新型コロナ感染者数 今後東京などでは増える傾向も

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、新規感染者数は全国的に下げ止まりとなっていて、今後、東京などでは増加傾向になると見込まれると分析しました。
感染者数は去年夏の感染拡大前より少ない状況が続いているものの、年度替わりで感染リスクが高まる場面が増えることによる影響などに注意が必要だとしています。

全国的に下げ止まり

専門家会合は現在の感染状況について感染の第7波が始まる前の去年夏の水準を下回る状況ではあるものの、全国的に下げ止まりとなっていて大都市部など直近で増加している地域も多く見られるとしています。

ただ、重症者数や亡くなる人の数は減少傾向が続いているとしています。

今後の感染状況については大都市部で20代の感染が増加していることから感染者数が増加に向かう可能性があり、短期的には横ばい傾向が続くか、東京など一部の地域では増加傾向となることが見込まれるとしています。

大型連休明け 東京で1日あたり約8300人の試算も

名古屋工業大学の平田晃正教授のグループは3月29日までの感染者数などのデータを元にさらに感染力の高い変異ウイルスが現れず、人出がコロナ前の水準まで緩やかに戻るといった想定で、今後の感染状況をAIを使って試算しました。
その結果、東京都の1週間平均での1日あたりの感染者数は5月上旬から中旬にかけて大型連休などの影響で増えると見込まれ、▼80%の人がマスクをしない場合、およそ8300人、▼半数の人がマスクをした場合はおよそ4600人に抑えられるという結果になったということです。

これまでどおりの着用状況が続く場合は、およそ2600人にとどまるという試算結果でした。

その後は感染者数が緩やかに減るものの、お盆休みのあと、8月下旬にも5月中旬よりは少ないものの、増えると見込まれると試算されたということです。

平田教授は「換気が難しく『密』になる場合などにはマスクの着用は推奨できる。対策ができていれば、急激な拡大にはならないだろう」とコメントしています。

新規感染者は前週比1.03倍

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、4日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.03倍とわずかに増加し、北海道や東北、首都圏などで18の都道府県で前の週より多くなっています。

首都圏の1都3県では▼東京都が1.26倍、▼神奈川県が1.16倍、▼埼玉県が1.07倍、▼千葉県が1.05倍と増加に転じています。

関西では▼大阪府が1.03倍、▼京都府と兵庫県で1.01倍、東海でも▼愛知県が0.99倍、▼岐阜県が0.96倍、▼三重県が0.92倍などとなっています。

また▼福井県で1.35倍、▼北海道と秋田県で1.30倍などと、18の都道府県で増加傾向となっています。

人口10万あたりの直近1週間の感染者数は▼鳥取県が73.54人と全国で最も多く、次いで▼福井県が65.85人、▼新潟県が64.19人、▼広島県が63.58人、▼長野県が62.94人などととなっていて、▼東京都は45.36人、▼大阪府は32.64人、そして▼全国では38.61人となっています。

専門家会合「3密」回避など対策を改めて呼びかけ

専門家会合は▼年度替わりの行事など感染リスクの高まる場面や▼ワクチンや感染でできた免疫が時間とともに下がっていくことそれに▼免疫を回避する新たな変異ウイルスの割合が増えることなどによる影響に注意が必要だと指摘しました。

また、専門家会合は、来月、新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行され、感染対策は個人の判断に委ねることが基本となる中でも、地域での流行状況に関心を持ち、自主的に感染を防ぐための行動をとって特に重症化リスクの高い高齢者に感染が及ばないようにする配慮が重要だとしています。

その上で▼体調の不安や症状がある場合は無理せず自宅で療養するか医療機関を受診すること、▼手洗いなどを習慣として行うこと、▼その場に応じたマスクの着用やせきエチケットを行うこと、▼換気を行い、「3密」を回避することなどといった対策を一人ひとりが身につけるよう改めて呼びかけました。

脇田座長「今後の推移を見ていく必要がある」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は、地域によって感染者数が増えている理由について「いわゆる『第7波』や『第8波』で多くの人が感染したりワクチン接種が進んだりしたことで免疫を持つ人が増えていたが、いまは減少傾向になっていることがデータで示されている。また、大都市圏では、年度替わりに伴う人と人との接触の変化が影響しているのではないかと考えている」と述べました。

また、変異ウイルスの「XBB.1.5」が検出される割合が上昇していることについて「以前の変異ウイルスより感染しやすい可能性があり、置き換わりに伴って感染が拡大する可能性はある。現在は複数の系統の変異ウイルスが共存している状態で、『XBB.1.5』が急激に増加するのか、ほかの変異ウイルスと共存するのか、今後の推移を見ていく必要がある」とした上で今後、感染の「第9波」に入るのかどうかについては「増加傾向になる可能性はあるが、どの程度の規模になるかは、いまの時点では申し上げにくい」と述べ、今の段階で見通しを示すことは難しいという考えを示しました。