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ことしにかける 県央基幹病院 遠藤直人院長

24時間”断らない救急医療”目指す
  • 2024年01月12日

 

ことし飛躍が期待される新潟県ゆかりの人に1年間の抱負などを聞くシリーズ「ことしにかける」。2回目は、2024年3月、三条市に開院する「済生会新潟県央基幹病院」の院長に就任する遠藤直人さんです。県央基幹病院を中心とした医療再編で地域の医療をどう支えていくのか。目指す医療や、ことしの抱負について聞きました。(新潟放送局 記者 藤井凱大)

地域の人口約22万 5つの病院が再編して誕生 

県央基幹病院は▼厚生連三条総合病院と▼県立燕労災病院が統合。
このほか▽県立吉田病院▽県立加茂病院▽済生会三条病院の救急医療など「急性期」の機能を集約するなど5つの病院が絡む医療再編で誕生します。

その背景には県央地域が抱えていた課題があります。
新潟県の県央地域は、三条市や燕市、加茂市など5つの市町村からなる地域で人口はおよそ22万人。しかし中小規模の病院しかなく年間8000台近い救急搬送のうち20%以上が圏域外に搬送されていました。

燕労災病院の院長を務める遠藤直人さん。
ことし3月1日「済生会新潟県央基幹病院」の開院にあわせて初代院長に就任する予定です。

遠藤さん
県央地域の医療のひっ迫を何とかしたい、何とかすることに少しでもお役に立てばという思い。

加茂市出身の遠藤さん。これまで新潟大学で整形外科の教授などを務めてきました。県央基幹病院の院長になることには周囲から反対の声もあったといいますが、地元の医療を立て直したいと就任を決めました。

遠藤さん
いまさらもう難しい地域じゃないかっていう話もあって、ほとんどの方が友人も含めてほとんどの方からは反対されました。ですから不安は非常に大きいところで、いまも不安がないわけじゃありませんけども。この機会を逃せば、もうこの地域やはり医療がますます悪くなってしまうってことは、もう目に見えてましたので。それであれば少しでもという思いでお受けしたというところです。

今回の医療再編で遠藤院長らが目指すのは、地域が抱えてきた医療課題の解決。救急患者を地域で受け止めたり、高度な専門医療を提供したりできる体制を築いていこうとしています。

救急の鍵となるのが24時間どんな症状の患者も断らない救急「ER救急」です。
心臓血管外科など一部のより高度な医療が必要なものをのぞき、年間6000台の救急車に対応し、地域で救急医療を受け止めていく計画です。

遠藤さん
県央地域の中における病院全体でまさにスクラムを組んで、タッグを組んで対応していこうと。この県央地域から発生する医療、救急の95%ぐらいはここで受けようということを目指すものです。あと専門医療についても各専門科の先生方もおられますので、専門の医療により専念できるような環境になるのではないかというふうに思っております。

変わる医療 完全紹介予約制へ

一方、今回の再編で住民が受けてきた医療は大きく変わります。

▼県央基幹病院の外来は、これまでこの地域の病院にはなかった完全紹介予約制になります。
また▼夜間休日の救急は近くの病院ではなく県央基幹病院が引き受け、症状が落ち着いた患者は別の病院に移ってもらうことが求められます。

2023年12月に開かれた住民説明会でも不安の声が上がりました。

参加者
(統合される燕労災病院などで対応していた)新潟市西蒲区からの救急車の受け入れ体制については変更するところはないのでしょうか。

遠藤さん
私たちは救急を受け入れる病院ですので必要があれば受けさせてもらう。

参加者
(今まで通っていた)県立吉田病院で全部診られるようになるのかどうなのか。

県立吉田病院 中村院長
具体的に疾患を聞かないと分からないが、それによって対応できる科もあるし対応が難しいときは県央基幹病院を紹介するかもしれない。

遠藤さんは、地域全体で患者を診ることが結果的によりよい医療の提供につながると開院してからも引き続き理解を求めていきたいとしています。

遠藤さん
場所も変わりますので少し距離が遠くなるとお思いの方も当然いらっしゃると思いますので、そういった不安や周りの不満もあろうかというふうに思います。この医療再編が目指す、安心で安全な医療を受けられるようにということ。その目標をまず理解していただく。

若手の成長にも期待

病院の準備は着々と進んでいます。医師は研修医も含んでおよそ70人、看護師もおよそ430人が集まりました。懸念されていた開院に必要なスタッフも確保できました。

そしてこのなかには新しい動きも。これまで県央地域を選んでこなかった若い世代の医師や看護師も集まってきているのです。

医師
(県央基幹病院では)症例数としても、かなり過不足なく診ることができて、医師としての経験も積めるのではないかと。

看護師
いろんな経験ができたりとか、看護に携われることが多くなったりすると思うので、それは私たちにとってもすごく勉強になるし、貴重な経験だと思っています。

遠藤さんは県央地域で若い世代が育ち、全国にはばたいていく。
そうした新しい循環もつくっていきたいとしています。

最後に、遠藤さんに開院に向けた抱負を聞きました。

遠藤さん
医療はやっぱり、あの病院に行って良かった。いい医療が受けられた。この病院ができてよかったと思ってもらえることですから。準備を周到にして円滑に移転をして3月1日開院にこぎつけたい。そしてそれによって新しい病院での診療を開始し、住民の方々に安心で安全な医療を提供できるようにしていきたい。そしてさらにその次を目指して次なるステップを目指して一歩一歩進めるような、そういった1年にしたいと思っています。

  • 藤井凱大

    新潟放送局 記者

    藤井凱大

    2017年入局。函館放送局、札幌放送局を経て、2022年夏に新潟放送局に赴任。現在、医療や経済、農林水産などの取材を担当。

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