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2016年04月04日 (月)
「たき火」がシンボルのライフスタイルとは?
「たき火フェスタ」(2月28日、島根県吉賀町柿木村にて開催)のポスターを数か月前に初めて目にしたとき、なぜかとても印象に残りました。近年はオーガニックフェスタとか、ロハスフェスタとか、ライフスタイルにフェスタを付けたイベントが各地で頻繁に開催されていますね。では、“たき火”が象徴しているライフスタイルはどんなものなのでしょう。ポスターには曲がりくねった川、木々、そしてイノシシのイラストも描かれています。
日本有数の清流である高津川の流域である津和野町、吉賀町、そして益田市の住民向けのイベントです。
チラシの裏面には「いま、高津川流域ではIUターンをはじめ、多くの子育て世代家族の移住がふえています。それは、ここ高津川流域の豊かな自然の環境中で生活・子育てをしたいと考える親世代が増えているからです。そうした中で「高津川」「たき火」「子育て」「食」「先人の知恵」をキーワードに、親、子、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなで高津川流域の美味しいものを囲んでたき火であたたまり、語り合い、一緒に愉しい時間をすごしましょう」と書かれています。
広場ではたき火を囲んで鮎を焼いたり、パンを焼いたりと温かくわいわいと家族連れが過ごしています。
室内では流域で屋外保育を積極的に取り入れている4つの保育園の園長先生のお話がありました。
そして、テーブルに置かれていた津和野町のパンフレット「「森里海連環」津和野町の再生可能エネルギーによる地域再生計画(津和野町役場農林課)」に答えを見つけました。“たき火”をシンボルとするライフスタイル、未来のサステナブルな地域づくりの計画がそこに書かれていたのです。森林・自然資源を活用した未来の地域づくりに着手するとありました。
少し噛み砕いて説明すると、移住者の方たちの新しい仕事として自伐林業や木質バイオマス活用、有機農産物の加工を。子育て環境として森の幼稚園など屋外保育を。そしてこのような暮らしをイベントやインターネットを通じて大いに情報発信をしていくというものです。
東日本震災を機に、コミュニティやソーシャル、シェアというキーワードが注目されるようになりました。自然エネルギーや有機農業、林業や森林を活かし、食べるものやエネルギーを自給し、地域で循環する経済・地域づくりをしようと、多くの若者が“田舎の田舎”に移住するようになりました。生産者と消費者の新しい関係づくりが各地で始まっています。その象徴的なイベントが「たき火フェスタ」だと思いました。
地域おこし協力隊という制度を活用にて3000人ほどの若者が都市部から農山漁村に移住しています。また、都市部でスキルを積んだ人たちがふるさとに戻り、ローカルベンチャーを次々に起業しています。
その旗手が岡山県西粟倉にある「株式会社西粟倉・森の学校」を営む牧大介さんです。牧さんは新たに「森の学校ホールディングス」を立ち上げ、これまで取組んでいた木材加工業に加え、うなぎの養殖などさまざまな分野にも事業を拡大しています。その目的は、人づくりや地域経済の再興。牧さんの下には、ローカルベンチャーの立ち上げを目指す人材が、続々と集まってきており、こうした考え方や方法を、他の地域にも広げていこうとしています。この他にも、「自伐林業」(=自立・自営型で持続可能な林業)の実践手法を確立し、全国に広めている中嶋健造さん(NPO法人「土佐の森・救援隊」)、有機農業では埼玉県小川町「霜里農場」出身の研修生たちが、各地で有機農業を実践しています。
消滅可能性自治体と指摘された各地の農山漁村で、サステナブルな未来づくりが始まっているのです。
むしろ人口集中が進んでいる都市部を私は心配しています。食糧もエネルギーも自給力は限りなくゼロ。高齢化が進み、コミュニティ力も希薄で、大地と切り離されているだけに事態は深刻になるのではないでしょうか。
各地を取材する中で、何百年に渡る農林漁法やコミュニティ、景観を後世に受け継いでいこうとしている地域の方たちの取組には常に心打たれます。個人や社会が、コミュニティや自然、そして祖先とのつながりをいかにとりもどすか。都市部の人がそうした暮らしや社会を本格的に志向するようになるのか。そして何より、どうすれば気候変動を食い止めることができるのか。このブログを通じて地域づくりの最前線をお伝えするとともに、サステナブルな未来への道をご一緒に探していきたいと思います。