放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米PBSニューズ・アワー,週末版開始へ

公共放送PBSが月曜から金曜まで放送し,安定した人気を保つニュース番組のPBS NewsHourが土日も放送を開始すると,3月3日付のニューヨークタイムズが報じた。同番組は1975年に始まり,バランスのとれたニュース内容と当事者へのロングインタビューで,特に有識者層の高い支持を集めているが,土日は放送がないことに不満の声があった。週末版は平日の半分の30分で,制作は月~金を担当するワシントンではなく,ニューヨークの公共放送局WNET が行うとしている。

米タイム・ワーナー,雑誌部門の分離を発表

メディア・コングロマリットのタイム・ワーナー(TW)は3月6日,雑誌部門のタイム社を別会社にすることを発表した。タイム社はニュース誌を代表するタイムやスポーツイラストレイテッド,フォーチュンなどを発行しているが,雑誌の売り上げ部数の落ち込みが大きく,TWは今後は業績が好調なHBOなどのケーブルチャンネルや映画などの映像事業に集中するとしている。TWはこれまでも,ケーブル配信事業のタイムワーナーケーブルやインターネットのAOLなどを別会社にしている。退潮が目立つ活字部門を分ける動きは,同じメディア複合企業のニューズ・コープなどでも見られる。

米,進む報道の弱体化

アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターは3月18日,アメリカの報道機関に関する年次リポート「The State of the News Media 2013」を発表した。それによると,新聞業界では2000年と比べて2012年にはスタッフが30%減少し,1978年以来,初めて4万人を下回った。地方テレビ局ではニュースに占めるスポーツ,気象,交通情報の割合が平均で40%を占め,独自リポートが減っている。CNNなど3大ケーブルニュースチャンネルでも取材スタッフの経費削減のためリポートが減り,インタビューなどの割合が高まっているという。

米ユーチューブ,月間の利用者10億人突破

アメリカのグーグル社傘下の動画サイト,ユーチューブは3月20日,月間閲覧者(ユニークユーザー)が10億人を突破したと自社のブログで発表した。世界のインターネット利用者の2人に1人が同サイトを利用していることになる。一方,ソーシャル・ネットワーク・サービスのツイッターも21日,自社のブログで月間利用者が2億人を超えたと発表した。2012年の10月にはフェイスブックも月間利用者が10億人を超えたと発表している。

メキシコ,放送・通信関連の憲法改正審議始まる

メキシコでは,2012年12月に就任したペニャ大統領が3月11日,放送・通信事業の改革を実現するため憲法改正を発議し,国会で審議が始まった。業界の寡占状態が顕著な同国において,新規参入を促して競争を促進することが狙いとされる。改革案では2つの地上テレビ局の新設を図るほか,放送・通信事業への外資の参入を認める。さらに業界への規制・監督権限を強化した連邦通信機関(Ifetel)も新設される。メキシコでは,世界一の富豪とされるカルロス・スリム氏が所有するAmérica Móvil社が固定電話市場の70%,携帯電話市場の75%のシェアを占める一方,放送事業ではスペイン語圏最大のテレビ局と言われるTelevisaとTV Aztecaの2局が地上テレビの視聴シェアの96%を占めているとも言われている。

ベネズエラ,反政府系テレビ局売却へ

南米ベネズエラで唯一の反政府系テレビ局と言われてきたグロボビシオンは3月11日,4月に行われる大統領選挙後に同局を売却すると発表した。売却先は政権寄りの保険会社の経営者とされる。グロボビシオンは売却の理由を同局が経済的かつ政治的に存続不可能になったためとしている。チャベス前政権に批判的な立場をとってきた同局に対しては,報道内容をめぐって規制機関から巨額の罰金が科せられたり,地上デジタル放送の免許が交付されないなどの事態が続いていた。ベネズエラではチャベス前大統領の死去に伴い4月14日に大統領選挙が行われるが,前大統領の後継候補の優勢が伝えられている。