全国ハザードマップ

【第4回】発災時 データで命は守れるか ~自治体編~

2023/1/11
 

3.発災後 明らかになった「通信の脆弱性」

 

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三家本(熊本県危機管理防災課):こちらは災害が終わった後に、各市町村にヒアリングした内容です。システムが中断した後は市町村もほとんど現場・現状がわからなかった。警察・消防とは電話でやりとりしていましたので、電話が繋がらなくなると警察からの情報が入ってこない。従いまして市町村についてはこの段階で情報がほとんど入ってこない。特に球磨村や芦北町、それから八代市については現状が把握できなかった状況です。

 また福祉的に、当然この段階で避難所を開けたり、あるいは避難所の管理のために人を割いたり、あるいはマスコミからや安否確認等、大量の電話がかかってきまして、市町村も県も莫大な業務が発生しました。そういった中で、災害対応に必要な情報収集以外の様々な対応が出てきまして、雨のために職員も全員参集できない、職員自身が被災をしたり、あるいは役場等に行くための道路が通れないといった状況になりましたので、各市町村とも平常の7割、あるいは4割くらいの職員で対応していました。爆発的に増える業務に対し人は増えない中で、「本来やるべきことができなかった」ということと、特に情報、警察・消防団から上がってくる情報、あるいは住民からの色々な救助要請等をしっかり受け取れなかったといった事態もこの時起きております。

 

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三家本(熊本県危機管理防災課):やはり、情報の収集とともに、通信が使えなくなった場合、システムが使えなくなった場合については、かなりの空白地点が出るということ。当時、道路、現場に向かう国道や高速道路も使えませんでしたし、悪天候でヘリも飛べませんでしたので、通信と交通が遮断されるとほとんど情報が入ってこないというのが当時の実感です。

 

4.連続する“想定外” どう備える?

 

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三家本(熊本県危機管理防災課):発災後、市町村と住民の方に聞き取りをしまして、振り返りをしました。避難指示という部分で、一番大事なのはやはり逃げていただくことですが、令和2年7月豪雨では、前日まではこんな大雨になるという予報も出ていませんでした。そのために避難指示も出ていませんでしたし、避難所も開いていませんでした。住民の方も、「まあ今回は特に大きな雨じゃないな」と感じていましたので、警戒態勢や警戒心が少し薄れた中で、「降った雨はいつもと違う」と。つまり、過去に経験していないような雨が降って、それから河川、あるいは土壌の状態が悪化しました。また金曜日の夜だったのと、ちょうどコロナが蔓延して少し落ち着いていた時期でしたので、少し体制が緩んでいたということも否定はできません。

 

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三家本(熊本県危機管理防災課):では、「なぜ避難ができなかったのか」という点ですが、7月4日の午前2時から3時くらいに各市町村は避難指示を出しましたが、「避難指示が聞こえない」と。つまり、雨が激しかったので、雨の音で防災行政の放送が聞けなかった、あるいはこの段階で、土砂崩れや河川の氾濫で通信が不通になりまして、行政無線、あるいは防災無線等がほとんど機能しなかった。そのため避難指示が全く伝わりませんでした。また、「逃げない」、あるいは「逃げられない」という方がおりました。避難所もコロナの関係で敬遠する方もいらっしゃいました。また、若い方は「避難所がどこにあるか知らない」といった方も多くおられました。また避難を助けるべき行政や地区構成組織も被災をしましたので、手助けができないということで、特に要配慮者の方ですね、お年寄りの方のお手伝いをできなかったということで、彼ら自身だけでは逃げられなかったということです。

 

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三家本(熊本県危機管理防災課):行政はどうだったかというと、職員が参集できていない、防災職員がいないと。それから現場の状況がわからない。災害がひどくなかった地域では、何をしていいかわからない、人が足りない、また特に警察、消防、自衛隊との連携ができていないと。現場に行けない、ヘリが飛べないといったことが起きた。

目 次

1. 令和2年7月豪雨 熊本県が知りたかった情報とは

2. 豪雨時 次々と寸断される情報網

3. 発災後 明らかになった「通信の脆弱性」

4. 連続する“想定外” どう備える?

5. その訓練想定外を想定しているか

6. 発災時 膨大な情報を的確に選別できるか

7. 臨機応変な対応へ 部署横断でできることは

8. 寸断するシステム 何を優先し強靱化すべきか

9. 過去の災害データ 検証用プラットフォームの早期構築を

10. 試みが進む “リアルタイムデータ×避難訓練”

11. 過去の発災時データ 柔軟な共有

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