本文へジャンプ

相模原市障害者施設殺傷事件に関して

2016年07月28日(木)


0728_02_tyokugo.jpg
ハートネットTV ライターの木下です。
2016年7月26日未明、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で、刃物を持った男性が入所者を襲い、19人が死亡、26人が重軽傷を負うという痛ましい事件が発生しました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様には深くお悔やみ申し上げます。さらに負傷された方々の一日も早い回復を心から願っております。

今回の事件は、深夜に眠りについている無抵抗な障害者を、包丁やナイフで次々に刺し殺していくという残忍なもので、戦後最悪の大量殺人事件です。神奈川県警に殺人未遂などの容疑で逮捕された植松聖容疑者は、県警の調べに対して、「障害者なんていなくなればいい」「重複障害者を救ってあげたかった。後悔も反省もしていない」と話しているとされ、今年2月15日に衆議院議長にあてた手紙にも「障害者は不幸を作ることしかできません」「障害者が安楽死できる社会を」などの言葉が記されています。このような障害者の尊厳を真っ向から否定するような発言に対して、障害者団体からは抗議の声が挙がっています。

 

 

○全国手をつなぐ育成会連合会 会長 久保厚子

「事件の容疑者は、障害のある人の命や尊厳を否定するような供述をしていると伝えられています。しかし、私たちの子どもは、どのような障害があっても一人ひとりの命を大切に、懸命に生きています。そして私たち家族は、その一つひとつの歩みを支え、見守っています。事件で無残に奪われた一つひとつの命は、そうしたかけがいのない存在でした。犯行に及んだ者は、自らの行為に正面から向き合い、犯した罪の重大さを認識しなければなりません。」(声明文 抜粋)

 

○DPI日本会議 議長 平野みどり

「容疑者は深夜に施設に入り、障害者を刃物で次々と襲い、殺傷し、神奈川県警の調べに対し『障害者なんていなくなればいい』という趣旨の供述をしているとも伝えられている。もし、これが事実だとすると、障害者を『あってはならない存在』とする優生思想に基づく行為に他ならず、私たちDPI日本会議はここに強い怒りと深い悲しみを込めて断固として優生思想と闘っていくことを改めて誓う。

 近年、閉塞感が強まる中、障害者をはじめとするマイノリティに対するヘイトスピーチやヘイトクライムが引き起こされる社会状況の中で、今回の事件が起きたことを看過してはならない。ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを許さず、それらが引き起こされる社会状況を変革し、誰もが排除したりされたりしないインクルーシブな社会づくりを進めていくことが求められる」(抗議声明 抜粋)


容疑者は「安楽死」という言葉を安易に使っていますが、欧米の一部の国で実施されている「安楽死」とは、主に死を迎える終末期の患者で治療を行っても延命が望めず、むしろ治療の継続によって本人に耐えがたい苦痛をもたらすようなケースで行われるものです。基本的には本人の自発的意思に基づいて行われる措置であり、その趣旨は本人の「人としての尊厳を守る」ためのものです。本人や家族の意思を無視して、重度の障害者を社会にとって無用な存在として殺戮するような考え方とは、真逆の相容れない考え方です。


また、容疑者は手紙の中で、家族や施設職員の負担についても触れています。重度の知的障害者のケアが家族や介助者に多くの負担をかけるのは事実であり、ときにそのことへの耐えがたさを表明することがあるのは、人間として当然のことです。しかし、だとするなら、私たちの社会は家族の負担を少しでも軽くできるように努力すべきであり、施設職員の待遇改善をはかる制度改革を行うべきです。障害をもって生まれたことに何の責任もない本人の命を抹殺することが、その解決策だというのは、あまりに身勝手で、非人道的な考え方と言わざるを得ません。

私たちも取材を通じて、家族や施設職員の‘不満’を耳にすることはあります。しかし、その一方で、「この子のおかげで命の大切さを学んだ。生きることのすばらしさを教えられた」「自分なりに感謝の気持ちを表そうとしているのに気づいて、涙が出た」というような声を、その不満を口にした当人から聞かされることがあります。この容疑者が一度は教師をめざしたというなら、障害のある人たちがひとりひとり懸命に生きようとする姿の尊さに気づいてほしかったと、残念でなりません。

0728_01_yamayuri.jpg今後、このような事件が二度と起こらないように、事件の背景・原因・内容を徹底的に調査し、事実を明らかにしていくとともに、障害者とともに生きていくための共生社会をつくるために、私たちの社会の何を変えていけばいいのか、問題意識をさらに磨き上げていくことが求められていると思います。

なお、事件の容疑者は一時的に精神保健福祉法に基づいて精神科病院に措置入院していたことが報じられています。そのことで、短絡的に精神障害者を危険視することへの危惧を関係団体が示しています。

 

 ○きょうされん 常任理事会

「容疑者の卑劣な行為は、いかなる理由があるにせよ決して許すことはできません。一方で、なぜこのような事件が障害者入所施設で起こってしまったのか、戸惑いと疑念が晴れません。こうした事件を二度とくり返さないためにも、事件の背景や真相が究明されることを願います。

 なお、報道によると容疑者には入院歴があったとされていますが、今後、精神障害に対する誤った認識や差別が助長されないよう、各機関には慎重な対応を求めます」(声明 抜粋)

 

 ○COMHBO地域精神保健福祉機構

「この事件で逮捕された男について、一部報道では、措置入院の過去があったと報じられています。私たちは、事件の背景・動機などの詳細が不明な段階で、精神障害による犯行とするような報道を危惧しております。
『精神病院に入院』『通院』といった部分記述は、事実であっても、その一文によって、読者には『精神疾患』が事件の原因であり、動機であると読まれてしまいます。その結果『精神病者(精神障害者)はみな危険』」という画一的なイメージ(=偏見)を助長してしまうと考えるからです。」(緊急要望書 抜粋)

 

最近、精神障害のある人は病院に隔離収容されるよりも、地域で暮らし社会参加していくことにより、症状が軽快していくという指摘もあります。このような特殊な事件によって、精神障害者が再び排除の対象となるような間違った世論が形成されないように努めていくことも重要だと思っています。


木下 真 

 

▼関連ブログ
 相模原障害者施設殺傷事件 全6回

 第1回 追悼集会に寄せられたメッセージ
 第2回 熊谷晋一郎さんインタビュー
 第3回 中島隆信さんインタビュー
 
第4回 竹内章郎さんインタビュー
 第5回 高谷清さんインタビュー
 第6回 児玉真美さんインタビュー

 ヤマケンボイス 分かち合いたい―「津久井やまゆり園」を訪ねて―
 相模原市障害者殺傷事件に関して
 【相模原市障害者施設殺傷事件】障害者団体等の声明

コメント

事件がおきた 元相模原市民です。ひとこと「ここに住んでいて、怖くてしかたありせん。私はnpoの活動をしてて、こまったら 行政 保健所、クリニック 医師 自助グループなど そういう連携で、県内で、また都内にも 当たり前に そういうのが、普通と思ってました」保健師や「繋げることを、してくれてるし 」だから 人は、生きてゆけると思うのです。加害者 だれかが、繋げて 病院にかかるように サポートできないのか プロが 保健師をしてるからこそ 経験で、感じないのかな 「いきることは、繋げる 東日本震災がそうであるように、児相も自殺もいじめ 事件も 相模原市は、市民が相談しても 意味がないなら 相談先を神奈川県に 連係するとか 考えませんか 相模原市のかた 次は、だれが 事故のあうのか 相談にいきません いっても 無駄ですから 命大切にしたい。

投稿:相模原市 2017年12月01日(金曜日) 22時32分

平凡に暮らしたいさんと同じようなひどい目にあってきたので、私も関わりたくないです。
危険人物に関わりたくないのは当たり前です。

お世話係、嫌だと泣いて抗議したら、ヒステリックに担任に怒鳴られ、目撃した男子がぽつりとじゃあんたがお世話係になれば?と言ったら男子も私も殴られました。
友達にも迷惑かけてしまい、死にたかった。
担任を殺したかった、知的障害を理由に健常者の自由まで奪う知的障害者を殺したかった。

それくらい憎んでます。

投稿:古い名前 2017年07月15日(土曜日) 22時07分

こんにちは。自身統合失調症を患い精神病院に入所したことがありますが、病院の隔離室は刑務所以上に悪辣な環境で、ストレスも尋常ではなかったことを記憶しています。容疑者も非常に苦しかったであろうと思います。彼自身、『障害者がいなくなればよかった』という発言をしていますが、私もその意見には賛成です。ただ殺害をする必要が全くなかっただけの話です。一番問題なのは彼のような健常者がなぜ障害者に分類されたか、ということです。多くの障害者はその日の暮らしに支障をきたすほど困窮しています。まるで障害者が起こした事件のように受け止められていますが、障害者に19人も人を殺すだけの殺傷能力がありますでしょうか?多くの障害者はこの事件に胸を痛めています。本来であれば、措置入院で送られているのであれば、なぜあんなに早く隔離室から退室させたのでしょうか?この事件は完全に行政機関と警察と病院側の判断ミスです。余談ですが自分が彼に会っていれば未然に防げたであろう事件です。今の精神病院の現状を知る人なら「ああ、あいつは何か事件起こすな」と容易に想像できる事件です。彼はSОSも発していたし、完全に永田町の責任だと思います。みんなまだ世の中若いのでちゃんと判断できる有識者、できれば女性に身の処し方については判断させたほうがいいと思いますね。愛情にない人が何を判断しても悲劇しか生まない気がします。

投稿:いちおう匿名希望で。 2016年10月13日(木曜日) 14時14分

自分で自分をコントロールできない人が振りまく、
不幸理不尽を私たちは甘んじて受け入れなくてはいけないのですか?
それが障害でも個性でも何でもいいですが、
他人の権利や幸せを害する人の自由が制限されるのは当然だと思います。
暴力、痴漢などいわゆる健常者なら逮捕されるだろうことが、
障害者であること理由に許されているのをみると本当に腹が立ちます。
殺人ですら、精神異常なら無罪になりえます。
そういう人を守りたい、生かしたいと思う人、家族が、
その責任の範囲でお好きにしてください。
他人を巻き込まないでほしい。本当に怖いです。
中学のとき、強制的に養護施設と交流させられました。
腕を強く握られて引っ張られて痛くて怖かったのをよく覚えてます。
申し訳ございませんが、関わりたくないです。

投稿:平凡に暮らしたい 2016年10月06日(木曜日) 20時54分

容疑者が衆院議長にあてた手紙にあった「愛する日本国、全人類のために障がい者を安楽死させるべきだ」という考え方はナチスドイツが20万人障がい者の命を奪った思想と同様です。
この事件を大麻中毒で猟奇的な事件を起こした個人のみの責任にすることなく、「ヘイトクライム」だととらえ、ヘイトスピーチデモが行われるなど差別が横行するこの社会の病として考える必要があると思います。

投稿:はな 2016年08月08日(月曜日) 12時22分

私の息子は28歳 標的にされた区分6 重複障害のある最重度の知的障害者です
この事件のことで重複障害、 障害者とニュースで流れる度に ただただ辛い気持ちでした。
確かに税金も払わず 年金もかけずに障害年金を受給し 社会のお荷物
この子がいなかったら どんなに楽か?そんな風に思ったことも数知れず
しかし いつしか癒しになり かけがいのない唯一無二の存在に
この子達は不幸ではありません
怒りも笑もストレート
生きてるだけで 道徳を教えてくれます
犯人が施設職員として働いていたなら 親の気持ちは分かっていたはずです
いつまでも子を案ずる姿を 容疑者は自分に向けて欲しい気持ちもあったのかもしれません
特集番組で危機を感じていたと 堂々と話す友人 事件前に放置された車の連絡を受けた父親 警察 もう少し 早く動いてくれたらと 憤りをかんじます

投稿:サイミン 2016年08月04日(木曜日) 14時00分

私は地域で暮らす脳性まひ者です

事件の一報を聞いて,身が引き裂かれた思いでした
私が被害者になっていたとしてもおかしくなかったからです

大規模施設(強制収容所)が未だにあること
そもそも1ヶ所に集まらず,地域で暮らしていれば,このような事件が起こりようがありません

景気が悪くなり,数年前から電動車いすなどで独りで歩いている時に限って,
 「金喰い虫」
 「税金泥棒」
 「早く死んでしまえ」
ということを言われると数人の友人から聞いていました
 しかし,この事件がきっかけで一気に時代精神となってしまうのではないかと危惧しました
 また,障害者を「安楽死」させることで社会的コストを低減につながると,まるでナチスのT4計画と同様のことを拡散されてしまったことも危惧しています


状況が判り出して…
1.措置入院
 都道府県知事への通報等があり,指定医2名以上の診察の結果,措置入院が行われることを知り,いとも簡単に措置入院が行われるのかと改めて驚きました
 そしてさらに,措置入院がもっとやり易い方向に変わらないか心配です

2.マスコミによる差別の助長
 「措置入院」や「精神疾患」等をことさら強調することでそれを患った人はすべて犯罪者,または犯罪予備軍かのようなイメージを植え付ける報道が少なからずあり,憤っています

3.管理・監督・監視の強化
 今でも施設(強制収容所)には自由がありません
 もっというなら抑圧的です
 なので私は施設には否定的です
 そのような状況にある施設内に監視カメラの設置等をして,保護という形を取った管理・監督・監視の強化は容認できません

4.政治家のトンデモ発言
 参院副議長まで務めたベテラン議員がオフレコでもない記者団の前で
 「人権という美名のもとに犯罪が横行している」
 「犯罪をほのめかした、主張した人物については、GPSを埋め込む」
と平然と言ってしまう国会議員が言い,未だに撤回すらしていないことが許せません

と,挙げだしたらきりがない程,様々なことが語られ,そしてそれらがほとんど批判されていないことが看過できません

投稿:地球人 2016年07月30日(土曜日) 22時52分