遺伝性不整脈とは?3つのタイプの症状と検査、治療法

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遺伝性不整脈胸が痛い動悸(どうき)がする胸・心臓循環器・血管

遺伝性不整脈とは

遺伝性不整脈とは
主な遺伝性不整脈

若年や中年が突然死しやすい病気に遺伝性不整脈があります。
この病気の場合、心臓の血管や心筋には異常がありません。ふだん元気に見えても、ある日突然、「心室細動」などの危険な不整脈を起こして死亡してしまうことがあるのです。

心臓にある心室は、血液を肺や全身に送り出す働きをしています。「心室細動」とは、この心室がけいれんしてしまう状態のことです。心室細動が起こると血液を送り出せず、脳が血液不足になるため20~30秒で失神、それが数十分以上続くと死亡に至る恐れがある最も危険な不整脈です。

遺伝性不整脈には、「先天性QT延長症候群」、「ブルガダ症候群」、「カテコラミン誘発多形性心室頻拍」などがあります。いずれも、心筋細胞のイオンの流れに関係する遺伝子の変異によって発症します。

興奮で発作が起こりやすい先天性QT延長症候群

先天性QT延長症候群は子どもから若年に多い心臓の病気です。突然、危険な不整脈の発作が起こり、死亡に至る場合もあります。
心電図では、心室の興奮の始まりから、興奮が完全にさめるまでの時間をTQT時間といいますが、このQT時間が長くなることを「QT延長」といいます。QT延長があると、心室頻拍の一種、トルサードポワンという危険な不整脈が起きやすくなります。
この病気は健康診断などの通常の心電図検査で発見することができます。

先天性QT延長症候群のタイプと治療

この病気には主に3つのタイプがあり、発作を起こす状況が異なります。
LQT1型の場合、発作の大半は運動中に起こります。LQT2型は驚いたり、興奮したりしたときに、LQT3型は睡眠中や安静時によく起こります。

この違いは、原因となる遺伝子の違いによるため、遺伝子検査で自分のタイプを知れば、どのような状況に注意して生活をすればよいのかわかります。
発作を起こして失神したことがある人は、発作を予防するために薬を服用します。タイプによって選択される薬が異なり、LQT1型、LQT2型にはβ遮断薬が使われることが多く、LQT3型はβ遮断薬が効きにくいのでメキシレチンが使われます。

トルサードポワンから心室細動に移行することもあるため、植え込み型除細動器という装置で突然死を予防することもあります。鎖骨の下の皮下に小型の機器本体を植え込み、心室細動が起こると自動的に電気ショックを送り、拍動を正常に戻します。

カテコラミン誘発多形性心室頻拍とは

カテコラミン誘発多形性心室頻拍とは

カテコラミン誘発多形性心室頻拍は、運動中に突然死することがある心臓の病気です。運動をきっかけとして心室頻拍が現れ、心室から血液を十分に送り出せなくなり、失神や突然死を起こします。子どもに多く、10歳前後によく発症し、学校の運動会に倒れて亡くなることもあります。

通常の心電図検査では異常が現れにくいため、発見するのが難しい病気です。そのため、この病気の診断には、運動負荷試験という運動負荷を加えた心電図検査を行う必要があります。危険を伴う検査のため、遺伝性不整脈に詳しい医療機関で受けるようにします。

カテコラミン誘発多形性心室頻拍の治療

治療にはβ遮断薬が使われ、効きにくい場合にはフレカイニドという薬を併用します。
また、植え込み型除細動器を使用することもあります。発作が起きないよう、日常生活において厳重な運動制限も行います。

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この記事は以下の番組から作成しています

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