【時系列で詳しく】河村市長
金メダルかむ~批判~交換へ

【8月4日】

金メダルかみ 批判相次ぐ

名古屋市の河村市長が、東京オリンピックで活躍したソフトボールの選手から金メダル獲得の報告を受けた際、披露されたメダルを突然、口に入れてかみ、市役所に批判の電話やメールなどが相次ぎました。

名古屋市の河村市長は4日午前、ソフトボール日本代表チームのメンバーで、名古屋市熱田区出身の後藤希友投手と面会し、金メダル獲得の報告を受けました。

この中で河村市長は、後藤投手から金メダルを首にかけてもらった際、メダルを手に持ったあと、突然、口に入れてかみました。

この行為について名古屋市広聴課には「新型コロナで感染予防が呼びかけられる中、行うべきではなかった」とか「失礼な行為だ」といった批判の電話やメールが、午後5時半までに46件寄せられているほか、ほかの部署にも同様の批判の声が寄せられました。

メダリストたちからも批判の声

メダリストたちも自身のツイッターで反応しています。

東京オリンピックの柔道男子60キロ級で金メダルを獲得した高藤直寿選手は「自分の金メダルでも傷つかないように優しく扱ってるのに。怒らない後藤選手の心の広さ凄すぎ。俺だったら泣く」と投稿しました。

北京オリンピックのフェンシングの銀メダリスト、太田雄貴さんは「選手に対するリスペクトが欠けている上に、感染対策の観点からもセレモニーさえも自分自身やチームメイトでメダルをかけたりしたのに、『噛む』とは。ごめんなさい僕には理解できません」と投稿しました。

ロンドンオリンピック、バドミントン女子ダブルスの銀メダリストの藤井瑞希さんは、同じような経験があることを明かしたうえで「たぶんボケかましてきたんだと思うけど、本当泣きそうなった」と投稿しています。

ピョンチャンオリンピックのスピードスケート女子500メートルで金メダル、女子1000メートルで銀メダルを獲得した小平奈緒選手は「本人の喜びの表現としてメダルをかじることは自由かと思いますが、私だったらその場で号泣して暫く立ち直れないかも…。
ちなみに、私は『メダル噛んでくださーい』と言われて頑なに首を横に振った記憶があります。
なので、メダルを噛んだことは一度もありません。後藤選手大丈夫かな」と涙を流す表情の絵文字を交えて投稿しています。

河村市長「最大の愛情表現だった」

名古屋市の河村市長は、金メダルを口に入れてかんだことについて「最大の愛情表現だった。金メダル獲得は憧れだった。迷惑をかけているのであればごめんなさい」というコメントを発表しました。

【8月5日】

トヨタ自動車が抗議

さらに、市によりますと、5日午前、後藤投手の所属先のトヨタ自動車から豊田章男社長の名前で、河村市長宛ての抗議文が提出されたということです。

これに対し、名古屋市の副市長らが5日昼すぎ、トヨタ自動車の本社を訪れ、謝罪文を提出したということです。

河村市長は、本社の近くまで同行したものの、事前に約束がない中で訪問すれば相手に迷惑がかかる可能性があるなどとして、本社には入りませんでした。

トヨタ自動車 「不適切かつあるまじき行為」

後藤投手が所属するトヨタ自動車はコメントを発表しました。

この中で、今回の行為について「不適切かつあるまじき行為」としたうえで、「金メダルはアスリートの長年にわたるたゆまぬ努力の結晶であり、コロナ禍でメダルの授与ですら本人が首にかけるという状況下でアスリートへの敬意や称賛、また、感染予防への配慮が感じられず、大変残念に思う」としています。

そのうえで、「河村市長には責任あるリーダーとしての行動を切に願う」としています。

批判 4000件余に

名古屋市によりますと、市の広聴課には、河村市長の行為を批判する電話やメールなどが5日午後5時半までに4000件余り寄せられたということです。

河村市長「極めて不適切な行為で猛省」

河村市長は市役所で記者団の取材に応じ「金メダルは憧れで、愛情表現のつもりだったが、長年の努力の結晶である金メダルを汚す行為に及んだことは、名古屋市長としての立場をわきまえない極めて不適切な行為で猛省すべきと痛感している。本人や関係者に心からおわび申し上げる」と陳謝しました。

また、記者団から、今回の行為がセクハラやパワハラにあたるとの認識はなかったのかと質問されると「ハラスメント、いわゆる嫌がらせの認識は全くなかったが、配慮すべきだったと思っている」と述べました。

さらに、河村市長は5日昼すぎ、JOC=日本オリンピック委員会の山下泰裕会長にも、電話で謝罪したことを明らかにしました。

【8月10日】

愛知 大村知事「メダル再発行を」

大村知事は記者会見で「大変残念な事案だ。後藤選手にどう謝罪するのか、河村氏はしっかりと対応してけじめをつけてほしい」と述べました。

そのうえで「可能であればメダルを再発行してほしい。前例はないとは聞いているが、関係者とも話し合っていきたい。自分としても話していきたい」と述べました。

聖火の採火イベント欠席へ

名古屋市には10日までに少なくとも7200件余りの苦情などが寄せられたということです。

こうした中、名古屋市は、今月15日に市が開催する東京パラリンピックの聖火の採火イベントを、河村市長が欠席すると発表しました。

欠席の理由について、市は河村市長がメダルをかんだことなどに多くの苦情や意見が寄せられていることを考慮したと説明していて、イベントには副市長が代理で出席するということです。

また、名古屋市は、同じ日の夜に県庁で行われる県内の聖火を集める式典についても、河村市長に代わって名古屋市障害者団体連絡会の橋井正喜会長が、市の代表として出席すると発表しました。

これについて名古屋市は、パラリンピックの性格上、橋井会長が地域の代表としてふさわしいと判断したと説明しています。

金メダル 新たなものに交換へ

関係者によりますと、こうした状況を受けてIOC=国際オリンピック委員会やJOC=日本オリンピック委員会、それに東京大会の組織委員会などの関係機関が調整した結果、後藤投手の金メダルを新たなものに交換することになったということです。

後藤投手も交換について了承しているということで、今後、必要な手続きを経て交換が行われることになります。

【8月12日】

河村市長 「お金は個人で出したい」

河村市長は12日、記者団の取材に応じ「ゴールドメダリストの宝物を傷つけたのは誠に申し訳ない」と改めて謝罪し「交換などの対応については、どうしてくれと言える立場ではなく、JOC=日本オリンピック委員会の山下会長に任せているとしかいいようがない」と述べました。

そのうえで「お金については、個人で出させていただきたい」と述べ、メダルを交換する際には、必要な費用を個人で負担したいという考えを示しました。

【8月16日】

給与3か月分返上へ

市によりますと、こうした行為や発言について、今月13日までに1万3600件余りにのぼる批判の声が、メールや電話などで寄せられたということです。

この問題について河村市長は16日の定例会見で「後藤投手の宝物の金メダルをかんだ行為、傷つける発言をしてしまい本当に情けない気持ちでいっぱいです。大変申し訳ありませんでした。そして名古屋市民、国民の皆さんに大変不快な思いをさせて申し訳ありませんでした」と改めて謝罪しました。

また、今月13日にハラスメントに関する講習を受けたことを明らかにし「自分が周りを盛り上げようとやってきたことが、ハラスメントに該当することがわかった。自分が間違っていたと思うに至った」と述べました。

そのうえで河村市長はみずからの給与3か月分、合わせて150万円を返上する考えを示しました。

市長は、市議会に必要な条例案を提出したいとしています。