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気候変動に対して 私たちができる5つのこと

人類が観測史上最も暑い夏に直面した2023年。世界各地では異変が相次ぎました。

深刻な干ばつによる水不足で、住まいを追われるアフリカの人々。ギリシャやカナダなど世界各地を襲った大規模な森林火災。気候変動とみられる影響が各地で確認されています。実は世界で起きていることはわたしたちの暮らしにも大きく関係しています。日本を始めとした先進国は経済発展に伴い、温室効果ガスを大量に排出。その影響は発展途上国の人々にも将来のわたしたち自身にも危機をもたらしていきます。

地球温暖化を少しでも食い止めるために、私たちには何ができるのでしょうか?東京大学未来ビジョン研究センター教授で、国立環境研究所の上級主席研究員である江守正多さんに聞きました。5つのポイントから考えます。

1) 正しい情報を集める 

江守さんがあげたのがまず、「知ること」です。

この夏、日本の平均気温は気象庁が統計を取り始めてからの125年間で最も高くなり、気象庁は「異常気象」と指摘しています。地球温暖化が進めば、熱波や豪雨、干ばつといった「極端現象」の頻度や強さが増すとされています。

科学的に地球温暖化の原因は、主に人間活動で排出された温室効果ガスによるものだと断定されています。

世界各国ではこれを食い止めるため、気温上昇を「1.5℃」までに抑えるよう努力することで合意していますが、このままでは2030年代の初頭までに平均気温の上昇は1.5℃に達する可能性があると考えられています。

そうした事実を踏まえれば、気候変動の懐疑論は科学的に否定できると、江守さんは強調します。

東京大学 未来ビジョン研究センター教授 江守正多さん

「温室効果ガスを排出し続ければ、今後も温暖化が続くことは間違いありません。インターネットやSNSで『地球温暖化はうそ』、『氷河期がくる』、『気候変動対策をしても意味がない』といった説を目にすることがあるかもしれません。


しかし、その多くは気候変動対策を遅らせたい動機を持つ人たちが、科学的な根拠に基づかない形や、科学的な知見を偏って参照する形で発信しているものです。


さらに、『意識が高い人たちに上から目線で言われている』と感じて反発したくなる人たちなども同調してしまいがちです。


人間活動の影響で地球が温暖化していることは科学的に証明されているので、そういった説はひとつひとつ否定することができます」

近頃では、環境問題に取り組む専門家たちがオンラインで勉強会などを行っているので、そういったものに参加するのもいいかもしれません。いま何が起きているかが分かります。

また、ニュースで「気候変動」のテーマをフォローしていれば、日本のニュースだけでなく、世界のニュースも入手できるといいます。

2)声をあげると世界が変わる

「自分ひとりで何ができるの?」と思っている人もいるかもしれません。

江守さんは、一人ひとりがあげた声が社会のシステムを変えた出来事を教えてくれました。

江守さん

「例えば、2022年6月に成立した『改正建築物省エネ法』です。2025年度以降、すべての新築の建物に断熱性能などの省エネ基準を満たすことを義務づける改正内容を盛り込んだ法律ですが、実はこの法案は先送りされる見込みでした。


そうしたなか、温暖化対策としても省エネに取り組むのが急務だとして、省エネ建築の専門家が中心となって署名運動を始めました。SNSで拡散され、市民から多くの署名が集まりました。市民と専門家らが連携して、議員に緊急性を訴えたことが法案成立に導いたとされています。


東京都の新築住宅への太陽光パネル設置を実質的に義務化する条例が成立したのも市民の声が届いた例だといえます。この条例はメガソーラーなど太陽光発電に悪いイメージがあり、当初は反対意見が多くを占めていたようです。


しかし、脱炭素を進めたい市民などが条例賛成のパブリックコメントを送り、3700件あまりの意見が集まりました。このうち賛成の意見が半数を超え、こうした“民意”が条例成立の後押しになったとされています」

また、こうした出来事を通じて、いままでつながりがなかった市民団体や環境団体、建築の専門家などと横のつながりもできました。いまでは勉強会を開催したり、意見交換を行ったりして連携するようになっています。

江守さんは「声を上げることで、社会のシステムに変化が起きれば、関心がなかった人も含めてみんなが気候変動に取り組むことが新しい常識になる」と話していました。

3)生活を見直す

以前、江守さんはふだんから使い捨てのプラスチックをなるべく使わないようにしたり、二酸化炭素やメタンをたくさん排出して生産される牛肉を必要以上に食べないことも大切だと(https://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/172/index.html)教えてくれました。

いまは、さらに本質的な取り組みとして、省エネ化を進めることや再生可能エネルギーを取り入れることがますます重要になっていると話します。

江守さん

「例えば、断熱です。断熱することで夏は涼しく、冬は暖かく過ごせますし、電気代も安くなります。といっても、家全体を改修するとなると大がかりとなり、多くのお金もかかります。窓の断熱改修をしてみるのはどうでしょうか。


窓は熱が逃げやすい場所なので、断熱性を高めることで部屋全体に効果があります。引っ越しする機会のある人は、断熱性能が高いマンションや家を探してみるのもよいかもしれません。


一戸建ての持ち家で、まだ太陽光パネルを設置していない人は、補助金を利用して設置することをおすすめします。さらに余裕がある人は、蓄電池を設置して太陽光発電の電気を自家消費すれば、電気代が高くなっても平気です。電気自動車のバッテリーを活用する手もあります。


また、給湯器を*ヒートポンプ型にするとさらに省エネになりますし、電気が余っている時間帯にお湯を沸かしてためておくこともできます。


世界が脱炭素化するうえで主力となる電源は、太陽光発電と風力発電だと考えられています。太陽光パネルのリサイクルなどの技術も確立されてきています」

*電気を使って空気から熱をくみ上げてお湯を沸かす給湯器のこと。大気熱と電気を併用することでより少ないエネルギーですむ。

それでもハードルが高いと感じる人は「再エネの導入に積極的な電力会社に契約を変えるのもよいかもしれない」と話していました。契約を変えるとすぐ日本の再エネが増えるというわけではありませんが、再エネの電気を使いたい人が増えることは、再エネ導入の後押しになります。

4) 見せかけの「環境配慮」に注意

再エネ100%を目指す「RE100」に参加している企業や気候変動対策に積極的に取り組むネットワーク「気候変動イニシアティブ」に参加している企業があります。こうした企業を応援することが気候変動の取り組みに有効だといいます。

しかし、江守さんは企業が本当に「環境に優しい」取り組みをしているかどうかについては注意深く見ていかなければならないと指摘します。

江守さん 

「いま、環境に優しいとうたっている商品やサービスのなかに本質的な取り組みになっていない、いわゆる“グリーンウォッシュ”と呼ばれるものが含まれています。

例えば、『環境にいいものなのでたくさん買ってください』というようなアピールをしている企業には注意が必要です。大量に生産し消費することを前提にしていては、いくら環境に配慮して生産しても本質的な問題解決にはならないからです。

ただ、グリーンウォッシュかどうかを見極めるのは非常に難しいです。1つのポイントになると思うのは、商品が壊れたり、使えなくなったりしたときの対応です。すぐに新しい商品を買わせるというのではなく、企業で修繕や修理を行ってくれるか、またはそれを自分でできる仕組みになっているのかです」

江守さんが愛用しているものを例にあげてくれました。

江守さん

「個人的な経験ですが、十数年使っているひげそりの刃が先日ダメになりました。調べてみると、古いモデルなのに替え刃がまだ売っており、刃を購入し、そのままいまも使っています。このひげそりのメーカーには好感を持ちました」

エアコンや冷蔵庫などの家電製品はエネルギー効率が10年ほどで変わってしまうので、買い替えが有効なことに注意が必要です。しかし一般的に、物を長く使えるような仕組みを作っている企業は環境問題に本質的に取り組んでいる可能性があると話していました。

5)地域の気候変動対策に参加する

自分が住んでいる自治体では、気候変動対策がどのように取り組まれているのか。もし知らなければ、調べてみたり、地域での話し合いやボランティアの機会があれば参加することも大事だと江守さんは言います。

江守さん

「近頃は、市民が参加する『気候市民会議』が開催されるようになりました。社会全体の縮図となるようにと無作為に選ばれた市民が議論し、脱炭素社会の実現のしかたを議論する会議です。そこで出た結果を自治体の政策に生かそうとしています。


ことし5月から7月まで東京・多摩市で開かれた多摩市気候市民会議。ここで集約された意見は市の環境保全に関する計画などに反映される予定になっています。欧州などで2019年ごろから広がっている気候市民会議は日本でも各地で行われるようになりました」

気候変動への対策だけでなく、適応策について考えることも大事だと言います。

江守さん 

「熱波や豪雨など気候変動の影響に対応するため、地域のインフラや日々の暮らしのあり方を変える適応策について考えることも重要です。地域で防災や熱中症対策などを話し合う機会があれば、気候変動とつなげて考えてみたらよいかと思います」

最後に、江守さんは、あるシンポジウムで高校生が言っていたことばを紹介してくれました。生徒のことばは、いまも胸に響いていると言います。

“気候変動に対する思いを大人にぶつけたら、私たちはもう死んでいく世代だから君たちが考えなくてはいけないと言われました。大人は知っているふり、やっているふりです。自分たちには関係ないと言われて、私たちZ世代が動き出すしかないじゃないですか!”
江守さん

「『知っているふり、やっているふり』という強い言葉を生徒さんたちから聞いて、ガツンと殴られた感じがしました。彼らが魂をぶつけて叫んでいるのだから、大人も魂をかけて取り組まねばと思いました。


世界では、ロシアとウクライナ、イスラエルとハマスの戦闘が起きていて、国際協調が乱れてきています。しかし、そんなときだからこそ、気候変動には世界が協力して取り組まねばなりません。


気候変動は基本的にすべての国が悪影響を受け、どの国も単独では解決できない問題です。世界が協力するのをやめてしまったら、気候変動は止められなくなり、各国で水や食料を奪い合い、難民を排除し合うサバイバルゲームになってしまう心配があります。今こそわたしたち一人ひとりが気候変動に向き合いなおすときだと思います」

「地球のミライ」では、気候変動について皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。あなたができること、すでにやっていることなどコメントをお寄せください。

16才の少女が訴える 温暖化非常事態 「クローズアップ現代」2019年9月26日放送

ニューヨークで開かれた「温暖化対策サミット」。ここでスピーチした一人の少女に、いま世界の注目が集まっている。スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16)。気候変動が緊急事態にあると訴えるグレタさんは、毎週金曜日に学校を休んでストライキを続け、大人たちに本気の対策を要求。世界中の若者たちを動かし、賛同の波が広がっている。背景にあるのは、温暖化がこれまで考えられた以上に、急速に進み、深刻な状態=“気候危機”にあるという事実だ。番組では、“持続可能な世界”を次の世代に残していくための課題を探っていく。

画像でも↓

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みんなのコメント(2件)

体験談
お玉
70歳以上 男性
2023年11月28日
環境大事です。資源の無い我が国はおんぶにだっこですので!
提言
たかにぃ
40代 男性
2023年11月28日
地球温暖化の一番の原因は森林の減少だと思います。脱炭素と世の中言われてます。それも大事だと思いますが、その炭素を吸収してくれる森林を減らさないようにしないといけないと思います。木一本切ったら地球上の何処かに木一本植える仕組みを作ればいいと思います。