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増えるいじめや不登校 子どもを守るには

新潟 小中学校でアンケート データに基づき指導を
  • 2023年12月19日

 

2022年度、新潟県内の小中学校で30日以上欠席した不登校の児童・生徒は4759人で7年連続で過去最多となりました。全国的にもいじめの認知件数や不登校の子どもの数は増えていて教育現場の差し迫った課題になっています。国は緊急対策を打ち出し、端末を利用してアプリなどで「心の健康観察」を行う方針が示されています。子どもたちを守るために何が必要なのか。県内で始まっている取り組みを取材しました。(新潟放送局 記者 油布彩那)

子どものSOS早期発見へ 端末でアンケート

 

十日町市の中学校の教室で、端末に向き合う生徒たち。回答しているのは自身の生活に関するアンケートです。県内でも不登校の子どもが年々増えるなか、悩みの早期発見につなげようと端末を利用したアンケートが今年度から試験的に行われています。

アンケートでは心身の状態や自己肯定感それに相談相手などをたずねます。
端末を使うことで紙に記入する際の音や、回収の際に回答を見られるのではといった生徒の不安も解消できるといいます。

データもとに”エビデンス”に基づいた指導を

 

アンケートをつくったのは、不登校やいじめの問題に詳しい上越教育大学大学院の高橋知己教授です。2023年度、県教育委員会などと連携して県内およそ30の小中学校で、4500人を対象にアンケートを行っています。

教授らはアンケート結果を分析して各学校を訪問。データからわかるその学校の現状をもとに、子どもへの指導について教員にアドバイスを行っています。高橋教授は、教員不足も課題となるなかで肌感覚だけの生徒指導に頼らず、データに基づいた指導が必要だと考えています。

 

高橋教授
生徒指導としての教師の指導の仕方というのは、これまで肌感覚、経験というかたちで語られることが多かったんじゃないかなと。それは決して間違ってると言うわけではなく、先生たちの経験にエビデンス(客観的根拠)が加わることによって、より適切な指導をピンポイントですることが可能になるんではないか。

データからわかることとは?

それでは、アンケートからはどのようなデータが得られるのでしょうか?

例えば自己肯定感についての質問では「小学生は高い一方で、中学生は低く」、「特に女子中学生で低い」ことがわかりました。高橋教授はこうしたデータを現場の教員と共有し指導の際に意識するよう助言しています。

高橋教授
自己肯定感を持つことで自分自身に自信が持てたり、それが友達を助ける方向に向かったりするということも考えられますので。女子生徒の自己肯定感を上げるためにはどうすればいいかということは(学校の先生たちと)一緒に考えないといけないことの1つ。先生たちの声がけ、アプローチしていただくとか場面を捉えた適切なご指導をお願いしますと。

また悩みをだれに相談するかという質問では「小学生と中学生の女子は母親」、「中学生の男子では父親の存在が大きい」ことがわかりました。高橋教授は学校でも子どもたちが自分にあった相談相手を見つけられるようアドバイスしています。

高橋教授
先生たちには、いろんな生徒にいろんな先生が話しかけてくださいと。その中で子どもたちが自分が話しやすい相手を見つけるんじゃないか。

みんなで守るため 主体性を引き出す

さらに、高橋教授が重視しているのが子どもの主体性です。

高橋教授は県の事業の一環としてみずから、いじめについて考える授業を行いました。

高橋教授
あなた方の考えを聞きたいです。いじめを発見しにくい理由として「とてもそうだな」と思ったものに10点、「全くそう思わない」ものに1点。自分の考えでいいので得点をつけてください。

 

授業ではいじめの原因やいじめが見つかりにくい理由について、生徒たちに考えさせます。

生徒
(いじめは)見えないところで起きてる。こっちもあれだよね、ばれないようにするとか仲良しをよそおうとか。

高橋教授は子どもたちがみずから考えて行動し、自分や周りの友達をみんなで守る雰囲気をつくることが重要だと話します。

高橋教授
子どもたち自身が自分たちで自分たちの友達を、そして自分を守ろうという機運をどう高めていくかということにこれからはシフトして行くというか。自分たちが友達のために何かができるということをみんなが感じる、考える、そういうチャンスが重要だと思います。

学校だけに頼らない連携を

急速な少子化やSNSの普及など子どもたちを取り巻く環境が大きく変化するなか、学校現場に求められる役割は年々複雑になっています。高橋教授は、地域や家庭が、専門家の知見も生かしながら学校と連携することが必要だと考えています。

高橋教授
学習指導要領が設定されて、全国津々浦々「最低限ここまで学校で教えよう」というのをどう指導するかということに先生たちは頭を悩ませてきたんですが、いまはそれに加えて、多様な社会の中にいる子どもたちをどう守ろうかということに先生たちは腐心しています。学校という単独なシステムで全部クリアするということはなかなか難しいので、家庭や地域社会、大学の人間が協力・連携して学校教育をより良い方向に向けていく必要があります。

地域の実情にあった対応を

地域や家庭、学校が連携するうえで高橋教授が重要とするのがニーズの把握です。子どもたちや周囲の人が「何に苦しみ、どんな支援を求めているのか」。地域の実情にあった対応をすることが必要だとしています。
国は必要な経費を支援するなどして、不登校の子どもたちに合わせたカリキュラムで学ぶことができるいわゆる「不登校特例校」の設置を促していますが県内にはまだありません。高橋教授は不登校の児童や生徒の実態を調査するアンケートを実施し、新潟県内でどのようなニーズがあるのか把握することにしています。

  • 油布彩那

    新潟放送局 記者

    油布彩那

    2019年入局
    新潟生活5年目。
    行政や拉致問題の取材を担当。

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