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第一線で活躍中の注目人物インタビューや、地域づくりアーカイブスの動画を活用した全国各地の実践例などを紹介します。

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2016年04月01日 (金)

難しいかもしれないが、今こそ"意識改革"を。【地域活性化センター理事長・椎川忍さん】

1976年に自治省に入省し、2006年には総務省大臣官房審議官(財政制度・財務担当)として、「頑張る地方応援プログラム」の推進などに携わった椎川さん。2008年、総務省に地域力創造審議官という新ポストが創設されると、自治大学校長から異動して、その初代に任命され、定住自立圏構想の制度化、地域おこし協力隊の創設、緑の分権改革への取り組み、新しい過疎対策の立案、地域の人材力の活性化、個別地域の地域活性化の取組への支援を行ってきました。

第一線で地域づくりに取り組み続け、2012年に退官後、ライフワークとしての地域おこしの支援と人材育成を行いながら、プライベートな時間もフル活用して全国各地へ足を運んでいる椎川さん。2013年から地域活性化センターの常務理事に招かれ、2014年には理事長に就任。地域づくりのいま、そしてこれからを、どう見ているのかインタビューしました。



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椎川さんと菅原文太さん



--平成26年11月「地方創生関連法案」が公布・施行され、“地方創生”の動きが本格化しています。

椎川氏  おととし10月8日、石破茂地方創生担当大臣に呼ばれて、個人的に色々と提言をしました。そのうちのいくつかは、政策としての取り組みが始まっています。まず、地方創生は、国民運動として展開しないといけないと申し上げたところ、そのひとつとして総務省の移住交流情報ガーデン(地方への移住を考えている人に総務省がワンストップで情報提供・相談に応じる窓口)が、去年3月にできました。

これまで、こうしたことを国や役所がやったことはなかったわけです。「JOIN」(一般社団法人移住・交流推進機構)や「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」といったところではやっていましたけれども、国がやり始めたのは全くの初めてのことであり、国民運動を喚起するものになると思っています。内閣府のまち・ひと・しごと創生本部でも「そうだ、地方で暮らそう!国民会議」を立ち上げています。

 

--今回の「地方創生」、どんなことを期待していますか。

椎川氏  私は一貫して、一次産業が活性化しないと地方創生はできないと申し上げてきました。その中で重要な問題の一つが、山=林業の問題ですね。石破大臣は農水大臣も経験しているのでよくわかってくれていましたけれども、山=林業の話は当時念頭になかったということでした。それでも去年、石破大臣の講演を聴きに行きましたら、山の話をずいぶんされていて、「これは自分も迂闊だった」と言っていました。もっとやらなければいけなかったと。いまオリンピック・パラリンピックに向けて、木を使おうという動きが出てきています。平成28年度の早期には、CLT(Cross Laminated Timber=直交集成板)が、鉄骨材の代わりに使えるようになります。いまは大臣認可ですごく時間もかかって大変なのですが、今後は建築確認で鉄骨材と同じように使えるようになりますので、それによって木造建築がヨーロッパのようにメジャーになる可能性が生まれてきます。東京オリンピックに向けた新国立競技場の建設なども、その流れを後押しするいい契機になると思います。
山=林業の問題というのは、非常に意味があるものです。いまの山林は、50年以上も前に我々の先祖が、一生懸命働いてお金もかけてつくり上げてくれたものです。それがちょうどいま、木材として利用するのに適したタイミングにきているわけです。日本は国土の約7割が森林で、そのうち人工林は4割あるわけですが、これまではカネも生まない、雇用も生まないということで十分に活用されていませんでした。そうした“あるもの”を、有効にきちんと使っていくべきだと思います。ある意味総力戦ということですよね。国土のことも考えた総力戦として、地方創生をとらえていく必要があると思います。


--従来の考え方を大きく転換する必要があると。

椎川氏  これはエネルギー問題とも関係します。日本が経済的に調子のいい時は、外国からおカネをどんどん儲けていたので、面倒くさいことをしないでエネルギーは買えばいいじゃないかということで済んでいました。けれども、いまの日本はそんなに調子がいいわけではありません。少子高齢化で大変なことになるわけですし、経済はもちろん伸びた方がいいとしても、かつてのように調子良く、人口ボーナスで自然にどんどん伸びていくなんてことはありえないわけです。
やっぱりここで、考え直さなければならないことがたくさんあるのではないかということです。それが、あるものを使うということであり、エネルギーだって再生可能エネルギーの活用により、自分たちで生み出せば買わなくても済むじゃないかということです。それを地域に当てはめれば、地域内での経済循環を考えていこうということになるわけですよね。そういうことも、石破さんが山=林業の話をされるようになったこともきっかけにして、良い方向に向かっていってくれればと思っています。


--一方で、TPPにより地方も厳しい経済競争に巻き込まれるとの指摘もありますが。

椎川氏  農業の問題では、TPPはタイミング的にはある意味良かったのではないかと思うところもあります。75歳くらいの人が中心になっているいまの農業が、ぬるま湯のままダメになってしまったら大変なことになります。TPPは外圧ではあるけれども、一方で国富全体が相当伸びるということも間違いないわけで、農業の中でも大きく伸びる分野が実はあると思っています。他方、ダメになりそうな分野もあるので、そこをどう支援していくかを考えていけばいいわけです。日本の農業は大変丁寧に安心安全をめざしてやっているわけですから、輸出もできるだろうし、TPP対策をやって強い農業を作れば、それが地方創生にも繋がっていくのではないでしょうか。


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兵庫県朝来市特産の「岩津ねぎ」。
生産組合は飲食店と取引きし販路を確保

こうしたことを国民運動として展開し実現させ、一次産業を活性化させないと、地方創生は成功しないでしょう。TPPという問題があったにせよ、おおむねそういう方向にいま動きつつありますし、山=林業の問題も非常に注目され始めている。私は「日本創生委員会」の委員もやっていて、これは民間企業などの方々が中心になってやっているわけですけれども、その中に林業復活・地域創生推進委員会が設けられ、山=林業をもう一度産業として再生させなければならないということを、十何回もワーキングをやって、そのうち政府に提言することになっています。民間の人もそういうふうにわかってきて、石破大臣も盛んにそういうことを言われるようになり、それからオリンピック・パラリンピックで国民の意識も変わっていくだろうということで、いい方向に行っていると思いますね。


--地域が持つ価値を再評価し、伸ばしていくことが大切になると。

椎川氏  それでもまだ依然として、昔からのグローバルな経済競争に勝ち抜くのが国の最高目標で、それをやると地方が傷むから、地方に何か手当てをしましょうという考え方が根強くあります。これまでの地域活性化とか地方活性化というものは、そうやってきてしまっていたわけです。これまでそうやってきて、それでこの結果ですから、はっきり言ってうまくいっていません。だから今回は、やっぱり何かを変えないといけない。過去を反省して、変えるべきものがあれば積極果敢に変えるべきです。


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鹿児島県鹿屋市柳谷集落(やねだん)から。
補助金に頼らない地域再生について学ぶ

やっぱりまず基本的な考え方を逆にして、日本には農山村があったから、こんなに優秀な人材を輩出し、モノ作りのDNAというものも受け継がれてきて、その結果、優秀な製造もできたし、素晴らしい都市もできたし、おもてなしの心にあふれたサービス業もできたというふうに考える。そして、地方をダメにしてはいけないのだということを国民のみなさんがきちっと理解して、まさに国民運動として国民の意識改革といった深いレベルのところでやっていく必要があるのだと思います。
例えば、今まで外国製のものにあこがれ買ったりしていたところを、もっと地方に素晴らしいものがあるのだからそういったものを買って使った方がいいのではないかとか、海外旅行もいいけれど、日本にはいいところが沢山あるのだから国内旅行に行ったらもっと楽しいよとか、美味しいものもあるよとか、そういうことを考えていかなければいけない時期に来ているのではないかということです。


--自分が暮らしている地域以外にも、目を向けていくことが大切ですね。

椎川氏  国民運動・国民意識の変革というものを、県に当てはめて県民運動として考えてみることも必要だと思います。例えば兵庫県。兵庫県には、山陽道もあれば日本海側もあります。それぞれの住民の皆さんが、兵庫県民としてお互いの行き来や支えあいといったことを、どのくらい考えてきたのだろうかということが問われるわけです。同様に、市民運動や町村民運動として考えてみることも必要だと思います。格差というものは、どこの自治体の中にも存在しているわけです。困っている過疎地や限界集落のものを買っていこうとか、助けていこう、支えていこうと、そんな気持ちを住民のみなさん一人一人が持てているだろうかということですね。“意識改革”としてこうしたことに今回は取り組んでいかなければ、また失敗してしまうのではないかという危惧も抱いています。

これはなかなか難しい問題で、残念ながらマイナスの意味での個人主義が日本では広がってきている面があり、それがさらに極端な形で進めば利己主義ということになります。昔の日本には“利他”の気持ちが沢山あったわけです。それが近代化される過程で、どんどん個人主義、利己主義に走ってしまっているわけです。もう一度、私たちの先祖たちが営々と築き上げてきてくれたものの良さを見つめ直し、良いものは少しずつでも取り戻していくべきでしょう。少子高齢化でこの先、潜在的な国の力が落ちていきかねない今こそ、成熟社会における暮らしぶりについて、よく考えないといけないのではないでしょうか。

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地域活性化センター理事長 椎川忍さん

1953年、秋田県生まれ。1976年自治省入省。2005~6年に内閣府・総務省の大臣官房審議官、2007年に自治大学校長、2008年に地域力創造審議官、2010年に自治財政局長を歴任。退官後の現在は、地域活性化センター理事長を務め、人材育成と地域おこしをライフワークに、休日をほとんどつぶして全国行脚。支援活動や講演を行っている。地域に飛び出す公務員ネットワークを結成し、これを応援する首長連合の設立を提唱するなど、官民連携にも積極的に取り組んでいる。

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