岸田総裁 党役員人事決定へ
財務相は鈴木俊一氏で調整

自民党の岸田総裁は、幹事長に甘利税制調査会長を起用するなど、新たな党執行部の顔ぶれを1日に決定します。
また、副総裁に麻生副総理兼財務大臣を充てる方針で、後任の財務大臣には鈴木俊一前総務会長を起用する方向で調整しています。

自民党の岸田総裁は30日、党役員人事について検討を進め、新たな執行部の顔ぶれを固めました。

副総裁に麻生副総理兼財務大臣起用の方針

▽副総裁に麻生副総理兼財務大臣を起用する方針を固めました。麻生氏は9年近くにわたって副総理兼財務大臣を務めてきました。
麻生氏は衆議院福岡8区選出の当選13回で、81歳。党内第2派閥の麻生派の会長を務めています。
昭和54年の衆議院選挙で初当選し、外務大臣や総務大臣、自民党の幹事長などを歴任したあと、平成20年9月に第92代総理大臣に就任しましたが、翌年の衆議院選挙で大敗し自民党は政権を失いました。
自民党が政権を奪回して平成24年に第2次安倍内閣が発足すると、副総理兼財務大臣に就任し、9年近くにわたって務めてきました。
この間、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の推進に中心的な役割を果たし、去年発足した菅内閣でも再任され、財務大臣としての在任期間は戦後最長となっています。
岸田氏としては、総理大臣経験者で財務大臣を長く務め、党内第2派閥の麻生派を率いる麻生氏を党の副総裁に起用することで、政権基盤を安定させるとともに、成長と分配の好循環を目指す経済政策など自身が掲げる政策を党側から推進するねらいがあるものとみられます。

幹事長に甘利税調会長起用の意向

党四役では、幹事長に、麻生派で党の税制調査会長を務める甘利明氏を起用する意向を固めました。
甘利氏は、衆議院神奈川13区選出の当選12回で、72歳。自民党麻生派に所属しています。
昭和58年の衆議院選挙に、当時の新自由クラブから立候補して初当選し、その後、自民党に移りました。
これまでに、経済産業大臣や行政改革担当大臣、党の政務調査会長などを歴任し、第2次安倍政権では、経済再生担当大臣として、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉の取りまとめなどに尽力しました。
おととし9月からは党の税制調査会長として、脱炭素社会の実現やデジタル化の推進に向けた税制上の優遇措置の導入を主導しました。
今回の総裁選挙では、同じ派閥の河野規制改革担当大臣が立候補する中、岸田氏を支持する方針をいち早く打ち出しました。
そして、陣営の幹部を務め、党内の各派閥への働きかけを行うなど、岸田氏の勝利に貢献しました。
岸田氏としては、党内第2派閥の麻生派幹部の甘利氏を幹事長に起用することで、政権基盤を安定させるほか、みずからが目指す党改革の実現につなげるねらいがあるものとみられます。

総務会長に福田達夫氏 起用の意向

総務会長に、細田派で当選3回の福田達夫衆議院議員を起用する意向を固めました。福田氏は、衆議院群馬4区選出の当選3回で、54歳。細田派に所属しています。
大学卒業後、商社での勤務を経て、父親の福田康夫・元総理大臣の秘書官などを務めました。
平成24年の衆議院選挙で初当選し、これまでに防衛政務官などを務めています。
今回の総裁選挙では、衆議院の当選1回から3回の有志の議員でつくるグループ「党風一新の会」で代表世話人を務め、当選回数にこだわらない人材登用など、党改革を進めるよう執行部に求めていました。
岸田氏としては、当選3回の福田氏を党四役の総務会長に抜てきし、党改革を進める姿勢を示すとともに、福田氏が党内最大派閥の細田派に所属していることから、政権運営を安定させたいねらいがあるものとみられます。

政調会長に高市前総務相 起用の意向

政務調査会長に、岸田氏と総裁選挙を争った、無派閥の高市早苗・前総務大臣を起用する意向を固めました。
高市氏は、衆議院奈良2区選出の当選8回で、60歳。無派閥です。
平成5年の衆議院選挙で無所属で初当選し、旧新進党などに所属したあと、平成8年に自民党に入党しました。
安倍前総理大臣と保守的な政治信条が近いことで知られ、平成18年の第1次安倍内閣では沖縄・北方担当大臣として初入閣しました。
その後、第2次安倍内閣の発足に伴い、政務調査会長に就任し、総務大臣などを歴任しました。
そして、今回の総裁選挙に立候補し、安倍氏の支援を受けて、岸田氏と争いましたが、1回目の投票で3位となり、敗れました。
決選投票では、高市氏を支持した議員の多くが、岸田氏に票を投じたものとみられ、岸田陣営と連携し、岸田氏の勝利に貢献しました。
岸田氏としては、みずからと総裁選挙を争った高市氏を政務調査会長に起用することで、党内融和を図るとともに、高市氏が安倍氏と近いことから、政権運営の安定を図るねらいもあるものとみられます。

選対委員長に遠藤元五輪相 起用の意向

選挙対策委員長に、元オリンピック・パラリンピック担当大臣で、谷垣グループの遠藤利明氏を起用する意向を固めました。
遠藤氏は、衆議院山形1区選出の当選8回で、71歳。自民党谷垣グループに所属しています。
山形県議会議員などを経て、平成5年の衆議院選挙で初当選しました。
教育やスポーツ行政に明るく、第3次安倍内閣でオリンピック・パラリンピック担当大臣を務めました。
今回の総裁選挙では、岸田氏の陣営の選挙対策本部長を務めました。
岸田氏としては、総裁選挙でみずからを支援したことに加え、閣僚経験があるベテランで、東京大会の成功に向けて尽力した遠藤氏の手腕を評価したものとみられます。

国対委員長に高木毅氏 起用の意向

総裁選挙で岸田氏の推薦人を務めた、高木毅 衆議院議院運営委員長を起用する意向を固めました。
高木毅氏は、衆議院福井2区選出の当選7回で、65歳。自民党細田派に所属しています。
平成12年の衆議院選挙で初当選し、これまでに復興大臣や国土交通副大臣などを歴任して、現在は衆議院の議院運営委員長を務めています。
高木氏は、国会対策に携わった経験が長く、野党議員にも広い人脈があることで知られています。
岸田氏としては、高木氏の国会運営の手腕に期待するとともに、高木氏が最大派閥の細田派に所属していることから、政権基盤を安定させるねらいがあるものとみられます。

幹事長代行に梶山経済産業相 起用の方針

幹事長代行には無派閥の梶山経済産業大臣を起用する方針です。

組織運動本部長に小渕元経産相 起用の意向

組織運動本部長に、竹下派の小渕優子・元経済産業大臣を起用する意向を固めました。

自民 世耕参議院幹事長の再任を了承

参議院自民党は30日午前、国会内で特別総会を開き、世耕参議院幹事長の再任を了承したうえで、そのほかの執行部人事については関口参議院議員会長と世耕氏に一任することになりました。
参議院自民党は、関口参議院議員会長を除く執行部の任期が9月まで延長されていたことを踏まえ、30日午前、国会内で特別総会を開き、およそ100人の議員が出席しました。
この中で関口氏が、世耕参議院幹事長を再任することを提案し、了承されました。
そして、政策審議会長をはじめ、そのほかの参議院自民党の執行部人事については、関口氏と世耕氏に一任され、岸田新総裁が行う党役員や閣僚の人事などを踏まえ、検討することになりました。
世耕氏は「岸田新総裁のきのうの発言のとおり、ノーサイドの精神で一致団結したい。来月には参議院静岡選挙区と山口選挙区で補欠選挙があり、岸田新総裁のもとで初めての国政選挙となるので、絶対に勝たなければならない」と述べました。

岸田氏は1日午後の臨時総務会で党四役などの人事を決定したうえで、公明党の山口代表と会談し、自民・公明両党の連立政権の継続を確認することにしています。

組閣は…

また、組閣に向けては、
▽官房長官に細田派の松野元文部科学大臣を起用する方針を固めたほか、
▽麻生氏の後任の財務大臣には麻生派の鈴木俊一前総務会長を充てる方向で調整しています。

▽さらに、細田派の萩生田文部科学大臣を閣内で起用する方向です。
▽総裁選挙で争った無派閥の野田幹事長代行の主要ポストへの起用も検討しています。

こうした中、今月4日に召集される臨時国会をめぐり、自民党は会期を今月14日までの11日間とする方針を固め、1日、野党側に伝えることにしています。

自民党は今月4日に総理大臣指名選挙を行って岸田氏を新たな総理大臣に選出し、8日に総理大臣の所信表明演説を、11日から13日まで各党による代表質問を行いたいとしていて、その後、岸田氏が衆議院の解散に踏み切るかどうか最終的に判断する見通しです。

これに対し野党側は、代表質問だけでなく予算委員会でも審議を行うよう求めていることから、国会日程をめぐる与野党の協議が行われる見通しです。