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いのちと暮らしを守るために ~津波被害の実態と課題~

  • 2024年01月24日

元日に起きた能登地方を震源とする巨大地震。
新潟県でも最大震度6弱を観測し、わたしたちの暮らしに大きな影響が出ました。
今回の地震で浮き彫りとなったもうひとつの課題が津波です。
今回、上越市を襲った津波被害の実態とは?
津波が押し寄せた際に、私たちはどのように避難すればよいのでしょうか?

上越市の関川河口周辺では津波をかぶった家も

強い揺れからおよそ20分。
上越市を流れる関川に津波が押し寄せました。

(映像提供:国土交通省)
(映像提供:国土交通省)

河口から約500m。
川の前に住む長谷川貞年さんの家は、津波が堤防を越えて波をかぶりました。
地震発生当時、家の中にいた長谷川さんは揺れを感じた後、外に出ると遠くから津波がくることに気づいたそうです。

長谷川貞年さん
長谷川さん

水平線がぐーっと上がっているのが見えたので、津波がくるとわかり動転してしまった。
思ったよりも津波が早くきたなと感じた。

当時の状況をこのように振り返ります。
長谷川さんは、足下に津波が流れ込む中でなんとか車に乗り込み、避難することができました。

津波が早くきたメカニズム

津波のメカニズムを専門とする長岡技術科学大学の犬飼直之准教授は、最新の研究で、早い所(糸魚川沿岸域)では地震発生から10分以内に第一波が到達したといいます。
なぜ、こんなにも早く津波が押し寄せたのでしょうか。
犬飼准教授は海底の地形が関係しているといいます。

犬飼准教授
犬飼准教授

今回の地震の発生域は水深が深いということがあります。
水深が深いと津波は進行速度が速くなるという特性があります。

下の図は今回の震源となった能登地方から上越市にかけての海底地形を表したものです。
浅い部分は赤。
深い所は青や緑で示されています。

資料提供:長岡技術科学大学犬飼直之准教授
犬飼准教授

津波は水深10mの場所では時速40Kmほど水深が1000mになると時速350Kmで伝わることがわかっています。
今回津波が到達した地域に進行していく間に深い地形が続いている。
そのため、津波が早いまま陸地に近づいてきた。

新潟県は津波が早く来る

犬飼直之准教授は深い海底地形が近くにある上越市や糸魚川市以外でも津波が早く来る可能性があると警鐘を鳴らします。
こちらは国土交通省のホームページで公開されている津波を引き起こす可能性がある断層の位置を示した図です。
赤い線が断層です。

日本海における大地震に関する調査検討会より
(NHKサイトから離れます)

新潟県の沿岸には、津波の要因となる断層が陸から近い距離に多数あることがわかります。
そのため、新潟県全域で津波が早く到達する可能性があるといいます。

住民全員が速やかに安全を確保した地域の取り組み

今回の地震で、住民全員が速やかに安全を確保した地区があります。
27世帯78人が住む虫生岩戸地区です。

町内会長の佐内昭一さん

町内会長の佐内昭一さんは、地震発生後、近所の人に声をかけながら一時避難場所である道路へ避難。
その後、住民全員の安全確認を行いました。
この地区では、78人の住民を4グループに分け、リーダーを中心に安否を確認する体制にしています。

各ブロックでは住民たちも手分けをして電話を掛け合う
ブロックの全住民の安全が確認できたら、各リーダーが会長に報告

このような連絡体制を用意しておくことで、住民全員の安全を短時間で確認できるよう努めています。
また、この地区ではほぼ毎年防災訓練を実施。
より多くの住民が自然と参加する流れになるように、納涼会に合わせて開催しています。
日頃のコミュニケーションによって、緊急時の連絡体制がうまく機能していました。

虫生岩戸地区に学ぶ、避難の際に大切な3つのポイント

防災や減災に詳しい新潟大学の卜部厚志教授は、虫生岩戸地区の避難例を見て、以下の3つのポイントが大切だといいます。

  1. 生存避難が大原則
    決められた避難所でなくても、生き残るために少しでも高い所へ避難することが大切!
  2. リーダーを中心に小規模なグループに
    同じマンションのフロアの人や隣近所など小さいグループ単位で行動をすると安全の確認がしやすい。
  3. 身近なイベントとセットで防災を
    防災訓練と行事をセットで行うことで、防災訓練だけでは関心を示さない子どもにも防災の知識を伝えるきっかけを作ることができる。

新潟で想定される地震被害

新潟県では2年前に地震被害想定調査をまとめて公表をしています。

調査では県内で発生するおそれのある9つの大きな地震について被害を試算しています。
この中で最も深刻なケースとして想定されているのは新潟市の沖合から小千谷市にかけて、83kmにわたって伸びている断層帯が引き起こすものです。
(長岡平野西縁断層帯)地震の規模は今回の能登半島地震を上回るマグニチュード8程度と想定され、7920人が死亡、建物の全壊が17万棟余り、避難者は47万人上としています。

新潟県の地震・津波被害想定については、詳しくは以下のリンクからも確認できます。

いのちを守るために

私たちはどのように災害と向き合っていけばいいのでしょうか。
卜部教授は日頃の備えがあらためて大切だといいます。

卜部教授

やはり、命を守っていくんだということを普段から考えておくことがすごく重要で実践していただきたいと思います。
考えておかないと行動はできませんので年に1回でも、これを機に、やっぱりこういう行動がいいとか、やったら失敗したということを、考えておいて大きな地震災害に備えることがすごく重要だと思います。

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