放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,メディア管理機関が統合

中国で政府機構改革の一環として,活字メディアを管理する新聞出版総署と放送メディアを管理する国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)が統合し,3月22日から「国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局」の名称で業務を開始した。これは李克強首相など新指導部が推進する政府機構の簡素化の一環として行われたものである。韓国や台湾では,放送と通信の融合に合わせて,双方の事業を監督する規制機関が設立されているが,中国では放送事業は中国共産党の宣伝を主な業務としていることから,SARFTは同じ宣伝業務をつかさどる新聞出版総署と統合する形に落ち着いた。これについて中国中央テレビ(CCTV)の関係者は,「新聞・出版の分野では,政府は事業運営に直接携わっていない」と述べ,放送事業でも今後,政府の干渉が減少することに期待感を示した。

中国,香港のテレビ局員が取材中襲われる

全国人民代表大会が開催中の北京で3月8日,香港の地上テレビ局TVBなどのカメラマンが,ノーベル平和賞受賞者劉暁波氏の妻で当局から軟禁されている劉霞氏の自宅付近を取材中,私服の男達から殴られる事件があった。カメラマンらは当時,香港の民主活動家が劉霞氏の自宅を訪問するのを取材していたが,突然現れた5~6人の男達が「撮影を止めろ」などと言ってTVBカメラマンの顔面を殴って地面に押し倒し,足で踏みつけたという。事件について中国の公安当局はカメラマンに対し,道をふさいだ責任があるなどと説明したが,TVBの報道部は中国政府に「報道の自由の侵害」と抗議を表明,16日には香港のジャーナリストら100人が中国政府の香港駐在事務所前で抗議活動を行った。

韓国,KCCと新設部署の職務分担決まる

韓国のパク・クネ(朴槿惠)新政権が政府機構改革の目玉として新設する未来創造科学部(以下,未来部)と,既設の放送通信委員会(KCC)の間の職務分担について,3月17日,与野党が合意した。合意によると,地上放送や総合編成チャンネル,報道専門チャンネルなどに対する規制権限はKCCに残し,KCCが担当していたIPTV,衛星放送など有料放送事業に関する政策は未来部に移管するとしている。これまで与党セヌリ党は,ICT(情報通信技術)を統括する未来部に放送政策のうち産業振興的な機能を全面移管したいとの考えを示してきた。

韓国,放送文化振興会がMBC社長を解任

MBCの大株主である放送文化振興会(放文振)は3月26日,臨時理事会を開き,キム・ジェチョル(金在哲)MBC社長の解任を決めた。放文振が1988年に設立されて以来,MBC社長の解任に踏み切ったのは初めてである。同日の理事会では9人の理事のうち5人(野党推薦3人,与党推薦2人)がキム社長の解任に賛成した。理事会は解任の理由について,「金社長が放文振の役員選任権を侵害したうえ,公的責任を放棄し,大株主に対する誠実義務にも違反した」としている。キム社長は3月22日,放文振との事前協議なしに系列会社の役員人事内定者を発表したため,放文振の理事が強く反発していた。キム社長はこれまで社内でもニュースや番組の公正性をめぐって批判を受け,2012年には社長辞任を求める労働組合が半年近くに及ぶ長期ストライキを行っていた。

インド,TRAIがTV広告時間の規制を再告知

インドの電気通信規制庁(TRAI)は3月22日,テレビ放送の広告時間を1時間当たり12分以内とする規制を告知した。これに対し,主だった衛星チャンネル事業者の業界団体IBF(Indian Broadcasting Foundation)やニュースチャンネル事業者の業界団体NBA(News Broadcasting Association)などは,規制が実施されれば経営破たんを招くと反発, 撤回を求めた。TRAIは2012年5月にも広告時間の規制を告知し,反発した業界団体が電気通信事業関連の紛争を扱う裁判所TDSATに持ち込んで実施猶予の裁定を受けていたが,TRAIは前回の規制に修正を加えて再告知した。現在,ヒンディー語ニュースチャンネルの場合で1時間当たりの広告時間は平均20分程度で,最大で30分のケースもある。