安倍元首相「国葬」経費 約2億5000万円支出を閣議決定

来月下旬の安倍元総理大臣の「国葬」の経費について、政府は26日の閣議で、会場の設営費やバスの借り上げ料などとして、今年度予算の予備費からおよそ2億5000万円を支出することを決めました。

来月27日に東京の日本武道館で行われる安倍元総理大臣の「国葬」について、政府は、経費を全額国費から支出することにしていて、公式に招く参列者の規模が最大で6000人程度になることを想定し、必要額の算定作業を進めてきました。

その結果、政府は26日の閣議で、今年度予算の予備費からおよそ2億5000万円を支出することを決めました。

内訳を見ますと、
▽会場の設営費などとしておよそ2億1000万円が、
▽会場やバスの借り上げ料などとしておよそ3000万円が盛り込まれています。

ただ、周辺の警備にあたる警察官の人件費などは含まれていないということです。

今回の「国葬」には、海外から多くの要人らが参列する予定であるほか、一般の人たちのために、会場の武道館とは別に献花台を設ける方向で調整が進められています。

政府は、セキュリティー対策や新型コロナ対策の強化をはじめとした会場設営に加え、公式の参列者の把握や移動手段の確保などといった準備を加速させることにしています。

政府 弔意表明を各府省に求める閣議了解は見送り

安倍元総理大臣の「国葬」をめぐって、政府は、国民に弔意を強制していると誤解が生じるのは避けたいとして弔旗の掲揚や黙とうなどを各府省に求める閣議了解を見送ることになりました。

来月27日の安倍元総理大臣の「国葬」にあたって、政府は当初、弔旗の掲揚や黙とうによる弔意の表明を各府省に求める閣議了解を行うことも検討していました。

これについて、松野官房長官は記者会見で、「国民ひとりひとりに弔意を求めるものであるとの誤解を招かないよう閣議了解は行わない」と述べ、閣議了解は見送る考えを明らかにしました。

政府関係者によりますと、内閣と自民党による「合同葬」など、戦後、国が関わった総理大臣経験者の葬儀の大半で、官庁に弔意の表明を求める閣議了解が行われていて、見送りは異例だということです。

また政府は、地方自治体や教育委員会などの関係機関にも弔意表明の協力は求めない方針です。

一方、松野官房長官は、閣議了解の見送りで「国葬」当日に、各府省で弔旗の掲揚などは行われないのかと問われ「詳細は検討中だ。方向が決定しだい示したい」と述べました。

松野官房長官「政治的評価などを求めるものではない」

松野官房長官は、記者会見で「安倍元総理の『国葬』について、さまざまな意見があることは承知している。国民ひとりひとりに対して喪に服することや、政治的評価を求めるものではないと、しっかり説明していきたい」と述べました。

また最終的な支出が膨らむ可能性について、記者団から問われ、「最大6000人程度の参列をもとに算出しており、その範囲内で行われるものと考えている。予備費以外に、国内外の要人の警戒・警備に要する経費、海外要人の接遇に要する経費が見込まれるが、これらの経費は状況に応じて既定予算で対応していく」と述べました。

一方、松野官房長官は『国葬』の法的根拠や国会審議を経ずに予備費を支出することを疑問視する声もあるがと問われ、「国の儀式を内閣が行うことは行政権の裁量に含まれ、閣議決定を根拠に行うのは可能だと考えている。また、憲法および財政法では予見しがたい予算の不足に充てるため、予備費を支出できるとされており、これまでの葬儀の例と同様に、使用を決定したものだ」と説明しました。

鈴木財務相 予備費「憲政史上最長の重責担われたことなど勘案」

鈴木財務大臣は、予備費の使用の理由について「安倍元総理が憲政史上最長の8年8か月にわたって内閣総理大臣の重責を担われたことや、海外からも幅広い弔意が寄せられていることなどを勘案した」と述べました。

そのうえで、国民の間で「国葬」に反対する意見もあることについて、鈴木財務大臣は、「国民に政府の考え方を理解していただけるように、引き続き説明していくことが重要だ」と述べました。

また今回閣議決定した費用の中に、弔問に訪れる海外の要人の警護などの費用が含まれていないことについて、鈴木財務大臣は「警察庁や外務省において通常発生する業務の延長であることから、これまで同様、既定の予算で対応していくことになる。現時点で確たる金額を申し上げる段階ではない」と述べるにとどまりました。

加藤厚生労働相「国民の理解得ていくことが必要」

加藤厚生労働大臣は記者会見で、「さまざまな意見があることは承知しているが、『国葬』がどういうものであるのかや、喪に服すことを求めていないことなどをしっかりと説明して、国民の理解を得ていくことが必要だ」と述べました。
自民 茂木幹事長「安倍氏に敬意や弔意表す儀式は適切」
自民党の茂木幹事長は記者団に対し、「おととし行われた中曽根 元総理大臣の内閣と自民党の合同葬の費用は1億9000万円だったが、今回は参加人数が圧倒的に増え、セキュリティー対策も強化することで2億5000万円としたのだと思う。政府は、閣議決定の内容を国民に丁寧に説明して欲しい」と述べました。

そのうえで、「安倍氏は、総理大臣として最長の在任期間の中で、大きな成果をあげ、内外から多くの弔意が寄せられている。海外の代表にも参列いただき、安倍氏に敬意や弔意を表す儀式を行うことは適切だと考えている」と述べました。

公明 石井幹事長「実施の意義について政府の見解示して」

公明党の石井幹事長は記者会見で、「『国葬』については、国会で閉会中審査を行う方向であり、政府には実施の意義について国民の理解や納得を得られるよう見解を示してもらいたい。費用はこれまでの総理大臣経験者の葬儀費用や参加者の数、一般の献花も行う状況を踏まえてだと思うので根拠もしっかり説明してもらいたい。また、万全の警護態勢を敷いて無事故で行い、来年のG7サミット=主要7か国首脳会議などに向けた布石として、外交の機会としても十分生かしてもらいたい」と述べました。