スマホが原因?親指・手首が痛む「ドケルバン病」とは、症状と治し方

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腱鞘炎(けんしょうえん)手・腕が痛い手・腕

親指の使いすぎで手首の親指側が痛む「ドケルバン病」

親指を動かしたときなどに、手首が痛む場合は、ドケルバン病の可能性があります。けんしょう炎の一種で、親指の使いすぎなどが原因で起こります。

ドケルバン病

手首の親指側には、ひも状の「腱(けん)」が2本あります。これが腕の筋肉と連動することで、親指を伸ばしたり、広げたりすることができます。腱が通っているトンネル状の「腱鞘(けんしょう)」もあります。けんしょう炎は、手指や手首を繰り返し使うことにより、腱と腱鞘がこすれて、炎症が起こった状態のことです。痛みや腫れ、熱っぽさなどが現れます。この炎症が手首の親指側に起こるのが、ドケルバン病です。

初めは軽い痛みでも、親指を使わずに生活することは難しいため炎症が治まらず、次第に痛みが強くなっていきます。
そのままにしておくと、痛みに加えて親指を動かすのが難しくなるなど日常生活への支障が大きいため、整形外科を受診して適切な治療を受けることが大切です。

ドケルバン病を起こしやすい人

ドケルバン病を起こしやすい人

ドケルバン病を起こしやすいのは、親指をよく使う人です。スマートフォンをよく使う人や、パソコンの操作、ギターやピアノなどの楽器演奏、スポーツをする人も起こりやすい傾向があります。特に手首の腱鞘に負担をかけるのが、手首を曲げながら親指を動かす動作です。更年期の女性では、親指や手首を酷使していなくても起こることがあります。

原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンのバランスが乱れることで手がむくみやすくなることが、炎症と関係すると考えられています。また、意外に多いのが、出産前後の女性です。出産後数か月の首のすわっていない赤ちゃんを、頭を支えながら抱っこしたり、抱き上げるときの姿勢が、手首の腱鞘に負担をかけるために起こりやすくなるといわれています。

また、糖尿病がある人も、手足の血流が悪くなっているためにむくみやすく、炎症が起こりやすいことがわかっています。更年期の女性や糖尿病がある人は、ドケルバン病だけでなく、ほかのけんしょう炎や手の痛みも起こりやすいので、手の使いすぎには注意するようにしてください。

ドケルバン病のセルフチェック

手首の親指側が痛む人や、親指をよく使う人は、自分で行えるチェック方法があります。

ドケルバン病のセルフチェック

親指を中に入れて手を握り、そのまま手を小指のほうに傾けます。この動作が痛みのためにできない場合は、ドケルバン病の可能性があります。これは「アイヒホフ・テスト」といって、実際に診断に使われているチェック方法です。動作はできるけど軽い痛みを感じる場合、ドケルバン病である可能性は低いですが、無理に続けないようにしてください。

薬による治療

薬による治療

医療機関を受診してドケルバン病と診断されたら、軽度の場合は、消炎鎮痛薬の湿布薬や塗り薬を使います。炎症を鎮めることで、痛みを抑えることができます。消炎鎮痛薬で症状が改善しないなど重度の場合は、患部の腱鞘内に炎症を抑えるためのステロイド薬を注射します。1回の注射で半年から1年程度、症状が抑えられる場合も多く、結果的にそのまま治る人もいます。

ただし、注射には注意が必要です。炎症を抑える効果の高い薬を短期間に繰り返し注射したり、量を多く注射したりすると、腱が弱くなって切れてしまう危険性があるからです。また、注射によって感染症が起こるおそれもあります。特に、糖尿病のある人は感染症の危険性が高くなるので、医師に相談するようにしてください。

手術を行う場合

手術を検討するのは、薬による治療で改善しない場合や、いったん治ったものの症状が再発して繰り返す場合、糖尿病があり注射による感染症が心配される場合などです。そのほか、患者さんが注射よりも手術を希望する場合などにも検討されます。

手術を行う場合

手術では、手首の皮膚を2~3cmほど切開し、腱鞘を切り開きます。腱が圧迫から解放されるため、痛みなどの症状がなくなります。腱鞘を切り開いても、手の動きには影響しません。手術時間は5~30分間程度です。腱鞘はしばらくすると再生しますが、再発するケースは少ないことがわかっています。

発症や再発を防ぐために

ドケルバン病の発症や再発を防ぐためには、日頃から予防を心がけた生活をすることが大切です。予防のためには、スマートフォンやパソコンの操作、楽器演奏、スポーツなど、親指や手首を使った動作をするときは、少なくとも1時間につき10分間は親指や手首を休ませるなど、休憩することを習慣づけるようにしましょう。

また、スマートフォンを片手で持って操作すると、手首を曲げたまま親指を動かすことになりやすいので、両手で持って操作するようにしましょう。「痛みが強い」「長引く」「繰り返す」といった場合は、積極的に受診することがすすめられます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年3月 号に掲載されています。

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