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いのちと暮らしを守るために ~液状化被害の実態と課題~

  • 2024年01月24日

元日に起きた能登地方を震源とする巨大地震。
新潟県でも最大震度6弱を観測し、わたしたちの暮らしに大きな影響が出ました。
今回の地震で浮き彫りとなった課題のひとつが液状化です。
平穏な暮らしが突然奪われたとき、どうすれば良いのか?
また、今後にどう備えれば良いのでしょうか? 

県内で最も液状化の被害が大きかった新潟市西区

新潟市西区では、60カ所以上で液状化が確認され、道路の亀裂や陥没、大きく傾いた家など液状化による被害が相次ぎました。
吹き出た土砂の撤去には、今もボランティアの協力も得ながら復旧作業が進められています。
(1月中旬時点)

液状化によって隆起した道路

平穏な暮らしが突然

平穏な暮らしを突然奪われた人もいます。
石黒忠雄さんです。
幼いころから住み慣れた自宅は液状化により亀裂が入り、玄関の扉は外れて直すことができなくなりました。

家が傾く被害にあった石黒忠雄さん
玄関に入った大きな亀裂 家の中は1度ほど傾いていた

床が傾く中での生活は、心と体に大きな負担がかかるといいます。

石黒さん

傾いている方に引っ張られる感じ。
歩いているとまだ揺れている感じがしたり・・・めまいがする

自宅の裏では、隣の家の土台が崩れかけていました。
石黒さんは今後のことを考えて新たな住居に引っ越しを決めました。

大きく崩れかけた隣家の擁壁 雨や雪の重みで崩れないか心配だという
石黒さん

ゆったり休めるところがないし、体がやすまることがない。
地震がもう一回きたらやられてしまう。
それでは遅すぎる。

専門家によって明らかに 被害拡大の要因 

なぜ西区に被害が集中したのか。
新潟大学災害復興科学研究所の卜部厚志教授らのチームが現地調査に入りました。
卜部さんは調査を経て、二つの要因があると語りました

まず、注目したのは地質です。
液状化は地震の揺れによって、地盤の一部が液体の状況に変化します。
水分を多く含み、液状化しやすい砂の層の上に乾いた層が厚く乗っていれば、地震が起こっても液状化はしにくくなります。
しかし、被害が多く起きていた地域の周辺では、乾いた砂の層が薄いため広い範囲で液状化が引き起こされたと卜部教授は分析しています。

さらに、被害を拡大させた要因は独特の「地形」にあるといいます。
液状化による地滑りのイメージ図です。
この地域は日本海に向かってゆるやかなのぼり坂になっています。
地震によってそのすそのが液状化したことで、斜面の重みを支えきれなくなり、小さな「地滑り」が発生したと指摘します。
こうした地質や地形は日本海側に特徴的だといいます。

「液状化マップ」から見る被害の特徴と県内に潜むリスク

今回の地震で液状化の繰り返される怖さも浮き彫りになりました。
卜部教授は液状化のしやすさを示した「液状化マップ」を参照した上で、今回被害が大きかった場所は1964年の新潟地震でも液状化が起こっていたと指摘。
新潟市以外でも大きな揺れがあった場合のリスクに警鐘を鳴らします。

液状化しやすさマップ 濃い赤の部分は特に液状化がしやすい場所を示している

県内各地域の「液状化しやすさマップ」は下記のリンクからも確認できます。
自分の住んでいる地域についてよく知ることも、今後への対策の第一歩になります。

新潟県内の液状化しやすさマップ(国土交通省北陸地方整備局) 
※NHKサイトを離れます

日常を取り戻すために 生活再建にむけて重要なこと

卜部教授は、長年にわたって防災や減災の観点から住民や自治体に提言も行ってきました。
今後に向けては長期的な視点を持った支援と対策が必要だといいます。

卜部教授

被災者は『これからどうやって生活を戻すのか?』と不安になる時期なので、行政がどんな支援策があるのかをスケジュールとともに提示することが非常に重要。
個人では今回被災されたところを復旧されるときには、地盤改良が絶対必要でやって頂きたいです。
ただ被害の全体程度によっては、当面は床の傾きだけを直して生活するということも可能です。

また、再発防止に必要な地盤改良にあたっては多額のお金がかかる場合もあるため、行政や国の補助などの必要性も訴えます。

卜部教授

行政主導で、町やブロックの単位で「液状化をしない町にするんだ」ということでできるだけ個人の費用の負担がないように対策を行った他県の事例もある。
住宅や建物は個人の持ち物なのでどのように公的な支援を入れていくかは今後の検討事項だと思うが、対策が進まなければ街のある一角が何もなくなってしまうということが起こる可能性もある。
地域のコミュニティを維持していためには行政の支援や国の施策も使いながら、元どおりにしていくということが重要だと思う。

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