ロシア政府 “ビザなし交流などの協定を破棄” 一方的に発表

ロシア政府は、北方領土の元島民らによる、いわゆる「ビザなし交流」などの日本との合意を破棄したと、一方的に発表しました。ウクライナへの軍事侵攻を受けて、日本政府が制裁を科してきたことに反発した形です。

ロシア政府は5日、北方領土の元島民らによる「ビザなし交流」や、元島民が故郷の集落などを訪問する「自由訪問」など、これまでに日本との間で結ばれた合意を破棄したと、一方的に発表しました。

そのうえで、ロシア外務省に対して、この決定を日本政府に通知するよう指示したとしています。

「ビザなし交流」などの交流事業をめぐっては、ことし3月、ロシア外務省がウクライナへの軍事侵攻を受けて、日本政府が制裁を科したことに反発して、停止する意向を明らかにしていました。

その際に、北方領土問題を含む平和条約交渉を中断する意向を表明していて、「すべての責任は、反ロシア的な行動をとる日本側にある」と一方的に非難していました。

「ビザなし交流」は、日本人と北方領土に住むロシア人がビザの発給を受けずに、相互に訪問する枠組みで、1991年に合意され、1999年からは「自由訪問」の枠組みも作られ、「ビザなし交流」と合わせて、これまでに双方およそ3万人が参加しています。

根室 石垣市長「容認できるものではない」

ロシア政府が、北方領土の元島民らによるいわゆる「ビザなし交流」などの日本との合意を破棄したと発表したことについて、北海道根室市の石垣雅敏市長は6日午前、職員に向けて行った訓示の中で「この協定は当時のゴルバチョフ大統領からの提案であり、30年以上、時計の針を戻す行為は容認できるものではない」と非難しました。

そのうえで「一度開いた扉は閉じ切ることはできないとも考えている。北方領土の隣接地域として一喜一憂することなく、返還運動原点の地の役割をしっかりと果たしていきたい」と述べました。

松野官房長官「極めて不当 ロシア側に改めて強く抗議」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「極めて不当なもので断じて受け入れられない。現在までのところロシア側からの通知はないが、きょう、ロシア側に対し、改めて強く抗議した」と述べました。

そのうえで「日ロ関係の現状は、すべてロシア側に責任があるが、北方四島の交流事業などを行う状況にはない。もちろん、高齢になった元島民の方々の思いに何とか応えたいという考えに変わりないが、このような対応を取らざるをえないことについて、ご理解を賜りたい」と述べました。

林外相「極めて不当 改めて強く抗議」

林外務大臣は閣議のあとの記者会見で「極めて不当であり、断じて受け入れられない。現在までのところロシア側からの通知はないが、きょう外務省の欧州局参事官から、在京ロシア大使館の次席に対してこうした考えを伝え、改めて強く抗議した」と述べました。