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ペット防災最前線 日頃の“しつけ”で災害時の“怖さ”を克服

ちょこっと防災そなえドキ NHKニュース・防災
  • 2024年03月22日

新潟ニュース610で毎週放送している「ちょこっと防災そなえドキ」。今回は「ペット防災」がテーマです。新潟県中越地震や東日本大震災などの被災地で災害時に必要なペットのしつけや防災に関する活動を続けている南魚沼市のドッグトレーナー清水美森(しみず・みもり)さんに、ペット防災の意義や日頃の備えについてインタビューしました。(動画5分35秒)

ペット防災 なぜ必要?第2の犬生を与えるために

狩野アナ

今回の取材ではペットと行うさまざまな訓練を体験させていただきましたが、なぜこのような訓練を行っているんでしょうか。 

清水さん

かつて中越地震を体験して恐怖に陥った犬が飼い主や近所の人にかみついてしまって保健所に収容されたことがありました。 私はその少し前にドッグトレーニングを学びにアメリカに留学していました。私がいた州では保健所に収容されても必ず訓練を入れて新しい「第2の生」を犬に与えるというのが決まっていて日本でもそれを取り入れたいという気持ちで帰国しました。帰国後すぐに保健所の方に相談したら「地震で凶暴になった犬がいるのでトレーニングをやってみないか」というお話をいただいて、実際にその犬をお預かりして1か月訓練をしたらとてもいい子になって飼い主さんのところに戻っていったという経験があるんですね。災害が起きると犬でもPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えることがあってそのあと凶暴になったとか病気になってしまったとか、そういうことを中越地震以降もすごく耳にしました。状況を改善するためには事前に訓練することが大切だと経験を通して少しずつ分かってきたので今のように全国を回ってトレーニングをするようになりました。

狩野アナ

全国を回られている中でペット防災の現状を清水さんはどう見ていますか。 

清水さん

実際に避難所に行くとペットと人間が一緒に生活できるかというと、まだそういう状況にはなっていません。ペットはペットで分けられていたり、ここはペットはお断りという避難所がまだたくさんあったりします。海外の災害映像を見ていると避難所に犬がいたりヤギや馬まで一緒にいたりしますが、海外は日頃から動物へのしつけをすごくしているんですね。日本の場合は、ワンワンほえるとか、トイレの問題とか、アレルギーのある人がいるとか、そういうことでトラブルになることが多いです。この先海外のように飼う人と飼わない人が共存していくためには飼う側が日頃から「ペットをしつける」という意識を強く持つこと、そして少しずつお互いが歩み寄っていくことが必要だと思っています。

狩野アナ

日頃の備えという点では、どういうことに取り組んでいけばいいでしょうか。 

清水さん

ただただかわいいと言って飼うのではなくて日頃から様々なことを体験させてあげることが大切です。例えば音。ピーポーピーポーという音が聞こえたらわざと外に出して飼っている犬や猫に聞かせて見せてあげると良いです。

狩野アナ

わざと聞かせるんですか?

清水さん

はい。体験させることで「この音は怖くない」と犬や猫はみんな理解していくので、1つ克服するんですね。 音だけではありません。例えば鉄の板やプラスチックのものにわざと触らせるなどさまざまなことが普段の生活の中でできると思うので、散歩の時にぜひ試してみてもらいたいと思います。日頃から体験させておくことでペットたちの災害時の反応が大きく変わってきます。 

狩野アナ

ペット防災について今後どのようなことをしていきたいと思っていますか。 

清水さん

日本の避難所がペットと一緒に安心して生活できる場所になるように働きかけることを講演会などを通じて続けていきたいですね。皆さんの意識次第で変わっていくと思いますので。 行政の方にも日本の現状をもっと知っていただけるように活動を続けていきたいと思います。

狩野アナ

清水さんがペット防災で大切にしていることは何でしょうか。 

清水さん

飼い主さんとペットが共に学び、万が一に備えることですね。

狩野アナ

共に学ぶ。それしかない?

清水さん

それしかないですね。あと一つ挙げるならば「飼い主さんが不安にならない」ということです。動物は飼い主さんの心を察知するので、飼い主さんが驚いたりおびえたりしてしまうと犬や猫たちにもみんな伝わってしまいます。飼い主さんはできるだけ「大丈夫だから」という気持ちを持って避難することに挑んでいただきたいです。

狩野アナ

飼い主側の心構えも大切だということですね。 ありがとうございました。

清水さん

こちらこそありがとうございました。 

ペット同行避難 新潟県の現状は?

環境省はガイドラインを策定し、人とペットが一緒に避難することを推奨しています。
新潟県では「同行避難」の受け入れが可能な避難所の選定について県内30市町村にアンケート調査を行っています。令和5年9月22日時点で、半数近くの14市町村で「同行避難」の受け入れが可能な避難所の選定が済んでいるほか、残りの市町村についても検討作業を進めている、またはこれから検討を始めるということです。これについて県福祉保健部生活衛生課の小黒啓史係長は「今後さらに同行避難の受け入れが可能な避難所の選定作業が進むことが期待される」と話しています。新潟県ではおととし4月に「ペット同行避難所運営マニュアル」を作成し、日頃からの準備や災害時の対応について解説しています。

一方で、避難所は人とペットの場所をはっきり分けることが基本になっています。場所によってはペットの受け入れが難しい避難所もあるため、飼い主は普段から家族やペットホテル、動物病院など避難先を複数想定しておくことが大切です。

このほかにもNHK新潟放送局の「防災・減災」の記事で、ペットとの避難に必要な防災グッズ、ペットと行う避難訓練、災害訓練について紹介しています。

防災士狩野アナの記事はこちら

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  • 狩野史長

    新潟放送局 アナウンサー

    狩野史長

    青森、長崎、鳥取、大阪を経て現在は新潟放送局で「新潟ニュース610」や「金よう夜きらっと新潟」のキャスターを担当。2019年防災士の資格取得。東日本大震災や熊本地震、鳥取県中部地震、大阪府北部地震、西日本豪雨、東日本台風などの現地取材多数。「ちょこっと防災そなえドキ」をプロデュース。

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