兵を自衛隊の病院に受け入れることなどを伝えました。

また、日本政府内にウクライナの復興支援策を検討する会議を新たに設けたことも説明し、官民一体で、復旧・復興を後押ししていくと強調しました。

これに対し、ゼレンスキー大統領は「サミットに『グローバル・サウス』の国々を招待したことはすばらしかった。これまでの強力な支援と新たな支援に深く感謝する」と応じ、両首脳は今後、一層、緊密に連携していくことで一致しました。

冒頭、岸田総理大臣は「ロシアによる核兵器の威嚇、ましてや使用はあってはならない。核兵器のない世界に向けた取り組みとして、ともに平和公園の慰霊碑で献花をしたことは、大変、重要な意義がある」と述べました。

そして、ことし3月にみずからがウクライナを訪れた際の受け入れに重ねて謝意を示した上で「現地の情勢や張り詰めた空気を自分の目で見て、肌で直接感じることができ、ウクライナの美しい大地に平和を取り戻すため、ともに歩んでいく決意を新たにした」と述べました。

その上で、今回のサミットとゼレンスキー大統領による外交努力の成果を踏まえた今後の連携について意見を交わしたいと呼びかけました。

会談で岸田総理大臣は、日本として今後もロシアに対する制裁やウクライナへの支援を継続する方針を改めて直接伝え、一刻も早い軍事侵攻の停止とウクライナの復興に向けた連帯を確認したものとみられます。

ゼレンスキー氏 「バフムトでの破壊とかつての広島似ている」

G7広島サミットに参加したウクライナのゼレンスキー大統領は21日、広島市内で会見し「ウクライナのバフムトで起きている破壊とかつての広島の写真が似ている」と述べロシアを改めて非難した上で、東部の激戦地バフムトも含めて将来的にウクライナの復興を成し遂げる決意を示しました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日午後、広島市の平和公園を訪れたあと、岸田総理大臣との会談に臨んだのに続いて今夜7時半前から会見を行いました。

このなかでゼレンスキー大統領は「侵略者たちは、人々を支配下におくだけでなく、ウクライナ人を存在させないようにしている」と述べ軍事侵攻を続けているロシアを改めて非難しました。

そして「ウクライナのバフムトで起きている破壊とかつての広島の写真の風景が似ている。バフムトはすべての建物や道路が壊された状態だ。広島を見て、生きている街だと感じた。バフムトも将来、必ず再建できると思う」と述べ東部の激戦地バフムトも含めて将来的にウクライナの復興を成し遂げる決意を示しました。

またゼレンスキー大統領は「日本の街なかにウクライナの国旗が見えるが、これはウクライナの国民に対する信頼や支持の表れだ」と述べ謝意を示しました。

そのうえで「ウクライナが提案する和平に向けた10項目は将来の侵略国を止める手段となる」と述べロシア軍の撤退や領土の保全などを盛り込んだウクライナ側の和平提案が有効だと訴えました。

ウクライナのゼレンスキー大統領を乗せた航空機は、21日午後9時36分ごろ、広島空港を離陸し、日本を離れました。

「岸田首相と日本国民に感謝」

ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間の21日夜、SNSを更新し「世界中の誰もが、他国を尊重しなければならない。国境を認めなければならない。正義を守らなければならない。生命を大切にしなければならない。平和をみずからの責務としなければならない」などと投稿しました。

そのうえで、広島の街なかにあったウクライナの国旗について触れ「ウクライナの国旗があるということは、自由や生命、それに私たちウクライナ国民への信頼がある証拠だ。岸田総理大臣と日本国民の皆さん、支援をありがとう」と記し、日本への感謝の意を表しています。