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どこでも等しく学ぶ機会を 新潟県の試み

進む高校の小規模化 教育の質どう維持する
  • 2023年11月16日

 

新潟県で急速に進む少子化。その影響は子どもたちの学ぶ環境にもおよんでいます。教員の数が限られる小規模校で教育の質の維持が課題になっているのです。県内では、この先15年間で中学校を卒業する子どもの数は7000人、率にして4割ほど減る見込みで小規模校がさらに増えることが懸念されています。こうしたなか課題解決のために始まったのは「遠隔授業」です。県立高校の教育環境のいまを取材しました。(新潟放送局 記者 油布彩那)

中学卒業生は今後約4割減 増える小規模校

42年連続で15歳未満の子どもの数が減っている新潟県。
急速な少子化の影響は、県立高校の教育環境にも及んでいます。
来年度の県立高校の募集学級数は1校あたり平均で3点8あまりで1学年に4クラスない学校が多く、県が適正な規模だとする1学年4から8クラスを下回っています。

さらに県内の中学校の卒業生はこの先15年で7000人、率にして4割近く減る見込みです。
小規模校が増えることが懸念され、教育の質の維持が課題になっています。

課題解決へ 動き始めた「遠隔授業」

小規模校の課題を解決するため活用されているのが「遠隔授業」。
導入している学校の1つが阿賀町にある、阿賀黎明高校です。

書道の授業で生徒が作品を見せるのは教壇に立つ教諭ではなく、モニター越しの教諭です。
およそ50キロ離れた場所から遠隔で授業が行われていました。
 

高校がある阿賀町は福島との県境、雪深い地域に広がっています。
去年生まれた子どもはわずか20人で町の人口は、この40年ほどでおよそ半分にまで減少しました。

現在、阿賀黎明高校は1学年1クラスで全校生徒は46人。
県が適正とする1学年4から8クラスを大きく下回る小規模校ですが地域の子どもたちにとってはなくてはならない学校です。

小規模校の課題「教員数」と「専門性」

阿賀黎明高校でもほかの小規模校と同じように、
教員の少なさと授業の専門性の確保が課題になっています。

教員の数は学校の規模に応じて決められているため、
小規模校ではすべての科目に専門の教員を配置できないことがあります。

阿賀黎明高校でも理科の全科目に教員を配置することができず、
生物の授業は他の科目を専門とする教諭が担当しています。
 

こうした遠隔授業。
新潟県は文部科学省の委託を受け、県内の高校で遠隔授業の実証研究を2年前から始めました。
阿賀黎明高校では現在、年間を通して3教科4科目で遠隔授業が行われています。

 

そのうち「化学基礎」の授業は新潟市西区にある高校から配信。
通信制課程の教諭が、阿賀黎明高校の遠隔授業も兼務しています。

手元にあるスイッチでカメラを切り替え、教科書や自分のタブレットの画面を生徒側のモニターに映し出します。

生徒たちの様子は教室に置かれたカメラで確認します。

離れた高校の生徒とも交流

遠隔授業ならではの試みもあります。
「化学基礎」は佐渡市の羽茂高校の生徒も合同で授業を受けています。

互いに実験の様子を配信したり、相談したりしながら授業を進めます。

阿賀黎明高校の生徒
離れた人と大人数でわいわい授業できるのは楽しいし先生の授業もタブレットで配信されて、
見てというのも、とてもやりやすいです。

受信側には事務職員などの支援員 

遠隔授業に欠かせないのが、授業をサポートをするために生徒側に配置される支援員です。
授業を配信する教諭に生徒の様子をリアルタイムで送ったり教諭の指示を受けて準備をしたりして、
授業の補助をしています。

こうした支援員は、国の現行の制度では教員免許を持った人でなければなりません。一方、そもそも教員が不足しているうえ、他の授業のサポートに入ることは教員にとって負担もあります。そのため県は実証研究での特例として学校の事務職員などを支援員として配置する試みを進めています。

しかし、支援員には教員ではないことによる難しさもあるといいます。

支援員を務める事務職員
詳しい知識がないので、私1人その場にいて(実験などで)もし何か危険なことが起きた時に、1人ではとても対処できない。

配信側に負担や課題 現場からは肯定的な意見が

配信する側の教諭にとっても通常の業務に遠隔授業の準備が加わることによる負担感があるほか、
対面の授業とは異なり、生徒の表情が見えづらいという難しさもあります。

 

一方、授業を受ける生徒などからは肯定的な意見が聞かれました。

生徒 
遠隔授業は中学のときはなかったので「話せるかな」「わかるかな」「聞き取れるかな」とかあったけど、実際にやってみたら聞き取りやすくて意外とスムーズにやれるので問題ないですね。

生徒 
書道が選べたのは嬉しかったですね。
離れてやっているけれど質問しやすい、やりやすいですね

阿賀黎明高校 伊藤大助校長
授業の質や専門性を維持していくうえで非常に有効だなと思いますし、本校の教員にとっても複数の科目を担当しないといけないなかで負担軽減にもつながっていると思います。

県は授業配信の拠点化検討

新潟県は小規模校が増える中でも生徒たちの教育の機会を確保するため、授業を配信する拠点を設けたり、支援員の適切な配置や授業をする教諭の負担を減らしたりして遠隔授業を広げたいとしています。

県では遠隔授業で事務職員などが対応可能な範囲について国に示すとともに、来年度からは魚沼地域の学校でも遠隔授業を行うことにしています。

県教育委員会 佐野哲郎教育長
遠隔授業に補完的な役割を持たせながらやっていくことが必要かなと思います。そんな遠い将来ではなくて2、3年やるなかで県全体としては遠隔授業をするセンターを作った上で、そこから高校に配信できるような、遠隔授業をする専任の先生を配置してというようなやり方を今後は検討していきたい。

  • 油布彩那

    新潟放送局 記者

    油布彩那

    令和元年入局
    新潟生活5年目。
    行政や拉致問題の取材を担当。

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