放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,ネット上の“デマ”取り締まり強化

中国政府の国家インターネット情報弁公室は4月12日,ネット上の“デマ”が蔓延したとして,関係者6人を拘束,42のサイトを閉鎖処分にしたと発表した。中国では2012年2月初めに,重慶市の前警察局長がアメリカの駐成都総領事館に駆け込む事件が起きてから,その後解任された重慶市の薄熙来書記を含め,事件に関する様々な情報がネット上で乱れ飛んでいた。中には「軍の車両が北京に入った」とするクーデターの噂もあったため,中国政府は悪質なデマだとして取り締まりを強化,21万件の情報を削除すると共に,特に問題があったとする6人の個人を拘束した。しかし,ネット上の関連情報の多くは真実と言われており,言論統制の厳しい中国で,共産党上層部の権力闘争にも関係した事件の情報が次々と流れたことについては,当局の意図的なリークとの見方も出ている。

北朝鮮,国営テレビが“ミサイル”発射失敗を報道

北朝鮮は,故キム・イルソン(金日成)主席生誕100年の2日前となる4月13日午前,「人工衛星」と主張する事実上の長距離弾道ミサイルの発射を行い,失敗した。これについて北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは,発射から約4時間後の正午過ぎ,臨時ニュースで「わが国初の実用衛星クァンミョンソン(光明星)3 号の発射が13日午前7時38分55秒,ソヘ(西海)衛星発射場で行われた」ものの,「軌道進入は成功しなかった」として,失敗原因を専門家たちが調査中であると伝えた。北朝鮮が発射の失敗を認めたのは初めてである。

インド,Starがテレビニュース事業撤退

ルパート・マードック氏傘下のStar Indiaは4月16日,現地メディア企業ABPグループと合弁で進めてきた衛星テレビニュース事業(3チャンネル)からの撤退を表明した。この結果,現在のチャンネル名からStarの名称は外れ,ヒンディー語チャンネルStar NewsはABP News,ベンガル語チャンネルStar AnandaはABP Ananda,マラーティー語チャンネルStar MajhaはABP Majhaに改称される。StarとABPは出資比率26:74で8年前にMCCS(Media Content and Communications Services)社を設立し衛星テレビニュース事業を展開してきたが,上限26%の外資規制が緩和される見通しが立たず経営や編集権で主導権を見込めないことからStar が撤退を余儀なくされたと見られている。今後,Starは総合娯楽チャンネルに力を入れるとしている。

豪の競争委員会,有料テレビFoxtelとAustarの合併承認

オーストラリアのACCC(競争消費者委員会)は4月10日,国内の衛星・ケーブルテレビ事業者第1位Foxtelによる,同第2位Austarの吸収合併を承認した。西部や都市部はFoxtel,東部や地方はAustarと,サービス提供地域を棲み分けてきた両社の合併で,国内最大の全国規模の有料テレビ事業者が誕生する。買収額は約19億豪ドル(約1,590億円)で,5月下旬に手続き完了の予定。合併の条件としてACCCはFoxtelに対し,今後8年間,62のチャンネル(Disney ChannelやESPNを含む)のインターネット配信権と,映画をVOD(ビデオ・オン・デマンド)で提供する権利の独占契約を禁じた。ACCCはこれにより,拡大中の国内IPTV 市場への新規参入や競争が進むことを期待しているが,スポーツ放送におけるFoxtelの独占契約は変わらず残されている。また,Optusなど通信事業者からは,Foxtelを50%所有する通信最大手Telstraの影響力が増し,寡占状態が続くとの懸念の声があがっている。

UAE,Sky News Arabiaが5月開局へ

アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする中東・北アフリカ向けの新しい24時間アラビア語ニュースチャンネルSky News Arabia が5月6日から放送を開始する。4月3日,首都アブダビのスタジオで行われた同局会長による記者会見で明らかにされた。同局は,英国でSky Newsを運営するBSkyBとUAEの投資会社アブダビ・メディア・インベストメント(ADMIC)の合弁事業で,衛星で放送されるほかIPTVやインターネットでも配信される。2012年12月には,世界有数の資産家として知られるサウジ王族による別の24時間アラビア語ニュースチャンネルAlarabの立ち上げも計画されている。